偶然と想像 | アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

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ジャンルや新旧問わずに週末に映画館に通っています。映画の感想から、映画がらみで小説やコミックなんかのことも書ければ。個人の備忘録的なブログです。


偶然と想像


2021年作品/日本/121分

監督 濱口竜介


2021年12月25日(日)、Bunkamuraル・シネマのシアター2で、10時20分の回を鑑賞しました。


親友が「いま気になっている」と話題にした男が、2年前に別れた元カレだったと気づく「魔法(よりもっと不確か)」。50代にして芥川賞を受賞した大学教授に落第させられた男子学生が逆恨みから彼を陥れようと、女子学生を彼の研究室を訪ねさせる「扉は開けたままで」。仙台で20年ぶりに再会した2人の女性が、高校時代の思い出話に花を咲かせながら、現在の置かれた環境の違いから会話が次第にすれ違っていく「もう一度」。それぞれ「偶然」と「想像」という共通のテーマを持ちながら、異なる3編の物語から構成される(以上、映画.comからの引用)、という物語です。


今年公開されました「ドライブ・マイ・カー」の濱口竜介監督の短編映画集です。本作はベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞したそうです。〝偶然〟をテーマにした三作の全てを濱口竜介さんが脚本を書き、監督を手がけています。基本的に濱口監督らしい会話劇なのですが、各40分の長さで無駄が無く、それぞれ見事な〝オチ〟がついている恋愛映画で、とても面白かったです。


第一話「魔法(よりもっと不確か)」

出演 古川琴音、中島歩、玄理


《感想です》

タクシーの中で親友のつぐみの恋バナを聞くうちに、偶然にもそれが2年前に別れた元カレだと分かります。実は彼女(芽衣子)はまだ彼との恋愛を清算できておらず、つぐみを降ろしたあとで彼のオフィスへ会いにいくのでした。タクシーという密室とオフィスという開放的な二つの空間で繰り広げられる言葉の応酬が圧巻のサスペンスでした。目まぐるしく変化する芽衣子の感情に引き込まれ、ラストに彼女が想像した破壊的な世界と現実の世界との差に、妙な安堵感を覚えました。


第二話「扉は開けたままで」

出演 渋川清彦、森郁月、甲斐翔真


《感想です》

子育てをしながら大学に通う奈緒は、単位が取れず留年が決まったセックスフレンドの佐々木の逆恨みを晴らすために教授の部屋を訪れます。色仕掛けで迫る奈緒と実直な教授との間に生まれる奇妙な関係性。そして二人を待ち受ける悲劇。第二話はコメディで劇場では笑い声が。研究室の扉はいつも開いた状態なのですが、あれは教授のオープンマインドの比喩でもあるのかと。うっかり佐々木の軽口に乗っかってしまった奈緒の顛末が悲しく、逆に佐々木への怒りが収まりません。


第三話「もう一度」

出演 占部房子、河井青菜


《感想です》

高校の同窓会に出席した夏子は、その翌朝、昔付き合っていた同級生の女性と偶然再会をします。しかし実はそれは人違いで全く別人であったことが分かるのですが、二人は大切な人の役割を演じることを通じてお互いを癒し、本当の親友のようになっていきます。知らない他人だからこそ、自分の気持ちを率直に言えることってあるのかもしれませんね。二人の対話を見ながら、相手の気持ちに寄り添ってあげることの大切さを感じさせられました。ラストは心がほっこりと温かくなります。



三つの短編が、サスペンス、コメディ、ハートウォーミングと色合いが異なっているところが良かったです。どれも大きなアクションを制約されたなかで、膨大な量のセリフを自然体で発しなければならないのですが、すべての役者さんが見事な演技を見せてくれます。セリフの多い映画ではありますが、それが状況説明的なものでは決してなく、その内容に聞き入ってしまいます。単館系の映画館でほそぼそと上映されているようですが、機会がありましたらぜひご覧になってみてください。


トシのオススメ度: 4

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1 私はお薦めしません


偶然と想像、の詳細はこちら: 映画.com


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