5.
家に行っても食べるものがないということで、俺と真佑は駅前にあるレストランに来た。
早速ご飯を食べ、ドリンクバーを飲みながらただただ会話をして時間を過ごした。
練習した後ということもあり、話の話題はバレーについてのことが多かった。
こんなにバレーのことで熱く語れるのは真佑が初めてだし、おそらく真佑しかいないだろう。
「ねー敦、努力は必ず報われるって言葉信じる?」
さっきまで笑顔で話していた真佑の顔が、急に真剣な表情にかわりそう尋ねてきた。
その真佑の真剣な表情を見ると、自然と俺の表情も強張った。
「き、急にどうしたんだよ」
「いいから、どう思う?努力したら、必ず報われると思う?」
正直、俺はどう答えていいかわからなかった。
――努力は必ず報われる
――努力した分だけ成長できる
こういうことは、中学生の頃から親や顧問の先生に口酸っぱく言われてきた。
何度も何度も、聞き飽きるほどに聞いていた言葉だ。
この言葉は、俺だけでなく学生時代に誰もが耳にする言葉ではないだろうか。
俺はその言葉を初めて聞いた時、自分の努力が報われることを信じて、自分を成長させていくためにただひたすら努力した。
部活だけでなく勉強にも、私生活にでも何をするにも努力を惜しまないように生きてきた。
その成果か、努力が報われたこともあった。
必死に勉強したことで学年三位の成績を取ったこともあったし、毎日自主練に励んで部活でレギュラーを勝ち取ったこともあった。
これらは、間違いなく努力が報われた瞬間だろう。
しかし、高校の部活での目標は全国制覇。
この目標は、いくら努力しても叶うことはなかった。
それどころか、最高の成績でも全国大会2回戦どまり。
自分の自由な時間があっても筋トレなどに励み、学生生活の全てをバレーに捧げて努力してきた。
あんなにも努力したにも関わらず、全国制覇はできていない。
つまり、俺の努力は報われなかったのだ。
――お前の努力は、他の人に比べれば劣っている
そう言われてしまえば、それが全てかもしれない。
確かに、俺が日本中の誰よりも一番努力したとは到底言えない。
そう考えると、努力は必ず報われるなんて言葉は、親や先生が子供を頑張らせるための手法であり、自分にとっても頑張ることをやめないようにする気休めなのかもしれない。
しかし、真佑にそれを言うことを戸惑った。
急にこういうことを聞いてきたのだから、おそらく部活で何かあって努力することの意味を問うているのだろう。
そんな状況下にある人に、努力は報われることもあるが報われないこともあって、親や先生が子供を頑張らせるがために用いる手法だの、自分自身を奮い立たせるための気休めかもしれないなど、到底言える訳がない。
ここは事実を述べるよりも、真佑を励まさなくてはと感じた俺は咄嗟に嘘を言った。
「もちろん、報われるさ」
「本当にそう思ってる?」
真佑はいぶかしげな表情でこちらを覗き込んできた。
「当たり前だろ。頑張れば頑張った分だけ、結果は後からついてくるものさ」
「敦は優しいね。けど、本当はそんなこと思ってないでしょ。」
「な、なんでだよ」
「目が泳いでる」
そう言って真佑は笑っていた。
「私を励まそうと思ってそう言っただけでしょ?」
「ごめん……」
まさか見抜かれるとは思ってもみなかったため、俺は動揺してしまった。
しかし、真佑はあくまでも冷静に努力の意味を問うた。
「私はね、ただ敦の考えを聞きたい。だから正直に言って?」
そう言われても、あくまでもここは真佑を励ますことを優先するべきではないかと感じていた。
むしろ、真佑のために俺がしてあげられることはそれくらいしかないのだ。
だが真佑は雲一つない青空のような透き通った目で、俺の目をただただ見つめている。
その目から、真佑が望んでいるのは中途半端な励ましや曖昧な考えではなく、努力する意味に対する俺の考えであることがわかる。
しょうがなく、俺は自分のありのままの考えを話すことにした。