23.
ランニングから帰ってきた後、軽くシャワーを浴びて学校へ向かった。
そして授業終了後、俺はみんなを河原に集めた。
あいにく今日はみんなサークルなど忙しい日ではあったが、事態は急を要するとしてサークルなど各々に休んでもらったのだ。
「なんですかわざわざ呼び出して。敦君と違って僕たちは忙しいんですけど」
来て早々、幸男は不満の声をあげた。
「急にどうしたの?」
美波も怪訝そうにしている。
「まだ理沙が来てないから待ってくれ」
「え、理沙ちゃん部活でしょ?理沙ちゃんも呼んだの?」
梓も、それには疑問を感じたようだ。
「ごめん、お待たせ」と理沙が走ってきた。
「これで揃ったな。よし、敦始めよう」
英雄にそう促され、俺はみんなに説明を始めた。
「実は、真佑のことで話があるんだ」
俺の切り出したその言葉でみんなの間に緊張がはしり、唾を飲み込んだ者がいたのもわかった。
入院中の真佑の話題を前触れもなく、しかもいきなりこのように話し出せば、内容が良くないことだと誰だってわかるだろう。
俺たちを取り巻く雰囲気は急に重くなったが、俺は変わらぬ口調で全てを打ち明けた。
真佑の指の手術が、明日であることも。
「そんな……」
「そんなことがあったなんて……」
みんなが口を揃えてそう言った。
理沙に関しては、もう一緒にバレーができないと大粒の涙を何滴も何滴も流していた。
当然ながらみんな驚きを隠せないようだったし、やはりこの現実を受け入れられないようだった。
「そこで、俺と英雄はある人から助言を受けた」
そう切り出し、大将から言われたことも話した。
その大将の話には、俺と英雄だけでなくみんなも納得していたようだった。
「つまり真佑をもう一度たち直させるためには、俺たち一人一人の頑張っている姿を見せるのが一番だってわけ。もちろん、今みんなが頑張ってないというわけではないけど、出来たらみんなも自分が出来ること、むしろ自分にしか出来ないことは何かっていうのを考えて実践してほしいんだ」
「自分にしか出来ないことか……」
美波はそう言って早速考え始めていて、その姿を見たみんなも考え始めた。
ほんの数分もしないうちに、「わかりました。頑張ってみます」と幸男が声をあげた。
素直に幸男がそう言い出したこと、一番に幸男が自分のやるべきことを見つけたのには、みんな驚いていた。
「言っておきますけど、敦君に頼まれたからではないですからね。真佑さんのためだからです」
そう言ってどこかへ立ち去ってしまった。
「あいつ素直じゃないなあ」
「あれが、あいつなりの優しさの表現なんだろ」
俺と英雄はそうして笑っていた。
先程までは重い空気が流れていたが、俺と英雄のその一言につられてみんなも笑いだしていて、心なしか空気も少し穏やかになっていた。
「私は、真佑の分もバレー頑張らなきゃ。絶対に、リーグ入れ替え戦勝ってみせる。だから、早速練習行ってくるね」
そう言って土手を上っていく。
「理沙、真佑の分も頼むな」
土手の上にたどり着いた理沙に向かって、そう大きな声で呼び掛ける。
理沙は何も言わず黙って頷き、髪をさらさらとなびかせながら走っていった。
理沙の表情からは、今までにはない強い闘志がみなぎっているのがよくわかった。
「ね、ちなみに敦と英雄はどうしようと考えているの?」
美波の質問に対し、「俺はまだ考え中だ」と英雄は答えた。
そしてみんなの視線がこちらに集まり、みんなは俺の言葉を待った。
特にまだ答えの見付けられていない英雄は、俺が昨日1日考えてどうだったのかが非常に気にかかっていたのだろう。
食い入るようにこちらを見ていた。
「俺も色々考えて…今日の朝方、俺にしか出来ないことというか、俺がすべきことは見つけたんだ」
「何?」
俺は自分の答えをみんなに話すと、なるほどという顔で頷いていた。
「それはお前しか出来ないな。頑張れ」
英雄もそう応援してくれたし、梓や美波も「頑張って。私たちも応援してる」と後押ししてくれた。
――後は実際に行動に移すだけ……
こっからが正念場だな
俺は自分にそう言い聞かせ、いざ歩み出す。
今日も昨日のように自然の調べが奏でられている。
昨日はその心地好い自然が織り成すハーモニーも、気分が落ち込んでいたことで少し憂鬱に感じられた。
しかし、今日は違う。
そのメロディは、これから頑張ろうとする俺たちを祝福しているかのように、俺たちを応援しているかのように感じられた。
俺はその応援歌に送り出され、心地好い風に吹かれながら次のステップへ一歩を踏み出した。