U・ボート(amazon prime)
追悼 : ウォルフガング・ペーターゼン
1981年作品/西ドイツ/208分
監督 ウォルフガング・ペーターゼン
出演 ユルゲン・プロフノウ
2022年8月15日(月)の夜、自宅で観賞しました。
1941年、ナチス占領下のフランスの港町ラ・ロシェルから、ドイツ軍の潜水艦U96が出港した。総勢43名の若き乗組員たちは、緊迫した空気の流れる船内で魚雷の恐怖や続発するトラブルにさらされ、肉体的にも精神的にも限界まで追い詰められていく(以上、映画.comから引用)、という物語です。
ウォルフガング・ペーターゼン監督が、膵臓がんのため2022年8月12日に81歳でお亡くなりになったとの訃報ニュースを見ました。実はたまたまこのお盆休みに「U・ボート」のディレクターズカット版をamazon primeで観たところでした。私は1982年1月の日本公開時、大阪の松竹座で友人のM君と2時間15分版を観ているのですが、この3時間半版は初観賞となりました。
《感想です》
- 狭い潜水艦内を縦横無尽かつ凄いスピードで動き回るキャメラが圧巻
- ヒロイズムではなく逃げきる姿、〝いかに生き延びるか〟を描いている
- ノーサイドはなく、唖然とするしかないラストに残るのは虚無感のみ
この作品の緊張感は今見直しても半端なかったです。第二次世界大戦を舞台に、敗戦国であるドイツの潜水艦=U・ボートの乗組員たちの死闘を描いているのですが、敵である連合国側の姿がラスト数分を除きほぼ表に出てこないのですね。敵の存在は〝音〟で感じ取るだけで、まるで乗組員たちが目に見えないとんでもない大きな怪物と戦っているような雰囲気なのです。
途中、連合軍の駆逐艦の姿が波の向こう、潜望鏡越しにチラッと確認できたりはするのですが、ほんと敵(連合軍)が出てこないです。そもそもキャメラが潜水艦内部に留まっていて外に出ないからなのですが、どうでしょうか全体の9割は潜水艦内のドラマというのは言い過ぎでしょうか。狭い潜水艦内を、縦横無尽かつ凄いスピードでキャメラが動き回るのが圧巻です。
このドラマでは大きく二つのU・ボートの戦闘が描かれていて、一つは駆逐艦との交戦、もう一つはジブラルタル海峡の突破という見せ場。戦闘というよりはどちらかというと基本的には敵から〝逃げきる〟ことが主な目的であり、つまり〝いかに生き延びるか〟を描いているのです。なので彼らの姿はカッコよくなりようがなくて、ヒロイックな展開というものがありません。
同じ潜水艦と駆逐艦の戦いでの駆け引きがあっても、ハリウッドが作った「眼下の敵(57)」のようなスポーツ映画っぽい爽やかさはありません。あるのは、U・ボート乗組員たちの幽鬼のような形相と、ただひたすらに迫り来る死への恐怖。終わってノーサイドという世界でなく、唖然とするしかないラスト(ぜひご自身の目でご確認ください)に観終わって残るのは虚無感です。
戦争の愚かさを、こういう形で描くことも可能なのですね。潜水艦を扱った映画は古今東西たくさんありまして、しかもハズレが少ないという話をよく聞きますが、本作は中でも必見の一本ではないかと思います。なお、全く余談ですが、ここで使用されたU・ボートが「レイダース/失われた聖櫃〈アーク〉(81)」にも使用されたという話も何かで読んだ記憶がありますよ。
さて、ウォルフガング・ペーターゼン監督です。
この「U・ボート」で名前を覚えました。そして次の作品が「ネバーエンディング・ストーリー(84)」。硬派な「U・ボート」のあとが本作と聞いて当時は〝なんで?〟と感じたものです。これはもしかしたら原作〝果てしない物語〟のミヒャエル・エンデがドイツ人で、ドイツとアメリカの合作だったから、ドイツの有名監督として白羽の矢が立ったのでしょうかね。
そしてその次が「第5惑星(85)」で、これもまたウォルフガング・ペーターゼン監督と知り戸惑ったものですが、もうこの頃にはジャンルを問わないヒットメーカーとして認知されていたのかもしれません。実際このあとも「ザ・シークレット・サービス(93)」「アウトブレイク(95)」「エアフォース・ワン(97)」「パーフェクト・ストーム(97)」と続いていきます。
どの作品もエンタテインメント大作かつスター映画として、とても面白く楽しませてもらいました。でもそういう映画を連発するという感じではなく、2-3年に一本というペースで監督作品数としては本当に少ないんですね。80年代から90年代を代表する映画監督のひとりとして記憶され、2000年代は「トロイ(04)」「ポセイドン(06)」がありましたが手堅い出来でした。
多くの印象に残る作品を観せていただき、ありがとうございました。でも私にとってはやはりいつまでも「U・ボート」が心に残るウォルフガング・ペーターゼンでした。
トシのオススメ度:5
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