第4章 『努力のもたらすもの』 10 | オリジナル小説 『嵐の中の小鳥たち』

オリジナル小説 『嵐の中の小鳥たち』

誰もが考えたことのある永遠のテーマに、私なりの考えを盛り込んで物語にしていきます!!

この物語を読んで、皆さんも色々考えてくださると光栄です\(^-^)/



10.


当然、授業になんて集中することはできなかった。
昨日、あのまま真佑の家まで送り届けていればこんなことにはならなかったのにと後悔した。
真佑が事故にあったことは俺の責任もあると感じ、ただひたすらに自分を責め続けた。


ふと窓の外を見てみると、窓の外にはいつもとなんら変わらぬ世界が広がっていた。
海のような透き通った青空、綿あめのような白くふわふわの雲、カメラのフラッシュのように眩しい陽の光。
その中で小さい翼を必死に羽ばたかせる小鳥、テラスで楽しそうにトランプをする学生。
いつもとなんら変わらない。

しかし、教室の中の世界にはいつもいるはずの真佑がいない。
外の世界はいつもとなんら変わらないにも関わらず、この教室の中に広がる世界には大切なものが欠けてしまっている。
内と外繋がっているはずの1つの世界が、窓という壁で二分化されてしまったようで、俺は寂寥の念にかられていた。
いっそこの窓を破りたい、そうすればこの世界は繋がるとも考えたが、そんなバカげたことをしても真佑が戻ってくるわけではない。
今俺にできることは、ただただひたすらこの時間を耐えることだけだった。

それから何分が経過しただろうか。
ようやく、授業終了を告げるチャイムがなった。
急いで身支度をして、俺たちは教室を後にした。
正門で理沙とも合流し、すぐさま駅へ向かった。
「敦歩くの速い」
「みんなが遅いんだよ」
「バカ、お前が速いんだよ。そんな焦ってどうするんだよ。真佑は大丈夫だって」
焦燥にかられている俺を、英雄は一喝した。
「お前がそんなんでどうすんだよ。お前がそんなんで真佑のとこいったって、真佑は逆に心配になるだろうが」
「そう…だよな…。悪い…」
「敦の気持ちもわかるし、むしろ私たちだって焦って不安になる気持ちは同じよ?ただ私たち以上に真佑は不安だろうし、今は私たちが真佑を支えてあげなきゃ。だから、私達たちが焦ってちゃダメだよ」
その理沙の言葉に俺はハッとした。
真佑が事故にあったと聞いただけで、俺は一人で焦り混乱していた。
本来ならば、事故にあって戸惑い不安がっているであろう真佑の支えとならなくてはいけないのに、今この状態の俺が真佑のところへ行ったとしても、真佑はおそらく自分が事故にあったせいでこんなに心配をかけてしまったと自分を責め立てるだろう。
そんなことは絶対に避けなくてはならない。
俺の誕生日の時、みんなが支えてくれたおかげでどん底から這い上がり、今こうして生きていられる。
そしてその時、みんなに何かがあった時は絶対に俺が支えてみせる、そう自分自身に誓った。
しかし実際の俺はみんなを支えるどころか、一人で動揺しみんなを逆に不安にさせている。

――しっかりしなくちゃ……
  俺がみんなを支えなくちゃ……

俺はなんとか気持ちを抑えることができ、そうこうしているうちに真佑が入院している大学病院についた。
学校の最寄駅から何駅分電車を乗ったのか、駅からどれほどの距離を歩いてここまで来たのか、何も覚えていなかった。
それほどまでに気が動転していたのかと思うと、自分を恥ずかしく、更にみじめに感じた。


病院内に入って早速受付の所へ駆け込む。
「あの、昨日事故でこちらに搬送された杉野真佑さんはどの病室ですか?」
「お見舞いですか?」
「はい」
「ご親族様でいらっしゃいますか?」
「いいえ、杉野さんの友人ですけど……」
「申し訳ございません。ただいま杉野様のお見舞いはご親族の方のみとなります」
「え、何でですか」
「そんな重症なんでしょうか」
先ほどまでは必死に冷静を保っていたみんなも、さすがにこの受付の人の対応で危機感を感じたのだろう、美波が口を出した。
「いいえ、命に別状はありませんが、怪我の具合がどうも芳しくないようで……」
「そんな……」
みんな次の言葉に詰まっていた。
真佑がそんな状況にあるのに何もできない自分たちに、無事だから大丈夫と言っていた担任に、患者がそのような状況であるにも関わらず表情を一切変えずあくまでも事務的な対応をするこの受付の女性に、苛立たしささえ芽生え始めた。


「あれ、理沙ちゃん?」
そんな時、俺たちの後方から優しく、陽だまりのように暖かな女性の声がした。