落下の解剖学 | アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

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ジャンルや新旧問わずに週末に映画館に通っています。映画の感想から、映画がらみで小説やコミックなんかのことも書ければ。個人の備忘録的なブログです。


落下の解剖学


2023年作品/フランス/152分

監督 ジュスティーヌ・トリエ

出演 サンドラ・ヒュラー、スワン・アルロー


2024年2月24日(土)、新宿ピカデリーのシアター3で、15時45分の回を観賞しました。


人里離れた雪山の山荘で、男が転落死した。はじめは事故と思われたが、次第にベストセラー作家である妻サンドラに殺人容疑が向けられる。現場に居合わせたのは、視覚障がいのある11歳の息子だけ。証人や検事により、夫婦の秘密や嘘が暴露され、登場人物の数だけ<真実>が現れるが(以上、公式サイトからの引用)、という物語です。


めちゃくちゃ観賞意欲を誘ってくるタイトル。予告編もとても面白そう。できるだけ早く観ておきたいと思い出かけてきました。こちらミニシアター系なのかと思いきや新宿ピカデリーで公開、しかも中規模の箱のシアター3で、最前列がわずかに空いている程度。私も久しぶりに前から2列目で観賞しました。



《感想です》


  • 〝羅生門〟のようなミステリーの体裁を取った重厚な法廷もの
  • 〝それを言っちゃあ、お終いよ〟という雪隠詰めの夫婦喧嘩に戦慄
  • 解剖されるのは家族の裏側。緊張感が半端ない2時間半の会話劇


純粋な謎解きミステリーかと思いきや、こちら〝藪の中〟あるいは〝羅生門〟のようなミステリーの体裁を取った法廷ものでした。夫がベランダから落ちて死亡したという事実をめぐり、それが事故死なのか、妻による殺人なのか、はたまた自殺だったのかを、証言台に立つ関係者の発言をもとに真実を探って行きます。


サンドラは人気作家らしく、自宅で女学生からインタビューを受けています。彼女は何故かはぐらかすような返事をしているうちに、3階の夫の部屋から凄い音量で音楽が流れてくる。インタビューできる状態にないだろうと、いったん女学生を送り出すのですが、その後、玄関前で死んでいる夫を息子が発見するのです。


夫婦喧嘩は犬も食わないといいますが、その夫婦喧嘩について、どっちが悪かったのか?を侃侃諤諤、生々しく炙り出していく重厚な会話劇。ちょっと我が家の騒動を見ているような気分になってしまいました、笑。謎解きの要素もあるのですがそこは主じゃないので期待するとはぐらかされてしまいます。ご注意ください。 


徐々にエスカレートしていく夫婦喧嘩のシーンがすごいです。こりゃあかんわ、というやり取り。フーテンの寅さんなら〝それを言っちゃあ、お終いよ〟という感じの言葉がお互いからバンバン出てきますが、決して笑えません。そして、そこまで描きながら、夫の死の真相については宙に浮いてしまった状態のままという。


観客は、描かれている表面的な描写をもとに、なぜそういう言動になるのか?反応になるのか?を終始読み取る作業を迫られます。その脚本、演出が秀逸です。サンドラってどういう女性なのか?夫と息子と弁護士との関係性が、どこまで行っても不透明なのですが、そここそが面白いところ。私はサンドラ犯人説を推したいです。


解剖されるのは〝家族〟。緊張感が半端ない2時間半、面白かったです。ご覧になられた方の数だけ解釈が生まれそうな映画でした。




トシのオススメ度: 4

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2 アレレ? もう一つです
1 私はお薦めしません


落下の解剖学、の詳細はこちら: 公式サイト


この項、終わり。