ミステリと言う勿れ
2023年作品/日本/128分
監督 松山博昭
出演 菅田将暉、松下洸平、町田啓太
2023年10月9日(月)、新宿ピカデリーのシアター6で、8時30分の回を観賞しました。
天然パーマでおしゃべりな大学生・久能整は、美術展のために広島を訪れていた。そこで、犬堂我路の知り合いだという一人の女子高生・狩集汐路と出会う。「バイトしませんか。お金と命がかかっている。マジです。」そう言って汐路は、とあるバイトを整に持ちかける。それは、狩集家の莫大な遺産相続を巡るものだった。当主の孫にあたる、汐路、狩集理紀之助、波々壁新音、赤峰ゆらの4人の相続候補者たちと狩集家の顧問弁護士の孫・車坂朝晴は、遺言書に書かれた「それぞれの蔵においてあるべきものをあるべき所へ過不足なくせよ」というお題に従い、遺産を手にすべく、謎を解いていく。ただし先祖代々続く、この遺産相続はいわくつきで、その度に死人が出ている。汐路の父親も8年前に、他の候補者たちと自動車事故で死亡していたのだった(以上、公式サイトからの引用)、という物語です。
ミステリーは好きなのです。つい先日は、京極夏彦さんの17年待った百鬼夜行シリーズ新作「鵼の碑」(ぬえのいしぶみ)を読み終えたところ。この新作、ノベライズ版で二段組で800ページという大長編。重たくて持ち歩けないので、就寝前に毎日楽しみに読み続けました。次の新作もタイトルが発表されているのですが、今度はいつ読めるのか?
《感想です》
- 因習とか怨念とかのオドロオドロしさを現代風にちょっと軽めに再包装
- 謎解きの部分がちゃんと映像表現ならではになっているのが良いですね
- 一番の見どころは探偵役の久能整のキャラで、彼の名言には唸りました
こちらの「ミステリと言う勿れ」は原作コミック、テレビドラマとも未体験。この映画で初めて知ることに。しかも、広島出身のママさんが娘に〝広島がロケ地だから観に行こう〟と誘っているのを聞いたからなのですよね。そして映画レビュワーのみなさんの評判もよくて、〝これは見ておかねば〟と、出かけてきたのです。
さて、広島がロケ地と言いましても、早々に舞台は市街地から山中へ移動するため、あまり広島色は感じないのですね。ただクライマックスになって、遂にある場所が出てくると〝おー!〟となります。こちら舞台が山中でなくて瀬戸内海の小島だったら?と思いましたが、それでは〝獄門島〟みたくなりますものねー。
遺産相続のために集まった親族の面々は今どきの〝犬神家の一族〟で、ここから展開されるドラマ、面白かったです。実は私は犯人は〝瞬間〟に分かってしまいました。でも、その背後に展開される〝なぜ?〟のところ、現代風に軽めではありますが、血筋、因習、怨念といったオドロオドロしたところ、見応えありました。
でも一番の見どころは、探偵役の久能整のキャラかと思います。ミステリの謎解きの部分以上に、私は彼のセリフにいちいち関心しました。〝子供はセメントが乾く前なのだ〟とか〝自分が下手だと感じたときは実は伸びているとき〟とか、いちばんは〝子供はバカじゃない。あなたは子供の頃バカでしたか〟というセリフ。
彼が端々で発する言葉が実に心に沁みるのですね。〝おいおい若くしてすごいこと言うなあー〟という感じなのです。こう言うところの良さは、原作コミックに拠るところなんでしょうか。この学生、これまでどんな人生を歩んできたのだろう?と過去を知りたくなりました。いろんな謎を持っていそうではありましたが。
この超クセ毛(パーマかと思ってました、笑)の飄々とした学生探偵を菅田将暉さんが好演してました。ポイントとなる謎解きのところも映像表現ならではではの語り方が良かったです。残念なのは、犯人側の描かれ方が平板で、そのせいか長きにわたる業の深さの割にはラストあっさりしすぎな感じがしたことでしょうか。
本筋には関係のない人たちが最初とクレジットロール後に出てくるのですが、その辺りはファンサービスでしょうね。
トシのオススメ度: 3
この項、終わり。