ジャズ・ソングズ(24) | 日本語で歌うジャズ詩

日本語で歌うジャズ詩

スタンダードジャズ詩の日本語訳詩のためのブログ。

Song for the Close of School(traditional)

Lyrics:T. H. Brosnan in 1871

Composed by H.N.D.

Artist:------

 

曲名:卒業の歌

(美艇香津 訳詩)

 

We part today to meet, perchance, Till God shall call us home;
 別れのこの日、また会うまで
And from this room we wander forth, Alone, alone to roam.
 去り行く、一人の見知らぬ涯、
And friends we've known in childhood's days May live but in the past,
 出会いのとき、その幼い日々
But in the realms of light and love May we all meet at last.
 いつか会う、光と愛の国で

 

Farewell old room, within thy walls No more with joy we'll meet;
 さよなら教室、会える喜び、
Nor voices join in morning song, Nor ev'ning hymn repeat.
語らう、 朝の歌、夕べの賛美歌、
But when in future years we dream Of scenes of love and truth,
 やがて見る夢、真実と愛、
Our fondest tho'ts will be of thee, The school-room of our youth.
 思うのは、幼い、学び舎の日

 

Farewell to thee we loved so well, Farewell our schoolmates dear;
 去り行く、その教室、クラスの友
The tie is rent that linked our souls In happy union here.
 終わる、心の通う幸せ
Our hands are clasped, our hearts are full, And tears bedew each eye;
 手を取り、思いと、涙溢れ
Ah, 'tis a time for fond regrets, When school-mates say "Good Bye."
 「さよなら」を聞く、心残りに

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「仰げば尊し」の原曲ですね。今は、卒業式で歌うこともなくなりました。

ウィキペディアによると、日本語の歌詞は、大槻文彦・里見義・加部厳夫の合議によって作られたとされている、そうです。

 

『小学唱歌集』第3編 1884年(明治17年)発行

1.仰げば 尊し 我が師の恩
  教(おしえ)の庭にも はや幾年(いくとせ)
  思えば いと疾(と)し この年月(としつき)
  今こそ 別れめ いざさらば
2.互(たがい)に睦(むつみ)し 日ごろの恩
  別(わか)るる後(のち)にも やよ 忘るな
  身を立て 名をあげ やよ 励めよ
  今こそ 別れめ いざさらば
3.朝夕 馴(な)れにし 学びの窓
  蛍の灯火(ともしび) 積む白雪(しらゆき)
  忘るる 間(ま)ぞなき ゆく年月
  今こそ 別れめ いざさらば

 

学校を去る時の、同じ気持ちが歌われています。

あえて違いを上げれば、「仰げば 尊し 我が師の恩」でしょうか。

英語詩の方では、それらしき存在はなく、「クラスの友」だけがいます。

それも、目くじら立てて言うほどのことはないのでしょう。

当時の先進の欧米と同じ境遇、気持ちが、手に入れられたのです。

 

それよりも、訳詩を少し変えました。卒業の、過ぎ去った日々への感傷という

最大公約数的な思い入れでなく、その中の特定の個人への、もう会えない

思いを拾ってみました。それは、生徒の間のではなく、教師に思いを寄せた

生徒、です。前に、この歌についてインターネットで調べたとき、作曲者の

「H.N.D.」は、歌の好きな、音楽の才能のある女の子で、音楽の教師との

合作かなと思う記事を見つけたような気もします。生徒なので、名前を出すのを

ためらった、みたいな。英語詩に、love、light、truth、regret、それに、thee、と言う

のも、引っかかります。そういう風に読むと、それは、日本とは、まったく違ったことに

なりますね。やっぱり、西洋だな、ということです。

 

それで、また、訳詩を変えました。2連目に「thy walls」とあるので、「thee」は教室ですね。

love、light、truth、regret、に重ねる思いがあるとしても、それらは、まずは、詩的な飾り

ということなのでしょう。

連は異なりますが、『小学唱歌集』3連目の「蛍の灯火(ともしび) 積む白雪(しらゆき)」

は、英語詩の2連目「朝の歌、夕べの賛美歌」ですね。学業に伴う、その国固有の情景が

そこにあります。

改めて見てみると、『小学唱歌集』は、英語詩の1連目、2連目をまず訳して、その後、

3連目を見て、それよりも、先生への感謝を入れたくなって、詩を作り、それを、敬意を持って

1連目としたので、、英語詩の1連目、2連目相当箇所が、『小学唱歌集』の2連目、3連目に

なったのではないかと思わせます。東洋と西洋の文化の違いを越えて、この曲を読み解いた

明治の気概を感じます。

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川畑文子・ソングズリスト

ジャズ歌 BTE翻訳ノート

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A Cappella Original Arrangements by K.T

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