第1章 『巣立ち』 2 | オリジナル小説 『嵐の中の小鳥たち』

オリジナル小説 『嵐の中の小鳥たち』

誰もが考えたことのある永遠のテーマに、私なりの考えを盛り込んで物語にしていきます!!

この物語を読んで、皆さんも色々考えてくださると光栄です\(^-^)/



2.


親睦会がとうとう始まった。
俺が最初に考えていた、初対面で親睦会をやる意味があるのかという話だが、俺の予想は大幅に外れた。

最初こそみんな緊張していて重苦しい雰囲気だったが、1時間経過した今ではこのようなどんちゃん騒ぎの始末。
つくづくお酒の力は怖いと実感した。
しかし俺はどちらかというと人見知りだし、人付き合いも得意な方ではない。
だからこうして、今も隅っこの席に一人で座り、第三者目線で全体の様子を見渡している。

一方の英雄はというと何席か離れた所にいて、持ち前の明るさで既にみんなとも打ち解け、大学初日にしてクラスのムードメーカー的な存在になっている。
英雄のそういうところだけは尊敬できる。


そんな光景を眺めていた時、俺に声をかけてくる人がいた。
「あ、あのー、こんにちは。こ、ここ、座ってもいいですか?」
「あ、どうぞ」
少し酔っているのだろうか、それとも恥ずかしがっているだけだろうか、うっすらと頬を赤く染めた女の子が俺の前に座った。
「こんにちは。えーと、初めまして」ととりあえず挨拶をしてみた。
「は、はい、初めまして。えっと、さ、佐藤梓(さとうあずさ)と申します。よ、よろしくお願いします」
酔っているのか、滑舌が悪いのか、それとも人見知りなのか……。
どれに該当するのかはわからなかったが、彼女は咬みつつもなんとか自己紹介をした。
「俺は藤原敦っていいます。こちらこそ、よろしくね」

俺は正直緊張していた。
ただでさえ人見知りなのに、初対面の女の子が俺の所に来て、しかも二人きりという状況で、何を話したらいいのかわからなかったからだ。
ただそれがバレることも少し恥ずかしいし、バレないよう苦し紛れに話題を振ってみた。
「なんでこっちに来たの?向こうでみんなと話してればいいのに」
「ふ、藤原君こそ、向こう行ってみんなとお話ししないんですか?」
「あー、俺騒がしいのちょっと苦手でね。少し落ち着きたいなって思ってさ」
人見知りだからというのが少し恥ずかしくて、口から出まかせを言ってしまった。
「あ、私も同じですよ。だから、こっちに来たんです。もちろんみんなと仲良くなりたいとは思うんですけど、私極度の人見知りなんで……」

――なんだ、俺と同じタイプか

そう思いつつも、同じ人見知りということだけで少し親近感が湧いた。
「そっか。それよりさ、同じ学年で、しかも同じクラスなんだし敬語はやめない?」
「え、と、年上じゃないんですか?私てっきり年上かと……」
「それつまり浪人生に見えたってこと?」
「す、すみません……」
「謝ることじゃないけど……いちお、現役だよ。というより、年上に見えるほど老けてる……?」
「そ、そんな。ここに一人でいるときの雰囲気がやたら落ち着いていたし、てっきり……。ごめんなさい……。で、でも同い年なら良かったです。なら、敬語やめま……やめるね。」
落ち着いているわけではなくて、ただ人見知りなだけなんだけどな……と思いつつも、やっぱりそれは伏せておくことにする。
「うん、敬語じゃない方が話しやすいしな」
「そ、そうだね。あのさ、せ、せっかくこうして話せるようになった訳で、こ、これからも仲良くしていきたから、私のこと名前で呼んでくれる?」
普通に話すこと、そして名前で呼んでほしいとお願いすることに対し、少し照れているような面持ちではあった。
俺の中ではこの梓っていう子、人見知りだという割には中々ハキハキしているなという印象をうけた。
「わかった。なら、俺のことも敦って呼んでな」
「あ、ありがとう。でも私男友達のこと名前で呼んだことなくて恥ずかしいから、敦君って呼ぶね」
「わかった。改めてよろしくな」

 
梓は、俺にとって大学での友達第1号である。
そのまま話しを続けていると出身が同じ千葉県ということで、地元の話などで中々盛り上がった。
梓は顔付きが少々幼く身長も小さくて小柄な感じで、長い黒髪を後ろに束ねポニーテールにしている。
控えめというか少し大人しめの印象をうけるが、話しだすとよく笑う明るい子だった。
会話を重ねることで恥ずかしさが消えたのだろうか、先ほどとは打って変わって普通に会話することができていた。


そこに英雄が戻ってきたが、男子を一人、そして女子を二人引き連れてきた。
どうやら向こうの席で話が合い仲良くなったようで、敦は人見知りだから友達が出来ないだろうと見越した英雄が、俺のために連れてきてくれたのだ。
しかし、いざ俺のところにきてみるとその人見知りの俺に友達が出来ていて、しかもそれが女子ということで英雄はとても驚いていた。


結局、俺たちは6人で改めて自己紹介した。

英雄が連れてきたこの男子は、福門幸男(ふくかどゆきお)というらしい。
いかにもめでたそうな名前だが、容姿やその雰囲気からはそういっためでたさの欠片もなく、むしろ幸の薄そうなやつだった。
そして喋る時は、何故か誰に対しても敬語で、どこか嫌味っぽい話し方をするやつだが悪いやつではなさそうだ。
ただ、明らかに英雄とは正反対のタイプで、英雄と意気投合した理由が最大の疑問だった。

 残りの女子二人は、杉野真佑(すぎのまゆ)と佐伯美波(さえきみなみ)。
真佑は俺と同じでバレーボールをやっていて、長身で体つきもしっかりとしているし、髪は短く、いかにもスポーツ少女という感じでとてもハキハキしていた。
美波はそこまで身長があるわけではないが、髪もまいているし明るい茶色に染めていて、おまけにスタイルも良く誰が見てもクラス1のお洒落だった。
顔も中々美人だが、基本的に無口というか少し無愛想な印象だった。

 
自己紹介を終えて改めて五人を順に見てみると、それぞれバラバラというか共通点が一切見つからないような、アンバランスな組み合わせのメンバーだった。

――なんでこんなアンバランスな6人がこうして集まったのだろうか……

そのことに対しては少々疑問を感じながらも、大学初日にしてこのように友達が出来たのは切実に嬉しかった。
そのままこのメンバーで色々なことを話し、帰り際には全員が名前で呼び合える程の関係になっていた。
 

最初こそ、初対面で親睦会をやるのに賛成ではなかったが、今日は俺にとって一生忘れられない出会いであり、有意義な一日となった。
そしてこの出会いこそが、全ての始まりとなった。


帰り道、深夜で人通りのない近所の住宅街を英雄と並んで歩く。
「俺たちさ、本当に大学生になったんだな」
俺はふと感じたことを英雄に言った。
「今更なんだよ」と英雄は笑っている。
「なんか昼間とかはいまいち実感なかったけどさ、いざああしてみんなで集まって話してみると、大学生になったんだなって」
「変なやつ」
「もうさ、まだ子どもだからって言い訳なんかできないんだよな」
「そりゃあな。もう1人の大人として見られるだろうしな」
「なんかさ、今の俺たちって巣立ちしたばかりの小鳥みたいだよな」
「はあ?お前何言っちゃってんの」
英雄は怪訝そうな目で俺のことを見る。
「だってさ、確かにもう大人として扱われていくわけだけど、実際のところは俺たちはまだ子供なわけで。そんな子供な俺たちが、大学に入学したことをきっかけに段々と家を離れて厳しい社会に飛び込んでいかなくちゃいけないしさ」
「俺たちは、いつまでも母鳥と巣に守られているわけにはいかないんだよ。外敵がいる厳しい世界の中でも、自分で狩りをして生きていかなきゃいけないんだよ。今日はその一歩さ」
英雄は普段こそおちゃらけている能天気なやつだが、真面目な話もできるやつなのだ。
だからこそ、俺たちは小学生の頃からこうして一緒にいられるのかもしれない。
「そうだな。その厳しい世界で飛び回るための羽は、もう十分育ててもらったんだもんな」
「ははは。なに決め台詞はいっちゃってんの!ははは、ああ腹痛い」
「なんだよ、悪いかよ」
「だって、厳しい世界で飛び回るための羽はって、ははは。お前が思ってるより大分カッコ悪いからな」
英雄は腹を抱えて大笑いしている。
馬鹿にされたことは少しイラっとしたが、その英雄の笑いに吊られて俺も笑ってしまった。
「うるせえ」と英雄に一発蹴りをかましてやる。

――もう自分で生きいかなきゃいけないんだ。
大人たちから見たら小さい羽の小鳥かもしれないけど……
俺は俺なりに、精一杯羽ばたいていこう

そう決意した1日だった。





第1章 『巣立ち』 完