11.
「え?」
全員がその声のした方を見ると、身長が大きく体格の良い中年女性が立っていた。
これだけ身体が大きければ威圧感があっても良いくらいだが、その女性の明るい笑顔と優しく暖かい声がその威圧感を消していた。
「真佑ママ!!」
その顔を見るや否や、理沙は大きな声を出した。
「ママ?」
その体格の良い女性が真佑のお母さんだということを知って、全員声をあげて驚いた。
「初めまして。真佑の母です。真佑がいつもお世話になっております」
その見た目からは想像がつかないほど、真佑のお母さんは腰が低くとても穏やかな人だった。
「こちらこそ」
簡単な自己紹介をすませたところで話は本題に。
真佑のお見舞いに来たが親族以外は面会できないという旨を真佑のお母さんに伝えたところ、真佑のお母さんは無言で先ほどの受付の女性の元へ向かった。
こちらから何を言っているかは聞こえなかったが、身振り手振りを交えて話をしている。
受付の女性は困った顔をしていたため、もしかしたら俺たちが面会に行けるよう頼んでくれているのかもしれないと感じ、俺たちはその光景を静かに見守った。
しばらくして真佑のお母さんが戻ってきて「面会OKよ」と笑顔で告げた。
俺たちは今病院にいるということを忘れて声をあげて喜んだ。
真佑のお母さんが病室まで案内してくれるということで、俺たちはその後を黙ってついていった。
先程までは早く真佑の所に駆けつけたいと思っていた俺だが、先ほどの受付の女性の話から真佑は深刻な怪我なのかもしれないと次第に俺の中で焦りが生じ、もしそうだとした会いにくいとも感じ非常に緊張していた。
俺は大きな大会でも緊張しない心臓に毛が生えているようなところがあるが、その俺でも緊張しているのだから事態は深刻なのである。
「ここよ」
真佑のお母さんはそういって扉の閉まっている病室を指さした。
みんな緊張してしまっているのか、誰ひとり病室へ入ろうとせず、ただただ黙ってドアノブを見つめている。
「ここ個人部屋で、中は真佑しかいないから大丈夫よ」
真佑のお母さんはそう言って笑っているが、それは廊下の名札を見た段階でみんな最初からわかっていることである。
他の人がいることを心配して入れなかったのではなく、個室だからこそ入れなかったのだ。
俺の勝手な印象ではあるが、個室ともなればお金持ちの人か重病の患者というイメージがあったのだ。
――もし真佑が後者の立場であったら……
そう考えると、ドアノブに手を伸ばすこともできなかったし、例え誰かが部屋に入っていったとしても俺はその後に続く勇気が出なかった。
「敦、お前先に入れよ」
英雄は俺にそう小声で言ってきた。
「やだよ。お前が先に入れよ」
同じく小声でそう言い返す。
「だって怖いし」
「それは俺もだし」
「お前あんな早く行きたがってたじゃんかよ」
「そうだけど、あれはさっきのことだし……」
「いいから早く」
みんなを見てみても入る気配はなく、早く入れと言わんばかりの顔でこちらを見ている。
――仕方ない……
入るか……
覚悟を決め、震える右手を左手で抑えながらドアノブに手をかけようとした時、自然に扉があいた。