第3章 『存在価値』 10 | オリジナル小説 『嵐の中の小鳥たち』

オリジナル小説 『嵐の中の小鳥たち』

誰もが考えたことのある永遠のテーマに、私なりの考えを盛り込んで物語にしていきます!!

この物語を読んで、皆さんも色々考えてくださると光栄です\(^-^)/



10.


実際に中へ入ってみると、ショッピングモールの中は確かにすごかった。
知らないブランドのブースももちろんたくさんあったが、ルイヴィトンだのシャネルといった誰でも知っているようなブランドのショップもあれば、映画館や日本中の名物を集めたフードコートなどもある。
「すげえ……」
あまりの凄さに圧倒され、思わず声に出てしまうほどであった。
「でしょ?」
彼女は先程までは見せなかったとても明るい笑顔でそう言った。

彼女が先程から時折見せる笑顔は、とても綺麗だった。
先程までは死を目前にしていたし、更にはその死を邪魔されてしまったことで気が動転していたのもあって、彼女の容姿などほとんど気には止めていなかった。
しかし今こうして改めて見てみると、可愛い顔立ちだった玲奈とは異なり、彼女は女優にいそうな綺麗な顔立ちで、おそらく誰が見ても美人だと思うようなタイプであろう。

「服見たいからさ、付き合ってね」
そう言われ、スタスタと歩き始めてしまう。
「お、おい、待てって」
こんな広いショッピングモールで、連休で人がごった返しているショッピングモールの中で少しでもはぐれたら確実に迷子になってしまう。
この年で迷子になることだけは避けたいと思い必死でついていった。
先程までは早く彼女を追い払ってもう一度……と考えていたが、不思議とそんな気持ちは消えていた。


彼女は、気になった店があると俺に断りもせず黙ってフラフラと店に入っていった。
服を見る彼女の表情はとても真剣なもので、眺めている間は決して口を開かなかった。
しかし時折、「これどう?」と服を自分にあてがって俺に聞いてくる。
その時の表情は、服を眺めている時の真剣な表情とは大きく異なり、溢れんばかりの笑顔であった。
心なしか、その笑顔とギャップにドキッとしている俺がいた。

――自分の誕生日に最愛の人にフラれ、さっきまで死のうとしていたのに、なにしてんだか……

今日初めて出会い、命を救われた女の子にドキッとしている自分が情けなく感じられた。
しかし、何気ないこの時間も楽しく居心地がいい気もしていた。

「ねえ、どうって聞いてるんだけど」
少し離れていたはずの彼女の顔が、いつの間にか目の前にきていて驚いた。
「お、おう、いいんじゃない」
「うわ、適当。ちゃんと見てよ」
「み、見てるよ!!普通に似合ってるって」
俺はもうしどろもどろであった。
「じゃあ、これ買っちゃおうかな」
笑顔でその服を見詰めている。

結局そんなこんなをこの店でも他の店でも何度も繰り返し、彼女はたくさんの服を買った。
そして俺はその大量の荷物を持たされている。

――周りから見たら、俺たちカップルに見られてるのかな……

いつの間にかそんなくだらないことも考えていた。
すると彼女は「ね、お腹減ったからなんか食べよう!!」とフードコートの方へ歩き始めた。

――なんてマイペースな……

そうは思いながらも、黙って彼女にしっかりとついていく自が可笑しく、自然に笑みがこぼれていた。