HERO(35)



この日の試合は、星城高校の奇策により大海高校を圧倒するゲームをなった。


祐輔もこの試合で一回り大きく成長を遂げた。


祐輔はロッカーに向かう途中にマネジャーから


「これを、織原君に渡してほしいと言われて・・・」


マネジャーの手から紙切れらしきものを渡させた。


祐輔は最初なんだろうと思ったが、女の子っぽい字からとっさにあの女子高生の


ものだと思った。


それを受け取り、一人になる場所を見つけてその手紙を読んだ。


高鳴る息と共にその手紙を読む。


その手紙とは


「1回戦勝利おめでとう。 約束の日に行けなくて、ごめんなさい。  


私は元気でいます。子供は産むことにしました、。だから、もう心配



しないで、野球に集中して下さい。」


そんな文面が書かれていた。


祐輔は、彼女が子供を産む決意が、幸せにつながるのだと思った。


それと同時に、やはり今日この球場のどこかにいたのだと確信した。


手紙を読み終えて、祐輔の淡い青春が終ったような気になった。


着替えを終えて、監督から今日の試合の反省と今後の事を話されて解散した。


祐輔は帰りのバスの中で、空を見上げていた。


まだ明るい空に、かすかに覚えている彼女の顔を映し出して、じっと見つめてい



た。


祐輔の高校はこの日の試合から3試合目で負けた。


3回戦突破という壁を大きく更新する事となる。

 

HERO(34)

ファーストランナーがしきりに、ピッチャーに目立つ様にリードを取る。


ピッチャーはランナーを気にしながらも、バッターに集中しようと、自らを


落ち着かせようとする。


それだけにここは、今日の勝敗を決めると言っていい場面に、同様を隠し切れない。


ワインドアップにピッチャーは構え、キャッチャーのサインを伺う。


サインが決まると、ランナーを見据えながらグローブの中のボールに手を添えた。


すると、次の瞬間。


「リーリーリー」  



―ダ、ダ、ダ、ダー


ファーストランナーが二塁へ一直線に走った。


それを見たピッチャーは二塁へボールを投げた。


すると、今度は1,3塁間でファーストランナーがストップして、一塁へ帰る。


セカンドは一塁へ投げる。


一塁ランナーはこれを待っていたかの様に、挟まれる。


内野守備陣はしめたと思う気持ちがアウトにしようと必死だ。


そうしている間に、2塁ランナーも三塁へ飛び出した。

ボールは1塁から2塁へと送られ、2塁ランナーも巻き込んでのプレイだ。


これが、高校野球ではそれほど練習していないのに目をつけたのが、星城高校の


藤代監督の駄目押し秘策だ。


―ピシュー   スパーン。―


― ツック、  ダ、ダ、ダ、ダ、ダ、―


ボールが2塁へ緩く帰ったのを見て、3塁ランナーが一気にホームへ突進。


ショートが2塁へ入って、3塁へ投げようとして、ホームが目に入った。


そのままの体勢で、バックホーム使用としてボールをキャッチャー目がけて投げた。


3塁ランナーとボールの競争にナイン、観客も目を見張る形になった。


― ダ、ダ、ダ、ダ、ズサーン、パシッ ―土煙と交錯する選手との様子を


「セーフ!、セーフ!」


主審が大きく手を広げてボームインのコール。

星城ナインの歓喜と大海高校の落胆の差は大きい。


42なり、その間に1塁、2塁ランナーが進塁して2アウト2,3塁にした。


ピッチャーの周りにナインが集まるが依然と重い空気が漂っていた。

  HERO(33)




祐輔は一塁ベースに立って、応援してくれているスタンドに目をやると、母、

父、妹とその隣には健太の満面の笑みが祐輔には、はっきり見えた。

ベンチの監督も、目を瞑って帽子のつばの先を触っていた。

(え、盗塁のサイン! 俺をためしているんだな・・・・・)

相手バッテリーも、タイムを取って、マウンドに内野手全員が集まった。

ベンチからも監督の代行がそのマウンドに駆け足で、みんなに伝令を与えた。

点差は4-2で星城高校が一点を加えた。

2アウト満塁で三塁走者がサインを送った。

2塁ランナー、1塁ランナーに靴の紐を結びなおす仕草だ。

(何だって、ホームスチールをするのか?)

祐輔と2塁ランナーはお互い顔を見合わせて目を見開いた驚きだ。

監督に次のバッターのピッチャーにアドバイスを送る。

「バットを長く持って、立っていろ!ファーストランナーが飛び出してピッチャーを揺さぶるからな」

「はい、わらかりました」

そして、バッターボックスに立った。

祐輔は2塁ランナーに目で合図する。

第一球目から大きくリードする祐輔。

2塁ランナーも同じくリードをする。

ピッチャーはその二人をしきりに気にし出していた。。

3塁ランナーはベースに付いたままだ。

1球目はストライク、2球目はボール、3球目もボールとカウント12とバッ

ターが優位に立った。