第5章 『家族の在り方』 8 | オリジナル小説 『嵐の中の小鳥たち』

オリジナル小説 『嵐の中の小鳥たち』

誰もが考えたことのある永遠のテーマに、私なりの考えを盛り込んで物語にしていきます!!

この物語を読んで、皆さんも色々考えてくださると光栄です\(^-^)/




8.



そのまま俺たちは、それぞれが思い思いに海を堪能した。
押し寄せてくる白波に逆らうように泳ぐもよし、体力の持つ限り海底探索をしてもよし。
砂で全身を包みこみ砂の暖かな温もりを感じるもよし、パラソルの元眩い光とほのかに香る潮風に身を預けるもよし。
海での楽しみ方はぞれぞれでありながら、どれもまた素晴らしきものであった。

昼食には海の家のカレーやらラーメンを、大量の汗を吹き出しながら食べた。
そしてその汗を流すように、また海へと戻っていく。
俺たちは時間を忘れて、ただただ海と戯れた。
その間だけは、すべてのことを忘れて心の底から笑い楽しんだ。

そうこうしているうちに、周囲の人影が段々と少なくなっていた。
それに比例するかのように海も引き潮となり、徐々に海水がひいていった。
この海岸に着いた時には圧巻といえるほどまでの二つの海を形成していた両者とも、今は少し衰退気味で人によって作られていた海はもはやないに等しい。
そこでようやく時間を意識し始め、確認しに行くともう十七時になろうかというところであった。
昨日の夜は長時間の運転による疲れで早く寝てしまったが、せっかくこうしてみんな集まれたのだから今日の夜は語り明かそうということになっていたため、そろそろ帰って夜に備えようということになった。


海の家に備え付けのシャワーで砂を落とし身支度を済ませる。
こういう時、やはり男性陣の準備は早く女性陣を待つのが常である。
俺と英雄は、女子陣を待つ間近くに用意されていたベンチに腰掛け海を眺めた。
日中は人が多かったことから、歓声やガヤガヤとした人の声に消されていたが、こうして人が少なくなると海本来の波の音が静かにかつ遠くまで響き渡っていた。
来た時には透き通った水色や群青に染まっていたこの海も、今は陽が沈みかけていることもありオレンジ色に染まりつつある。
右手奥には堤防があり、その先端にある灯台も灯りを放ち始め、薄暗くなってきた空や町並みを、わずかながら照らしていた。
「なあ敦」
俺がその景色の変化に浸っていると、横から英雄が声をかけてきた。
その英雄も俺のほうは見ることなく、俺たちの目の前に広がる景色を見つめていた。
「ん?」
「お前さ、玲奈のこと忘れられたか?」
「なんだよいきなり」
「いいから」
「……。まあ、玲奈に対する未練はもうないよ」
「何か他にも言いたげな様子だな」
「玲奈のことは忘れても、じゃあ次の恋愛をしようかとは思えないよ。俺が悪いとはいえ、ああいうことがあったんだから中々次には踏み出せないよ」
「もし相手がそのことを知っている人だとして、それを受け止めてくれるって言われたらどうだ?」
「なんなんだよさっきから。とりあえず俺は、しばらく恋愛する気はないよ」
「そっか」
「何で?」
「別に」
「ふーん」
その間もしきりに潮騒が響き、俺たちの間をほんのりと冷たくなった潮風が吹き抜けていった。
「お待たせー」
女性陣がようやく準備を整えて出てきたため、俺たちは海に別れを告げ海岸を後にした。


車内には真佑と梓を乗せていたが、二人とも眠っている。
あれだけ遊べばそうなるかと感じつつ、英雄に言われたことがどういうことなのか気になった。

――もしかして、このメンバーの中に俺のことを……
  ってバカか俺。何考えてんだか

一人で乗り突っ込みをしつつ、旅館を目指した。
助手席側の窓からは、もうすぐで沈みきってしまう太陽の燃えるような陽の光が、俺の頬を赤く染めていた。


旅館に着いてすぐ、俺たちは露天風呂へ向かった。
昨日はあれだけ気持ちよかったのに、今日日に焼けてしまったせいでヒリヒリと肌が痛んだ。
あまりの痛さに長時間浸かっていられず早くあがる。
そして昨日同様、豪華な懐石料理を食べたわけだが、みんな海であれだけはしゃいでいたせいで疲れているのだろうか、口数が少なくどちらというと沈黙のほうが多かった。

――これは夜の語りも中止になるかな

そう感じつつ、部屋に戻って各々できる範囲で明日帰るための荷詰めをし、俺は少し外の空気を吸いながら夜空でも見ようと思い、外に出ることにした。
階段をおりてロビーへ出ると、ちょうど美波が外へ出て行こうとしているところに出くわした。
どうしたんだろうと感じた俺は、美波の後を追うことにした。