第3章 『存在価値』 12 | オリジナル小説 『嵐の中の小鳥たち』

オリジナル小説 『嵐の中の小鳥たち』

誰もが考えたことのある永遠のテーマに、私なりの考えを盛り込んで物語にしていきます!!

この物語を読んで、皆さんも色々考えてくださると光栄です\(^-^)/



12.


「でも、祝うってこのあとどうするの?」
「あ、どうしようか……」
どうやら彼女は、何も考えていなかったようだ。

――とりあえず思ったことを口に出すタイプか

冷静に彼女を分析してしまう自分がいる。
このように、人を分析してしまうのが俺の悪い癖である。
彼女はまだ悩んでいる。
その悩む姿もただ悩んでいるような感じではなく、必死に悩んでいるのである。
このあとどう過ごすかということだけなのに、それについても真剣に考えるようなとこは彼女のいいとこの一つだと感じた。


「あっ、理沙!!!!」
どこかで聞いたことのある声が俺の後ろから聞こえる。
俺は通路に背を向けて座る形になっているため、顔は見えなかったのだ。
その声のした方を二人で見る。
「真佑!!!!」
そう声をあげたのは、二人同時だった。
そのあと俺と彼女はお互い顔を見合わせた。
お互いに、真佑のことを知っていたことに驚いたのだろう。
「藤原君なんで真佑のこと知ってるの?」
先にそう訪ねてきたのは彼女だった。
「なんでって、大学のクラス一緒で入学してからいつも一緒にいるから」
「え、藤原君って出津大だったの?」
「そ、そうだけど……」
「私もなんだよ」
「え、まじ?」
今日偶然出会い命を救ってくれた人が、同じ大学だったなんて話が出来すぎている。
しかし、紛れもなくこれが現実なのだ。


その後真佑と彼女の話を聞いてみると、彼女は同じ出津大文学部の異文学科で、真佑と同じくバレー部に在籍しているようだ。
真佑は一人で来ていて用も済んだため、こちらに合流することになった。
真佑は真っ先に、俺らが何故知り合いなのかや、どうして今こうして一緒にいるのかを尋ねた。
変に嘘をついても真佑ならきっと気付くだろうと思い、正直に話そうとした。
しかし、俺よりも先に彼女が口を開いた。
「実は私さ、今日ここ来るとき電車乗り遅れそうだったから走っててさ。それで駅前で携帯落としちゃって……で、そこにたまたま藤原君がいて拾ってくれたんだけど、私落としたこと気づかなかったのよ。それでそのまま電車乗ろうとしちゃったから、藤原君が追っかけて来てくれたんだ。だから、今そのお礼をしてたところなの」

――嘘上手いな……

あたかも事実であるかのように彼女は真佑に説明し、真佑はそれになんの疑いも持っていなかった。
彼女の嘘の上手さに感心したが、何よりも事実を話さないでいてくれたことがありがたかった。
彼女はマイペースなところもあるし、感情の起伏が激しいところもあるが、そういった優しさはしっかりと兼ね備えている。
その優しさが、誕生日に最愛の彼女にフラれるという俺の負った深い傷にしみる。


「ね、二人とも夜時間ある?」
唐突に真佑がそう尋ねてきた。
「俺は暇だけど……」
俺は彼女の方をみやる。
暇なのは事実だが、先程彼女が俺の誕生日を祝ってくれると言ってくれたばかりだから、それを無下にはしたくないと感じた。
「だけど……?」
真佑が続きを催促する。
「高坂さんは時間どうなのかなって」
「あ、私も大丈夫だよ」
「良かった。二人とも、今日うち泊まりこない?一人暮らしだからさ、夜とか寂しいしご飯作っても味気なくて…」
「なるほどね」
「よし、そうと決まれば帰らなきゃ!!」
真佑はそう意気込んで席を立った。
「あれ、もう帰るのか?」
「二人が来るって決まれば掃除もしたいし、晩ご飯にも力入れようかなと思って」

「なるほどね。あのさ、藤原君とせっかく知り合えたし、同じ大学ならなおさら色々話して仲良くなりたいからさ。もう少し話してたいんだけど…」
彼女がそう言ってくれたことは非常に嬉しかった。
「了解。理沙はうちの場所知ってるから、敦は理沙についてきてね」
「わかった」
「じゃあ、7時頃来てくれる?」
時計を見てみるとまだ2時過ぎで時間にも余裕があった。
「わかった。じゃあ、また後でね」
そうして真佑は人混みの中に消えていった。


それから俺と彼女は、色々話した。
大学のこと、バレーボールのこと、趣味や勉強のことも。
同じ大学とわかったことで、お互いの間にあった壁が払拭されたのだろう、なんの気兼ねなくお互いのことを色々話すことができた。
気づけばもう夕方になっていた。
彼女と話していると、時間を忘れてしまうほどに楽しくて、全く着飾らない素の自分でいることができた。