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『コラム 臨床を楽に過ごせる考え方』

https://ameblo.jp/totalconditioning/entry-12672112608.html

 

 

1.動きに多様性がり、体全体がチームとして働いている

 

 これがなぜ良い状態と言えるのでしょうか?いくつかの観点からお伝えしていきます。

 

 

1)コーディネーション

 良い動きとはチームワークです。

 どこか一ヶ所が強く上手く動くとうより、全体として良く働くことが重要です。なぜなら、参加するパーツが多ければ多いほど一つ一つの負担は減るからです。よくコーディネートされた動きは、外から見ると角ばった動きでは無く、弧を描く様に見えます。わかりやすいのは立って後屈する時です。股関節や背骨全体を少しずつ伸展させる動きです。腰の付け根だけで反っているのは角ばった動きです。

 

 

2)負荷の分配

 同じ重さのお神輿を担ぐなら人数が多い方が一人一人は楽ができます。少ない人数で担ぐとすぐに疲れます。疲れているのに頑張ると担ぎ手は怪我するかもしれません。怪我をした人は担げませんので、残った担ぎ手の負担はさらに増え、さらに怪我をしやすくなります。ついにはお神輿を担ぎ上げることすらできなくなるでしょう。

 

 これらは我々の体の中でも起こっています。同じ動作や仕事をするなら参加する部位は多い方が楽です。例えば、床に置いてある重いものを持ち上げるとします。腕だけでは持ち上がりません。腰で頑張ると痛めます。下半身にも参加してもらうことで、楽に痛めずに持ち上げられることでしょう。

 

 もし、力持ちが多人数いたら、もっと重く豪勢なお神輿を担ぐことができます。つまりパフォーマンスが上がるということです。

 

 もし、非力で人数が少なかったら、お神輿を持ち上げることができないかもしれません。パフォーマンスが低いということです。よしんば持ち上げられたとしても、故障するかもしれませんし、お神輿が崩れて外傷を負うかもしれません。これを防ぐにはお神輿を軽くするしかありません。

 つまり、 脊椎の圧迫骨折や手術による関節の固定など動かない部位がある場合、その部分は仕事をすることができません。つまり担ぎ手が少ない状態です。お神輿を軽くする、つまり負荷を減らすことを受け入れてもらうことも重要です。椎間板がへたった高齢者が何時間も草むしりした後で腰が痛いと言います。負荷が高いのです。「何回かに分けてやりましょう」と伝えます。

 人が様々がパーツで構成され今の形であるのにはそれなりに意味があります。もし構造的に問題が生じたとしたら、やはり、最高のパフォーマンスを求めるのは難しいのです。

 

 

3)多様性 

 小さな子どもが起き上がるのをみると、毎回異なった軌道で起き上がっているように見えます。かたや、高齢者はというと毎回同じ起きかたをする方が多いのです。不謹慎ですが、まるで棺桶から死体が起き上がる様に、真っすぐに起きて、真っすぐに寝ます。 「横を向いて起きたらどうですか 」と毎回言ってしまいます。

 動作に多様性があるということは、同一箇所に負担がかかり続けるリスクを回避することができるということです。また、次にお伝えする順応性にも関連しています。

 

 

4)順応性

 動作は環境に応じて柔軟に対応できる事が重要です。

 今、あなたの座っているイスから完璧に立ち上がれたとして、そのやり方で違ったイスからキレイに立ち上がれるでしょうか?椅子の高さによってやり方を変えなければなりません。決まったイスの高さで完璧に立てるより、色々なイスの高さからそれなりに立てる方が良いと思います。いくら室内の平らな場所を完璧に美しく歩けても、屋外ですぐに転んで捻挫する様では生活が成り立ちません。屋外に出れば、段差もありますし、ほとんどの場所で傾斜があります。そこに対応できる順応性が重要なのです。順応性とは多様性からの選択なのかもしれません。

 

 

5)硬さと柔らかさ

 基本的に動作は体の柔らかい部位から起こります。柔らかい部分がある程度動き切り、抵抗が出てくると、その抵抗より柔らかい部分が動きはじめます。例えば、両手を挙上します。最初は肩関節周囲の柔軟性によって挙上しますが、限界に近づくにつれ抵抗が増してきます。さらに挙上を試みるなら、その抵抗より抵抗が少なく柔らかい部位、例えば腰が動きます。この腰の伸展により見かけ上、手はより挙上したことになります。

 

 他動運動でもおこります。エリーテストというものがあります。うつ伏せで片側の膝を他動的に曲げて尻上がり現象の有無から大腿直筋などの短縮を判断するテストです。しかし、このテストは単に大腿直筋などの短縮というよりは腹筋群との相対的な硬さを見ているようにも見えます。テストを行った際、腹筋群が大腿直筋などより緩く伸び易ければ骨盤が大腿直筋などに引っ張られ、前傾し、尻上がり現象が出現します。逆に腹筋群が短く伸び辛らければ、例え、大腿直筋などが短くても、尻は上がらず、単に膝が曲がらないだけかもしれません。

 これらは硬さの違うセラバンドを結んで引っ張ることに例えられます。青いセラバンドと黄色いセラバンドを結んで両側から引っ張ります。必ず青いセラバンドより黄色いセラバンドの方が大きく伸びます。

 

 動きの中で基本的には柔らかい部位は硬い部位より大きく動きます。つまり、柔らかい部位は硬い部位より多く仕事をする羽目になります。体全体が一様に硬ければパフォーマンスは上がりませんが、各部位が少しずつ仕事をして負荷は分散します。問題なのはマダラに硬い状態です。硬く働かない部位は、柔らかくて良く働く部位に仕事を押し付けサボります。仕事を押し付けられた柔らかい部位は早くにヘタっていきます。つまりチームワークが上手くいっていないのです。

 

 

●まとめ 〜動きに多様性がり、体全体がチームとして働いている〜

 「動きに多様性があり、体全体がチームとして働いている」状態では、体にかかる負荷を分散できることから、体を痛めるめることが少なくなります。動作中、体の様々なパーツが参加することからパフォーマンスを上げることができます。また、単純に動作に参加するパーツが多いほど動きのバリエーションが増え、周囲の環境に順応性し、対応できる様になります。少ないパーツで動くと角ばった動きになるのとは対照的に多くのパーツが参加することで弧を描く様に動き、一般的に美しく見えるなどの利点があります。

 

【執筆者紹介】

 

宮井健太郎先生

1977年生まれ 
2001年 理学療法士資格取得  
以後、老人総合病院、老人保健施設、老人ホーム、小児病院、スポーツ整形外科、一般整形外科にてリハビリテーションに関わる 
2006年 ロルフィングプラクティショナー認定 
2010年 フランクリンメソッド エデュケーター認定 
2014年 ロルフィングムーブメントプラクティショナー認定 
現在、東京 有楽町線・副都心線 小竹向原駅近く、東久留米市内にて、ロルフィングとボディーコンディショニングを行う 
日本ロルフィング協会会員