第1章 『巣立ち』 1 | オリジナル小説 『嵐の中の小鳥たち』

オリジナル小説 『嵐の中の小鳥たち』

誰もが考えたことのある永遠のテーマに、私なりの考えを盛り込んで物語にしていきます!!

この物語を読んで、皆さんも色々考えてくださると光栄です\(^-^)/



第1章 『巣立ち』


1.


雲一つない真っ青な空が、見渡す限りどこまでも広がっている。
その青空はまるで頭上にも海が広がっている、そんな錯覚を起こさせるほどだった。
「せっかくこんないい天気なら、どっか出掛けてえーー!!なあ、敦(あつし)」
英雄(ひでお)は、頭上に広がる真っ青な海に向かって両手を突き上げ叫んだ。
頭上に広がる海をじっと眺めぼーっとしていた俺は、英雄の声の大きさに驚き我に返った。
「お、おう、そうだな」
英雄は気のない返事をした俺に対し、「なんだよそのリアクション。っていうかテンション低っ!!うちらはもう大学生になったんだぜ?楽しい楽しい大学生なんだぜ?なのになんだよそのテンションの低さ」と一喝した。


相変わらず英雄はうるさい。
このうるささは昔から決して変わらない。
「大学生になったんだから、少しは落着きをもってくれ」
英雄も自分のうるささは理解しているのだろうか、俺の言葉をうけ苦笑いしてそれ以上言葉を返してこない。
 

申し遅れたが、俺は藤原敦(ふじわらあつし)。
先程英雄が言ったように、先日入学式を終え今日初めて大学に登校した。
そしてさっきから俺の隣にいるうるさいこいつは、小泉英雄(こいずみひでお)。
英雄っていう字を見ると、神話に出てくる英雄ヘラクレスだとか、ギリシアの英雄アキレウスだとかそういった英雄を想像する。
せっかくそれらの英雄と同じ漢字が名前に使われているというのに、俺の友達の英雄は英雄の欠片があるどころか、責任感や信頼感などを一切兼ね備えていないような能天気なやつだった。
英雄と出会ったのは小学4年生の時だ。
元々俺は、千葉県にある地元の小学校に通っていたわけだが、小学4年生の2学期に英雄が東京から転校してきた。
家もたまたま近かったことから、すぐに仲良くなり、家族ぐるみで付き合うようになった。
東京から転校生がくるとなると、俺たちのことやその地元のことを田舎扱いして馬鹿にするため反感をかいやすいというのが相場である。
しかし英雄にはそういった節はなく、むしろ俺たち以上にその地域を愛し、俺たちのことを田舎者扱いすることもなく持ち前の明るさで1週間たたずに打ち解けた。
それ以来俺と英雄は中学校も高校もずっと一緒で、おまけに大学までも一緒になってしまうというから、いわば腐れ縁というやつだろう。


俺らは今、大学のすぐ前にある河原に腰を下ろしている。
大学の前には、浅瀬なら底が見えるような綺麗な川が流れている。
大学側の河原には、様々な草花が生い茂り春の到来を見事に告げていた。
対岸の河原には、見渡す限り桜並木となっている。
その桜並木は俺たちの通学路にあたる道で、鮮やかに咲き誇る桜は道の両脇に植えられ、華やかなピンクのアーチを作って俺たちの門出を祝っていた。風に揺られざわめく桜の木々。
その風によって舞い散る桜の花びらは、ひらひらとゆっくり宙を舞っていた。
学校の目の前に、四季を感じることのできるこのような自然に囲まれていることが、我が大学のうりでもあった。


それはさておきこんな所で何をしているのかというと、この後早速クラスの親睦会があるそうだがまだ時間があるため、それまで時間を潰しているという訳だ。
「親睦会っていったってさ、大学初日に、初対面の人たちとご飯食べ行って仲良くなれんのかな」
俺が感じた疑問を素直に英雄にぶつけてみると「なに言ってんだよ!もう大学生活は始まったんだから、楽しむしかないっしょ!みんなと仲良くなって、で、出来たら女子の連絡先聞いてさ」という英雄らしい能天気な答えが返ってきた。
英雄に聞いた俺が馬鹿だったと半ば後悔しつつも、高校まで勉強や部活に散々苦労してきた俺としても、大学生活はやはり楽しいものにしたかった。
もしかしたら今日は、そのための第一歩なのかもしれない。


そしてまさに今日からの日々が、今までの俺を大きく変えていくことになる。
俺たちには、これからきっと楽しい毎日が待っている、そういう期待感に胸を膨らませていた。


だが色々な出来事を通して、今まで考えていなかったようなことを今日以降、深く考えていくことになるとはその時は思いもしなかった。