2023年作品/日本/143分
監督 原田眞人
出演 安藤サクラ、山田涼介、生瀬勝久
2023年10月7日(土)、TOHOシネマズ渋谷のスクリーン1で、8時20分の回を観賞しました。
大阪で特殊詐欺集団の一員として受け子の差配をするネリ。ある日、出所したばかりの弟ジョーがヤクザ相手にトラブルを起こし、彼女も巻き込まれてしまう(以上、公式サイトからの抜粋)、という物語です。
原田眞人監督の作品は好き嫌いがはっきりしていて、最近の司馬遼太郎さん原作の「関ヶ原(17)」「燃えよ剣(21)」はダメでした。一方で、「クライマーズ・ハイ(08)」や「わが母の記(12)」は好きなんです。原田監督作品は大概が原作小説の映画化なんですが、筋を追うだけになると物足りないという印象です。
《感想です》
- 安藤サクラをはじめとしたキャストの魅力・演技で魅せていく面白さ
- 大阪生まれの自分には観光映画としての面白さもあるが偏った印象も
- 複数の話が一本になる展開だが勢いだけで話にあまり深みがない
映画の頭から大阪の風景が次々に映し出されます。でも大阪に長く住んでいなければ馴染みのない風景が多いですね。難波といいますと普通はグリコのネオンサインのある道頓堀が有名ですが、そうではなく御堂筋の南方面の詰まりにある歌舞伎座。そして天王寺、新今宮、住吉大社前、再開発が進む梅田は出ず、北は淀屋橋まで。
そういった観光映画としての面白さがありますが、東京都心での話とのコントラストを狙ってるのかな?と思いましたけども、大阪の一部のディープでダーティな側面のみが強調されている感じではあります。そういう映像のセンス、そして短いカットを積み重ねていくスピード感のある編集で推していくのは原田監督らしいところ。
それで肝心のドラマのほうなんですが、これがちょっと残念なんですね。大きくは、犯罪に手を染める不幸な生い立ちの姉弟、それを追いかけている大阪府警の刑事、そして姉と過去に何かしらの因縁のある新興企業の社長という3つの話から成るのですが、それがどれも舌足らずで、〝なんで?〟みたいところの説得力が弱い。
訳ありの犯罪者が、包囲網のなか徐々に追い込まれていく話。古くは「明日に向かって撃て!(69)」、最近だと(いやこれも古いか)「テルマ&ルイーズ(91)」とかありますよね。どちらもストップモーションがラストで使われてますが、本作も悪くはないですが、そこのカタルシスが足りないような気がしましたねー。
それはネリの過去や元上司との関係の描かれ方がもう一つで、また弟のジョーがあまりにお粗末すぎて同情の余地がなかったりと、色々と理由はあるのですが。ネリが頭がいいだけに余計に引っかかって。そもそも〝弱い奴は、より弱い奴らから金を巻き上げる〟みたいな話に共感させるには余程しっかりした理屈が必要かと。
それでもこの2時間を超える映画が観られるのはキャスティングの賜物でしょうね。原田監督の映画はどれもキャスティングはほんと素晴らしい。今回も安藤サクラさんほか脇にいたるまで、大変多くの登場人物に関わらず、特に大阪のパートに登場する俳優のみなさんの持つ個性や演技がみごとにハマっていて見応えありです。
うーん、良いところと、何とかなればというところの落差が大きいという感じですかね。でも観ればきっと面白いと思うし、安藤サクラさんは観る価値ありと感じます。
トシのオススメ度: 3
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