HERO(29)
地区予選1回戦、淀川球場に夏の甲子園を目指し球児が集った。
祐輔の星城高校はここ2,3年は2回戦どまりで、今年は3回戦以上を
目標にしていた。
天気にも恵まれ、祐輔の家族や友達が応援席にいた。
相手チームは大海高校で互角の試合が予想された。
―ウーーーン―
始まりのサイレンが鳴り響き、1回の表、大海高校の攻撃から始まった。
―サクッ、 シュルシュルシュルシュル スパーン―
「ストライーク」
城星高校のピッチャーは3年生で、立ち上がりがまずまずのピッチングを
見せた。
祐輔はレフトでその様子を見守っている。
(よーし、始まったぞ 落ち着いていこう)
と自分に言い聞かせている。
しかし、始まる前、健太からこんなメールが来た。
「―この試合をあの娘が見に来ているかも知れないぞ―」
それは、祐輔がもうすっかり忘れかけていた淀川河川敷で会った
女子高生の事であった。
自分は彼女の事は知らないが、彼女は祐輔が星城高校の生徒だと知っている。
そんな思いが、また恋心に火をつけた。
―カキーン―
いい当たりがショートに飛んで、そのボールをファーストに投げる
―パシーン―
「アウト」
そんな事を考えている最中も試合は進み、スリーアウトチェンジを迎えた。
ベンチへ帰る途中、観客席を見渡した。
彼女らしき姿は何処に見当たらない。
(そんな事より、試合に集中だ)
ベンチに座って、そう思った。
1回裏、星城高校の攻撃。
バットをブンブンと振り回して、打席に向かう2年生先輩をベンチから
声援する。
藤代監督からサインが出る。
バッターボックスに入って、ピッチャーに向かって鋭い目をして構えた。