14.
翌日の放課後、今日も真佑の入院する大学病院に向かっている。
しかし、今日は昨日とは違う。
違うというのは、今日は俺一人で、更にみんなにも内緒で来ている。
何故そんな行動に出たかといえば、理由は一つしかない。
昨日の、一瞬ではあったが真佑が浮かべた曇った表情と儚げな目つき。
――絶対何か隠している
俺はその疑問を確かめるために、更に真佑の不安をなんとか拭うべく病院へ向かったのだ。
もし俺の想像している通り真佑の身体になんらかの支障があったのなら、その事実はみんなをまた絶望的な不安に陥れることになる。
そうさせないために一人で来たのだ。
病室を覚えていたため、受付には立ち寄らずそのまま真佑の病室を目指した。
エレベーターを降りた所には、すぐナースステーションかある。
左に曲がると小児病室、右に曲がると個人部屋がいくつも並んでいた。
そして真っ直ぐ行った所はガラス張りの遊び場がある。
小児病室に入院する子供たちが遊べるよう、テレビや絵本、ぬいぐるみや戦隊物のグッズなどが置いてある。
ガラス張りの窓からは、目下に大学病院の所有する自然に溢れた広場が一望でき、ほんの微かではあるが遠くに俺たちの通う出津大学も見えた。
いざエレベーターを降りて正面を見ると、その遊び場の窓から外の景色を見つめる真佑の後ろ姿が見えた。
その後ろ姿はなんとも儚げで、普段から撫で肩ではあるが今日はいつも以上に下がっている気がして、その肩の落ち具合が真佑の落胆している気持ちを表しているのではと感じた。
練習中に見せるどんなボールにも負けじと向かっていく真佑の強さ、普段からも物怖じせず堂々としている姿、そんなものは一切見てとれずまるで別人のようであった。
「杉野さん、昨日あなた達が帰ってからずっとああなの」
俺の横から聞き覚えてのある声がし、そちらを見てみると昨日検査のために真佑を迎えにきた看護師だった。
「あ、ども」と驚きつつも会釈した。
「あなた、許可とらないで上がってきたでしょ」
「あ、いや、その……」
「冗談よ。私が許してあげる」
「あ、ありがとうございます」
昨日研修生のようなこの看護師は、無表情で事務的な動きをしていたことから少し冷徹さを感じたが、それは思い違いであったようでとてもいい人だった。
「私、水無美香っていいます。今この病院の附属の大学通ってて、研修中でこっちに来てるの。よろしくね」
「あ、真佑の、じゃなくて杉野さんのクラスメイトの藤原敦です」
自己紹介をすませた俺は、先程水無さんがいった「昨日あなた達が帰ってからずっとああなの」という言葉が気になり尋ねてみた。
「あの、さっき言ってたことって…」
「昨日の夕方も、今日も朝早くからああして外を眺めているの。私も気になって声かけてみたんだけど、病室にいても退屈だから景色を見ていたくてって言うだけでさ。でも景色は病室からも見えるしなんか変だなって……。なんかわからない……?」
「実は、俺も昨日杉野さんの様子がいつもと違うように見えたんで確かめにきたところなんです」
「そうなんだ……」
「あの、真佑は本当に大丈夫なんですか?本当に、ちょっとした怪我なんですか?」
水無さんなら確かなことを教えてくれる、そう見越した俺は水無さんに迫った。