第5章 『家族の在り方』 4 | オリジナル小説 『嵐の中の小鳥たち』

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誰もが考えたことのある永遠のテーマに、私なりの考えを盛り込んで物語にしていきます!!

この物語を読んで、皆さんも色々考えてくださると光栄です\(^-^)/




4.



今日から3日間は部活が休みだ。
というのも、せっかくの夏休みだしみんなで何処か出掛けないかという英雄の提案にのり、二泊三日で旅行へ行くことになっていたのだ。
行く先はというと、我が千葉県の南端の方に位置する館山という場所だ。
メインは海水浴ということだったが、館山は内房といわれる東京湾側位置していて、外房である九十九里などに比べて比較的波も穏やかであるため館山が選ばれた。

千葉県は東京とも隣接しているため、比較的栄えているように思われがちだがそれは都市部よりの市の、しかもほんの一部くらいで、南端の方へ向かうと自然豊かな観光地へと姿を変える。
また、千葉県はその大半を海に囲まれていることから魚介類が豊富にとれる。
また、魚介類だけでなく山菜なども豊富に採れるため食事に恵まれている。
その館山をチョイスしたのは、千葉県に住む俺と英雄で、みんなも納得してくれた。

館山へは当初電車で行こうという話であったが、荷物も多いし車の方が良いのではないかという話になった。
くしくもその時免許を持っていたのは俺と英雄だけで、当然のことながら俺たち二人が車出しをすることに決まった。
朝、みんなには俺たちの最寄駅に集合してもらい、俺と英雄はそれぞれの車で駅まで迎えに行った。
旅行には、俺と英雄、梓、美波、理沙、そして真佑も来た。
真佑はすっかりと元気になり、今では親指がないというハンデを一切感じさせないくらいだった。
部活でも、出来ないと諦めることなく積極的にボールに向かっていっていた。
ポジションも、親指が使えないと致命傷であるセッターを決して止めず、親指が使えなくてもあげられるように練習すればいいと、毎日地道に努力している。
理沙曰く、俺たちがそれぞれ自分のために頑張ってくれたから、もう一度頑張る勇気が湧いたと言っていたそうだ。
そんな頼もしい真佑も参加してくれたというのに、幸男は生徒会の活動をどうしても疎かにしたくないと旅行には不参加だ。

――こんな時くらいいいじゃねえかよ……

そうも思ったが、そういった感情には左右されず、最後まで自分の意思を貫き通そうとする一見すると頑固なところが、幸男の良さなのかもしれないと思い諦めることにした。
本当ならノブも連れて行きたかったが、ノブは俺と美波以外のみんなとは知り合いではないため誘えなかった。
しかし旅行に行くことを伝えた際、「美波ちゃんに何かないよう、くれぐれも頼むぞ」と言われたが、俺は何に気を付ければいいのかさっぱりわからなかった。


かくして駅に面々が集まった訳だが、出発前から早速問題が起きた。
それは、誰がどっちの車に乗るかという話だ。
俺と英雄を除くと四人であるため、自然と二人二人に分かれることとなる。
しかし「どっちの車に乗る?」という英雄の質問に対し、なんと四人が声を揃えて「敦」と言った。
テレビでよく見るひな壇からコケ落ちるお笑い芸人のように、駅前という公の場所であるにも関わらず英雄は大コケした。
「お前らふざけんなよー」と英雄は言っているが、女子四人はどうしても英雄の車が嫌なようである。
「どっちでも変わらないって。なんでそんな英雄の車嫌なの?」
俺が笑いながら聞いてみた。
「運転雑そう」
「怖い」
「車汚そう」
「うるさくて落ち着かなさそう」
女子四人が三者三様…いや、四者四様に冷たく言い放ったため、少なからず英雄はショックを受けていた。
仕方なくじゃんけんで決めることとなり、美波と梓が俺の車で真佑と理沙が英雄の車に乗ることになった。
俺の車は親父が長年使い続けていたお古であったため、カーナビも旧式であてにならない。
それに対し英雄の車は、最近買い換えたばかりの新車を親から借りてきたようで、カーナビも最新式である。
そのため、英雄の車が先導をとり俺は後からついていくことになった。


俺は内心、美波のことを先日から引き続き気にかけていた。
機会があれば聞いてみようとも思っていたが、後部座席に座っている美波を見てみると梓と楽しそうに話して笑っている。
俺は合宿なら嫌になるほどいったが、このようにレジャーでみんなと旅行へ行くのは初めてであったし、みんなもこうして楽しそうにしている。
その空気を壊してはいけないし、美波はバイトと部活の両立で本当に疲れていただけかもしれないと思い、もしそうだとしたら今の俺ができることは精一杯美波を楽しませて笑わせてやることだなと感じ、今回の旅行を全力で楽しむことにした。

向かっている最中、様々なことを話した。
春学期中にあったことを思い返してみたり、それぞれ夏休み中にあったエピソードを話してみたりと話題は尽きなかった。
しかし突然美波の携帯に真佑から電話がかかってきて、「英雄の運転マジ無理。荒い。理沙が酔っちゃったから次のパーキングで少し休憩しよう」という内容であった。
それを聞いた俺たちは、「みんなの予想通りだな」と声をあげて笑った。
パーキングで30分ほど休憩し、理沙の体調が落ち着いたところで出発しようということになったが、このまま英雄の運転だも理沙が可哀想だからとここから乗る車を交換することになった。
俺は理沙を酔わせないよう、細心の注意を払って運転した。
「敦の運転まじ安全」
「落ち着く」
真佑と理沙はそう言ってくれていたため安心した。
偶然にも俺たち三人はバレー部であるため、当然話題はバレーの話ばかり。
最近の練習のこともあるが、中学時代からの思い出の話や顧問の先生の笑い話などでとにかく盛り上がった。
最寄駅から車を走らせること約二時間ほどのところで、鴨川市という所に差し掛かる。
鴨川市には「鴨川シ―ワールド」という水族館があり、まずはそこに寄ることにした。
魚を眺めたり、軽く昼食をとったりした後は、「鴨川シーワールド」の大目玉、イルカやシャチのショーを見に行った。
最前列で見ていた俺たちはみんな揃ってビショビショになってしまい、悲惨な恰好になってしまった。
しかし、そんな事件があってもみんなでいれば自然に笑いに変わってしまう。
それが友達であり、俺たちの良さなのかもしれないと感じながらイルカショーを堪能した。
そうこうしているうちに夕方になってしまったため、再び車を走らせ館山にある旅館に向かった。
久しぶりにこうしてみんなで遊んだし、はしゃぎすぎて疲れてしまったのだろうか、真佑と理沙は後部座席でお互いに寄りかかり、お互いを支えにするような形でし眠っていた。
そんな二人を何処か愛らしく思いながら、起こすことのないようより一層安全運転を心がけた。
窓の外には、オレンジ色に染められた水平線から夕日が少しだけ顔を覗かせている。
その美しい景色に見送られながら、ただただひたすらに車を走らせた。