昨日、見た夢 1
繁華街の真ん中に立っていた。右手にはベージュの大きな建物がある。どうやら百貨店のようだが、繁盛しているような気配もなく客はまばらだ。この街の道幅は広く人通りも多いが、道路は簡易舗装で、ところどころ火山灰の地面が見えていた。まるで、学生の頃教科書で見た明治時代初期の文明開化の風情が漂っている。しばらく大通りを西に向かって歩いていると、左手に路地を見つけた。街並は変わらないが、醸し出し雰囲気は緊張感に包まれ、環境は一変していた。路地の両側には、鋭い視線を投げる人たちに溢れ、道の真ん中には木刀を持った男が50mほどの間隔で3人、パイプ椅子に座ってこちらを向いていた。特に通行人を威嚇するわけでもなく、むしろ、路地の治安を守っているようだ。俺はその横を通り、先に見えるアーケードに向かって歩く。アーケードの手前に差し掛かったとき、右手にこの路地よりもはるかに狭い道があることに気がついた。道幅は3mもない。そしてそこには全く日が当たっておらず、陰鬱とした静寂が整然と並んでいた。小路の両側には、間口2間の料理屋か飲み屋と思しき店が10軒ほどあった。俺は、妙に惹かれた。店の中は真っ暗だが、どの店も奥に人の気配がある。おそらく、店の広さは3坪程度だろう。そして店の構造はどの店も全く同じのようで、磨硝子の引き戸を開けると客席は2席のカウンター、カウンターの裏に調理場があって、その奥には一段高くなった小さな居間があるようだ。その小さな居間では、ほとんどの人は寝ているようだ。きっと深夜の営業なので、昼間寝ているのはありふれた日常なのだろう。店の一軒一軒を観察しながら小路を歩いて行くと、右手の一番奥に「旭」という看板がかかった店があった。引き戸に手をかけてみると、開いた。真っ暗な店内の奥に、誰かが寝ている。「まだ、やってませんよ。」女性の声がした。「すみません。入口空いてたんで・・・。」「そう。」俺を咎めるでもなく、そう言って彼女は寝返りを打ってこちらを見た。化粧はしていないが年齢は40代に見え、場末の飲み屋街に似合わない人だと感じた。ここにたどり着くまでの話を聞いてみたいと思ったが、その瞬間、現世に移動した。