浅草キッド(Netflix) | アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

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ジャンルや新旧問わずに週末に映画館に通っています。映画の感想から、映画がらみで小説やコミックなんかのことも書ければ。個人の備忘録的なブログです。


浅草キッド(Netflix)


2021年作品/日本/123分

監督 劇団ひとり

出演 大泉洋、柳楽優弥、門脇麦


2021年12月25日(土)の夜、自宅で鑑賞しました。


昭和40年代の浅草。大学を中退し、「お笑いの殿堂」と呼ばれるフランス座のエレベーターボーイをしていたタケシは、深見のコントにほれ込んで弟子入りを志願。ぶっきらぼうだが独自の世界を持つ深見から、“芸ごと”の真髄を叩き込まれていく。歌手を目指す踊り子・千春や深見の妻・麻里に見守られながら成長していくタケシだったが、テレビの普及とともにフランス座の客足は減り、経営は悪化していく。やがてタケシはフランス座の元先輩キヨシに誘われ、漫才コンビ「ツービート」を結成。深見の猛反対を押し切ってフランス座を飛び出し、人気を獲得していく(以上、映画.comからの引用)、という物語です。


「浅草キッド」は、「青天の霹靂(14)」に続く、劇団ひとりさん監督・脚本、大泉洋さん主演の作品になりますね。そしてどちらも浅草を舞台にした芸人の話で、同じ臭いを感じさせる作品でした。劇団ひとりさんが、なぜそれほどまでにテレビに押されて寂れていく浅草にこだわるのか。失われていく古き良き時代への哀切の念、もともとセンチメンタルな人なのかな。




《感想です》


こちらは映画館では公開されないんですね。Netflix限定の配信ドラマということで、本作を観るためには会員になるしかないということでしょうか。Netflixとしてはそれだけの自信作であり、話題作だということなのでしょう。ビートたけしが今のような人気芸人、大御所になる前、浅草フランス座で舞台芸人の深見千三郎の下で修行していた時代を描いたドラマになります。


浅草が大衆の盛り場として栄え、最盛期を迎えたのは昭和二十年代から三十年代で、テレビの登場・普及とともに映画館や軽演劇場が廃れ、このドラマで描かれている昭和四十年代から昭和五十年代初めとなると、かなり寂しい感じだったよう。なお、ドラマ中でもセリフで出てくるように、渥美清や萩本欽一は浅草フランス座からテレビへ出ていき成功を収めた存在でした。


そういう時代に明治大学の工学部を中退して浅草フランス座のエレベーターボーイとして住み込みで働いていた北野武が、〝伝説の芸人〟と言われた深見の下で芸を磨き、やがては師匠を乗り越えていく様が分かりやすく描かれています。新旧の交代劇というのは何も芸事に限ったことではなく、ビジネスでもスポーツでも感動的なもので、これは誰でも胸が熱くなりますよねー。


でもこの映画で深見が舞台で演じたコントを観ていると、あれはまさしく〝コント55号〟(萩本欽一と坂上二郎)のノリで、また荒れた〝バカ野郎、この野郎〟という言葉は〝ビートたけし〟そのものですよね。仕事も芸も見て真似て盗むものなんですね。そうやって先代が記憶から消えても、その芸自体は新しい形で命を与えられ受け継がれいくことがよく分かります。


本作は、軽演劇から漫才へという新しい笑いの潮流を背景に、ビートたけしの台頭と合わせ、表舞台から去っていく深見千三郎を描いているのですよね。真面目で控えめだけども芸に一途という北野武が出ている場面よりも、〝芸のためなら女房も泣かす〟風の破滅型だが師弟関係に熱く面倒見のよい深見が登場すると俄然ドラマが面白くなる。本当の主人公は深見なんでしょうね。


さて、いいドラマではあるのですが、全体が少しずつ描き方が物足りない印象。北野武と周りの人たちとの関係性で力の入れどころが分かりにくい(例えば千春とか)のと、きよしとの地方巡業で閑古鳥の鳴く劇場で漫才をする場面から一世を風靡していくところの流れが雑に感じました。また当時の浅草の再現もなんだかCG?が薄っぺらい感じで、もったいない印象。


しかしなんだかんだ言っても、いい作品でした。

大泉洋さん、それから柳楽優弥さん。この二人のタップダンスと掛け合いが見事でしたし、年末年始にぜひご覧いただきたいと思います。




トシのオススメ度: 3

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4 オススメです!
3 良かったです
2 アレレ? もう一つでした
1 私はお薦めしません


浅草キッド、の詳細はこちら: 映画.com


この項、終わり。