8.
努力とは、どんな形で、またそれがいつもたらされるかはわからないが、必ず報われるもの。
俺はずっとそう信じてきたし、今でも、きっとこれから先もそう信じている。
……はずだった。
真佑に呼び出され、レストランで近況報告を聞きながら一緒にご飯を食べたあの日。
あの日、あの時の真佑は希望に満ち溢れていた。
一時はスランプ状態に陥り、努力することの意義すら見失った真佑だが、今まで堪えてきた分を吐き出し、俺とその真意について話し合ったことで、以前の状態に戻りつつあったのだ。
そして同時に、来週末に控えたリーグの入れ替え戦を前に、確かな手応えを感じているようにも見えた。
その後、俺たちは試合以外の話もたくさんした。
勉強の話もしたし、最近夢中になっていること、恋の話などもした。
まだまだ話しは終わりそうになかったが、また終電を逃して帰れなくなったら困るということで、続きはまた今度と話を打ち切り、帰宅することにした。
「じゃあ、気を付けて帰ってね。ちゃんと家帰るんだよ」
真佑は笑いながら言う。
「ちゃんと帰るわ」
俺も笑って見せる。
「真佑も気を付けて帰れよ」
「ここから5分もかからないんだよ?大丈夫だって」
――確かに、真佑のうちはここから5分かからないしそのマンションは目に見える距離。気を付けることもないか
「じゃあ、また明日ね」
真佑は笑顔で手を振っている。
俺も笑顔で手を振り返し、駅の方へ歩いて行った。
少し歩いて振り返ってみると、真佑はまだその場に残って笑顔でこちらを見つめていた。
もう一度、大きく手を振り改札の中へ入っていった。
翌日、真佑は学校へ来なかった。
何度携帯に電話しても、メールを送ってみても返事が返ってこなかった。
真佑が欠席している理由を、俺だけではなくみんなも、同じ部活の理沙ですら知らなかった。
「きっとさ、真佑ちゃん頑張りすぎてて体調崩したんだよ」
みんな真佑のことを心配して黙っている中、梓がそう言い出した。
――確かに、あいつ頑張りすぎてるよな……
梓の言っていることには俺も納得だった。
いや、前から真佑は常に頑張っていた。
先輩たちから何を言われても、嫌がらせをされても負けずに頑張っていた。
一旦はくじけそうになったが、そこで俺があんな話をしたから休むことなく真佑はひたすら頑張り続けた。
――俺が、もっと真佑を頑張らせてしまったのかもな……
あの日、真佑にあんな話をしたことにを俺は次第に後悔し始めた。
「真佑さんは、どんな時も、何をする時でも全力ですからね」
「ね、今日の放課後真佑の家行ってみない?体調崩していたとしたら、一人暮らしだから看病してくれる人もいなくて大変だと思うし」
当然、幸男や美波も真佑を心配していて、美波が言い出した案には全員が賛同した。
今日は部活もないということで、理沙も合流することになった。
そうこう話しているうちに、授業開始のチャイムが鳴る。
本日最後の授業。
俺は真佑の事が心配だったし、この授業は必修科目ではあるがサボって今にでも真佑の所へ行きたい気持ちになっていた。
しかし、真佑に努力は報われるから、どんな形であれ絶対に報われると言ってしまった手前、授業をサボって努力を怠るなんてことは到底できなかったのだ。
仕方なく、いつもの通り資料と筆記用具を机に並べ、教授がくるのを待った。