第3章 『存在価値』 5 | オリジナル小説 『嵐の中の小鳥たち』

オリジナル小説 『嵐の中の小鳥たち』

誰もが考えたことのある永遠のテーマに、私なりの考えを盛り込んで物語にしていきます!!

この物語を読んで、皆さんも色々考えてくださると光栄です\(^-^)/



5.


「どうしたんだよ、わざわざ」
俺は平静を装って英雄のもとにきた。
しかし実際は、どんな話が俺に待ち受けているのか、不安があるのと同時に緊張もしていて、俺の心臓の鼓動が英雄にも聞こえてしまうのではないかというくらいに高鳴っていた。
「実はさ、あんまよくない知らせだ」
英雄は言葉を絞り出すように言った。
英雄がこんなにも神妙な面持ちでいるのは相当珍しい。
「大丈夫だよ。そんなんお前の様子見てればわかるし」
俺はあくまでも平静を装う。
「そか。なら、大丈夫だな」

――大丈夫なわけない。

今にも俺の胸は張り裂けそうだ。
どんな運命が俺に降りかかるのだろうか。
もはや俺は、悲劇のヒロインにでもなったような気分であった。

「…さっきまでさ、サークルのやつと飯食いに行ってたんだ」
ゆっくりと英雄は話を始めた。

「穴場みたいな所にいったからうちら貸しきりでさ、だからみんなで盛り上がってたんだ。そしたら、二人の男女が入ってきてさ」

――二人の男女……

嫌な予感しかしなかった。

「そしたら急にサークルのやつらが、あの子めっちゃ可愛い!!!!スタイル抜群だし、すんげぇ可愛い!!!!ってはしゃぎ出したんだ」

玲奈は前にも言ったように、本当に可愛い。
身長も高くてスタイルもよく、いわゆる八頭身ってやつだ。
俺と歩いていると俺に非難の目が集まるくらい可愛くて、デート中にファッション雑誌や芸能事務所に声をかけられたことだってあるくらいなのだ。

「でまぁ、そんな可愛い子がいるって聞いたらやぱ俺も気になるし、軽い気持ちでその子のことを見てみたらさ」
「玲奈だったんだろ」
俺はズバリと言い当てた。
英雄はそれに少し驚いていたが、そのまま話を続けた。

「男の顔見ようとしたんだけど、柱の影になってる席に座ってて見えなくてさ……んで、トイレ行くふりしてバレないように見に行ったわけよ」

俺の心臓の鼓動の速さは、尋常ではなかった。
誰かに心臓を握られているかのような激痛が襲った。

「その相手がさ、悟(さとる)だったんだ」

――悟……

頭が真っ白になった。
先程までの鼓動の速さはどこに行ってしまったのだろう。
むしろ俺の心臓は、今ちゃんと動いているのだろうか。

悟は中学の時からの友達である。
いや、友達というにはいささか無理があるかもしれない。
というのも、悟は俺のライバルといっても過言ではないからだ。
中学、高校ともに俺と同じバレー部に在籍していた。
俺は部長、悟は副部長として共にやってきた。
ポジションも同じエースポジション。
しかし性格やプレースタイルは正反対だった。
そのため何度も激しい対立をしてきたが、それでも試合など時には協力しあってきた。
悟は俺の何倍もバレーが上手く県選抜になるなど活躍していたが、それがきっかけか天狗状態で、俺を含め部員からは敬遠されがちな、そんなやつだった。
そのため、部活引退後は悟と一言も話していない。
玲奈と同じ大学に進学したということは玲奈から聞いていたが、なんで二人が一緒に……

「…し、…つし、おい敦!!!!大丈夫か?」
自分の世界の中で様々な思考を巡らせていたため、英雄の声が聞こえなくなっていた。
「あ、悪い……でもなんで玲奈があいつと……」
玲奈は可愛し、かっこよくて性格のいいやつに奪われるならまだしも、悟なんかに……
そんな気持ちだった。
目の奥から熱いものが込み上げてくるのがわかった。
それを必死に堪えつつも、英雄の前では泣いてたまるかというつまらないプライドがあり、「わざわざいいにきてくれてありがとうな。俺は大丈夫だからさ」そう吐き捨て家に引き返した。
「おい、敦!!!!」
英雄の呼び止める声が聞こえたが、振り向かずに家のなかへ入った。

そして俺はその場に座り込み涙を流した。
英雄や親には聞こえないよう、必死に嗚咽を押し殺した。


気がついたときには、もう夜が明けていた。