4.
みんなで遊んだ日から数日が経過した。
ある日の放課後、みんなと解散し英雄からご飯に行かないかと誘われた。
しかし俺は来週授業内で発表があるため、その誘いを断り図書館で一人勉強していた。
図書館にある様々な資料を読みあさる。
何冊も読み、そこから発展してまた調べ直してと繰り返していたら、あっという間に図書館の閉館時間になってしまい慌てて身支度を整える。
あんなに長い時間かけて様々な資料を読んだにも関わらず、発表の準備を整えることはできなかった。
――また明日図書館行かなきゃな……
今日終えられなかったことに対する萎えと、発表の準備の大変さにより家路につこうとする俺の足どりは非常に重かった。
図書館から正門の方に向かっていくには、いくつかある教室棟と体育館の前を通過していかなくてはならない。
体育館前に差し掛かると、体育館から偶然理沙が出てきた。
「おー、理沙!部活?」
「敦ー!今部活終わって、これから帰るところだよ」
「お疲れ」
「ありがとう。敦はこんな時間まで何してたの?」
「来週授業で発表あるから、図書館でその準備してたんだ」
「あー、私もそろそろ発表あるからやらなきゃ」
「やっぱりどこの学科も発表とかあるんだな」
「嫌になっちゃうよね。私なんて、部活で手一杯でそんな余裕ないもん……」
「確かに……。部活やってない俺ですら余裕ないくらいだし、理沙たちはもっと大変だよな」
「本当だよー」
「あ、そういえば、真佑は一緒じゃないのか?」
「真佑は一人で自主練してるよ」
「一人で?」
「そう。私達は電車だから残ると帰れなくなっちゃうけど、真佑は一人暮らしだからさ」
「なるほどね。偉いなあいつ」
「ね。私も同い年ながら尊敬しちゃう」
「理沙ー、早く帰ろー」
遠くで他の部員が理沙を呼んでいる。
「今行くー」理沙は大声で返した。
「じゃあ、待たせてるからそろそろ行くね。またね」
「おう、お疲れ」
俺は理沙と別れた後、自主練をしているという真佑のところへ行くことにした。
一人で自主練といっても、バレーで一人で出来ることといえばサーブくらいなのだ。
そのため、何か手伝えることでもあればなと考えていた。
体育館からは、ボールが床に落ちる音だけが虚しく響いている。
そっと音をたてないように覗いてみると、案の定真佑は一人でサーブの練習をしていた。
「真佑ー!」
「お、敦ー!どうしたの?」
「図書館で勉強してて、帰る時理沙に会ってさ。真佑が一人で練習してるって聞いたから、なにか手伝おうかなって思ってさ」
「ありがとう。嬉しいよ」
話を聞くと、真佑はサーブが苦手らしい。
俺はどちらかというとサーブが得意な方だったので、実際に打ちながら真佑にアドバイスする。
しばらくやった後、時計を目にすると家までたどり着けない時間となってしまっていた。
「うわ、もうこんな時間かよ。ミスったー」
大声で叫んでしまい、俺の声が体育館に響く。
「え、なに、帰れないの?」
真佑の声から、焦っているのがわかった。
「うん……」
「うわ、ごめん…私ったらつい夢中になっちゃって…」
「いや、真佑は悪くないよ。実際、俺もかなり夢中になってたし」
ボールに触るのは部活を引退して以来だったため、自主練を手伝うというより俺も夢中になってしまったのだ。
「んー、じゃあ今日はうちに泊まっていって?」
「いいって。俺1人で泊まったら、色々まずいし…」
「まずいようなことするの?」
真佑は笑って意地の悪いことをいう。
「そういうことじゃなくて…」
「大丈夫だよ、そんなの気にしなくて?どうせ、他に泊まるところもないでしょ?」
「そうだけど…」
「なら決まり」
「申し訳ない……」
「いや、それはこっちの台詞だし…」
結局帰れなくなった俺は真佑の家に世話になることになった。
真佑が支度するのを待ち、俺達は体育館を後にした。