2.
翌日。
今日は奇跡的に、みんな放課後に予定がない日だった。
「こんなみんなの予定があうのなんか久しぶりじゃん!!遊びいくしかないっしょ!!」
みんやに予定がないことを知った英雄のテンションは、最高潮にのぼりつめた。
「確かに、敦君の誕生日以来集まれてないですものね」
「そうだね。今日だったら部活ないから理沙も来れるし」
幸男に続き真佑も話にのる。
「理沙ちゃんくるなら余計遊ぶしかない!!」
英雄のテンションが更に高ぶる。
どうやら、英雄は最近理沙に夢中になっているらしい。
しかし長年英雄を見てきた俺から言えば、英雄の理沙に夢中というのは恋のような本当の気持ちではなく、一種のファンとでも言えるタイプの感情だろう。
理沙は美人で運動をしているにも関わらずあれだけスタイルが良ければ、英雄が夢中になるのもよくわかる。
むしろやましい気持ちもなくファンという面で考えれば、俺自身もその一人として数えられるのかもしれないなと感じた。
「行こ行こ」
梓や美波もこの案に賛同している。
「なら、行くか!!」
バイトを探さなくてはいけない俺だったが、こうしてみんなが集まれる機会は中々ないためバイトなんて探してる場合じゃないと思い遊びに行くことにした。
「いぇーい」
「でも、どこに遊ぶの?」
梓のその疑問に、みんな黙りこくってしまった。
それもそのはず、学校周辺には遊びに行けるような場所が何一つないからだ。
「まぁ、任せろって」
そう言い出したのは英雄だった。
「任せろって、お前どこかいいとこ知ってるのか?」
俺はこの辺りに何もないと思っていたため、自信ありげにしている英雄を見て大丈夫なのかと思い聞いてみた。
「二駅先にお薦めの場所があるんだよ」
「何?」
「それは行ってからのお楽しみってやつだよ」
「全く……」
しかし他の案を誰も思い付かなかったため、一抹の不安を胸にしながらも英雄のいうお薦めの場所に向かうことにした。
いざ二つ先の駅について改札を出てみると、そこにはさびれた商店街しかなかった。
ぱっと見た様子でな、近くに大きなスーパーなどはなく、八百屋やお肉屋、魚屋と分かれている昔ながらの商店街という感じだった。
近頃そういった商店街は、大きなスーパーなどの影響で売上が低下し閉店してしまう店が増えていて、シャッター街と呼ばれる場所も少なくない。
しかし、ここの商店街はほとんどの店が営業していて、お客さんもそこそこいるのである。
その情況が意味することは、客観的に考えれば大きなスーパーなどはなく近隣に住む人々はこの商店街で用を済ましているということである。
もっと言えば、大きなスーパーもないこの町で、遊ぶ所などないのではないかと考えてしまう。
「ついたついた!!みんな、ちょっと歩くけど我慢してな」
英雄の様子は、相変わらず自信ありげである。
しかし、その商店街を見た皆みんなは英雄の言ったことすら聞こえてないのではないかというくらい、口をぽかんとさせ商店街の様子を眺めていた。
――みんなも、俺と同じこと思っているんだろうな……
みんなの態度を見ていてそう感じた。
しかし、しょうがないとそれぞれ諦めたのか皆黙って英雄の後を歩いていった。
それから、十五分ほど歩いただろうか。
歩いていくと、住宅街があるわけでもなく、長く続く道路に所々家や個人経営の小さな会社があるくらいだった。
それを眺めているうちに俺は余計に不安になってしまい、「こんなところに何があるんだよ」と思わず聞いてしまった。
「そこの信号曲がったとこだよ」
そう英雄は答え、前を見てみると確かに信号があったが、その信号までもそこそこの距離がある。
そしていざ信号の所を曲がってみると、「enjoy house」という看板の古い建物があった。
「ここ?」
みんながその建物の存在に声をあげて驚いた。
それもそのはず、「enjoy house」という楽しげな店名にも関わらず、壁のあちこちの塗装が剥がれ落ち、年期のある風貌であったため、俺たちの不安はあまり変わらなかった。
「さ、入るぞ」
英雄に促され入ってみると、中はすごかった。
ボーリング場、カラオケ、ゲームセンター、ダーツやピンポンなどあらゆる娯楽が併用された施設になっていた。
レーンやカラオケの部屋数がそれぞれ少ない所が気になる所だったが、さびれた街の、更に少し歩いた辺鄙な所にある店であったため、人はほとんどいなかった。
「おー」だの「すげー」だの、皆からは歓声があがり先程までの不安そうな表情とは一変して笑顔がこぼれていた。
無論、俺もその一人だった。