Side Story | オリジナル小説 『嵐の中の小鳥たち』

オリジナル小説 『嵐の中の小鳥たち』

誰もが考えたことのある永遠のテーマに、私なりの考えを盛り込んで物語にしていきます!!

この物語を読んで、皆さんも色々考えてくださると光栄です\(^-^)/




Side Story
The Episode of Mayu 『負けず嫌い』



「いやー、今日楽しかったね」
畳張りの格式の高い和室に布団が四人分並んでいるが、女子三人は布団には入らず向かい合って座っていた入り寝転がっていたりする。
「敦と英雄もう爆睡してたよ。いびきかいてる」
美波が部屋に戻ってくるなりそう言った。
「二人は、ずっと運転してくれたんだもんね」
梓がそう言い出すと、「私と真佑、鴨川シーワールドではしゃぎすぎて疲れちゃってさ。旅館に着くまでの間寝ちゃってたからなんか申し訳ないよね」と理沙が申し訳なさそうな表情をした。
「電車代もかからないし、大荷物持って移動することもないし、本当に感謝だよね」と美波。


私はこの際、思い切って聞いてみようと思った。
「ねえみんなはさ、気になる人ととか好きな人とかできた?」
みんなは「えっ」と言って同時にこちらを凝視したので、急に恥ずかしくなり顔が熱くなるのを感じた。
「もしかして真佑、恋したの?」
理沙が意味ありげな表情を私に近づけてきた。
「うんと……恋いしたっていうか……うーん……」
いつもはハキハキと物事が言える私でも、こういう話には滅法弱い。
こういう話も、人の話を聞くのは大好きだが自分の話ともなると照れて頭が真っ白になってしまう。
「へえ。真佑ちゃんも恋したり、そういう表情したりするんだ」
梓にまでそう言われたことが余計恥ずかしく「え、私どんな表情してる……?」と聞いてみると「顔真っ赤にしてはにかんでる」と返ってきて余計に恥ずかしくなる。

――確かに私はバレー必死にやってきたけど、ちゃんと女の子だし……
  恋したことも、付き合ったことだってあるし……

そう言おうと思ったが、これを言えば自分で種をまくことになると感じたため、喉の奥でその声を押し殺した。
「で、真佑の気になっている人は誰なの?」
美波までニヤニヤしてこちらを窺っている。
尋常じゃない恥ずかしさに見舞われて言うことを躊躇ったが、ここまできて言わないのもなんだし、まずこの三人から逃げられないと感じたため、大人しく白状することにした。
「笑わない……?」
「人の恋を笑わないよう」と美波は笑っていう。
「驚かない……?」
「大丈夫大丈夫」と梓も私の答えを待っていた。
「実はさ、あ、あ」
「あ?」みんなが私の顔を覗き込み、続きを待っている。
「敦のこと、気になっててさ……」
なんとか言葉を振り絞り、やっとの想いでそれを言葉にした。
心臓が強く鼓動を打っているのが自分でもわかる。
こんなに激しく脈を打っていて私の心臓は正常に機能しているのだろうか、私の心臓はもつのだろうかと思ってしまうほどだった。
「え、敦君が好きなの?」
梓が先ほど以上のテンションで迫ってくる。
「へー!!敦ならいいじゃん!!」
理沙も話にのってきて、二人とも深夜一時とは思えないテンションになっている。

しかし、先ほどまで話にのっていて美波は何も言ってこなかった。
むしろ敷かれた布団のしわを凝視していて、決まりの悪いような表情をしていた。
「美波、どう思う?」
理沙に話題を振られた美波は急に慌てだし、「え、あ、うん。敦ならいいと思う。応援するよ」と言ってくれたが、その言葉が本心からではないのがわかった。

――美波も、もしかして敦のこと……

私は咄嗟にそう感じた。
何か明確な根拠があるわけではない。

――もしかしたら何か敦の秘密を知っていて、敦は止めたほうがいいと思っているのかもしれない。
  いや、もしかしてもう敦と美波は……

一人頭の中で思考を巡らせる。
セッターというポジションは、レシーブされたボール、味方の状況、相手のブロックやレシーバーの位置など様々な情報を瞬時に見て取り、一瞬で思考をめぐらせトスを上げなくてはならない。
そのポジションを小学生の頃から続けている私は、思考の巡らせが人よりも早く今のように様々な情報が頭を駆け巡る。
一種の職業病のようなものかもしれないと日頃から感じていた。


どちらにせよ、美波が敦を好きという保証は何もないが、女の勘というやつでそうなのだろうと感じた。
美波は顔も美人だし、スタイルもいい。
先ほどみんなで風呂へ入ったとき、こっそりみんなの体を眺めてしまったが、美波のスタイルの良さといったら素晴らしかった。
モデルにでもなれるのではないかと思ってしまったくらいで、そんな美波に比べたら私は……とどうしても悲観的になってしまった。
男なんて生き物は、何を考えているのかさっぱりわからない。
彼女がいても男は道行く女性に目を奪われ、私たち女性の話を親身になって聞こうともしてくれない。
そもそも、女性は外見じゃなく中身が大事だよとよく言うが、それを本気で思っている男がこの世に何人いるだろうか。
確かに中身は大事だが、結局最後は外見の良い女性に走っていく。

――私と美波が同時に告白したら、世の中の大半の男は美波を選ぶんだろうな……
  敦も、そうなのかな……

職業病の思考の速さは、思いもよらぬ方向へと加速をはじめ、私を谷の底へと引っ張っていこうとする。
しかし、そこでもう一つの職業病とでも言うべきか、バレーで培ってきた負けず嫌いが私を谷の頂上へ引き戻す。
バレーだけでなく、何に対しても誰にも負けたくない私は、頑張って美波を倒そうと決意した。
いや、美波を倒すのではなく美波に負けない女になってみせると、勝手に決意したのだ。


「真佑ー?大丈夫ー?」
理沙にそう声を掛けられ、私は思考の迷路の中からようやく抜けられた。
「あ、大丈夫大丈夫」
「ねーねー、真佑ちゃんはさ敦君のどういうところがいいなって思ったの?」
「うんと……私が事故にあう前も、遅くまで私の愚痴聞いたりアドバイスくれたりしててさ。で、事故にあった後も私の容体窺いにこっそり来て看護師の人と話をしてたみたいだし。何よりも、私を元気づけるためにバレー始めてくれたでしょ?敦はどこのポジションでも出来る人だし、うちの男バのチーム状況考えると、百%スパイカーになるはずなんだけど、セッターをしているっていうことは、多分私を元気づけるためにだと思うんだよね」
「なるほどね。ってことはさ、もし私が事故にあっていたら、敦はリベロをやってくれていたのかな?」
「うん。敦はそうすると思う。そういうところがいいなって。誰にでも、分け隔てなく接するでしょ?」
話している間に段々と恥ずかしさも抜けていき、遠慮なくみんなに話すことができた。
「敦、本当にいい人だもんね」
美波が突然会話に入ってきたため、かなり驚いた。

――やっぱり美波は……

女の勘はよく当たるし怖いというが、今まさにそれを証明した瞬間だった。
――絶対美波には負けない

そう強く思った、旅行一泊目の夜だった。