リスペクト | アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

ジャンルや新旧問わずに週末に映画館に通っています。映画の感想から、映画がらみで小説やコミックなんかのことも書ければ。個人の備忘録的なブログです。

リスペクト


2021年作品/アメリカ/146分

監督 リーズル・トミー

出演 ジェニファー・ハドソン


2021年11月13日(土)、新宿バルト9のシアター4で、8時05分の回を鑑賞しました。


少女の頃から、その抜群の歌唱力で天才と称されたアレサは、ショービズ界でスターとしての成功を収めた。しかし、彼女の成功の裏には、尊敬する父、愛する夫からの束縛や裏切りがあった。すべてを捨て、彼女自身の力で生きていく覚悟を決めたアレサの魂の叫びを込めた圧倒的な歌声が、世界中を歓喜と興奮で包み込んでいく(以上、映画.comより引用)、という物語です。


〝シュープリームス〟をモデルにして描かれた黒人女性の三人組グループの成功物語「ドリームガールズ(06)」(必見!)で、ドラマを地で行くようにアカデミー賞の主演女優賞を受賞しシンデレラガールになったジェニファー・ハドソン主演の「リスペクト」を観てきました。こちらも実在の人物アレサ・フランクリンの生涯を追ったドラマで、良い作品でした。


アレサの歌唱力に群がる男たちとの葛藤


公民権運動が盛んでマーティン・ルーサー・キング・ジュニアが暗殺されたことでも有名なメンフィスで生まれ、南部から安価な労働力として流入してきた黒人と白人との対立の激しいデトロイトで育ったアレサ・フランクリン。映画の冒頭では、幼い頃から優れた歌唱力を持ち、牧師の父のもとでゲストや教会で、猿回しの猿のように歌わされていた姿が描かれています。


成長したアレサを父親はレコード会社に連れて行き売り込むのですが、そこに牧師としての誠意は感じられません。しかし契約を結んだコロンビアレコードからはヒットが出ず。アレサは父の反対を押しきって結婚したテッドとアトランティックレコードに移籍し、そこで成功を収めます。しかし嫉妬心の強い夫は彼女の周りから男を遠ざけ、さらには彼女の成果を自分の手柄に。


結局は幼い頃のトラウマも含め、彼女の歌手としての成功の裏側には、常にダメな男たちの存在があったよう。そういうなかでアレサは孤独を紛らすためにアルコールに逃げ、一時は体調を大きく崩すこともあったものの、関係者に支えられ、これを乗り越えていくのですね。サクセスストーリーに〝あるある感〟いっぱいの過去ではありますが、これが事実なんですねー。


▼アレサは両親が離婚したあと父と暮らすことに


黒人だけでなく女性が勝ち取ったリスペクト


父親が牧師で有名な説教師であり、それがゆえに公民権運動が盛んな場所に住み、彼女自身も様々な抑圧のなかで生きてきたという環境や人生が、後々の彼女の音楽を形作っていくわけですよね。またアフリカ系アメリカ人が、自分たちの権利を勝ち取ろうと盛り上がりを見せていくなかで、黒人音楽への関心が高まり、白人のなかで受け入れられていく過程も分かります。


私は知識がありませんが、アレサ・フランクリンの人生を追う中でアメリカの音楽業界や音楽史をさらっていく感じもあり、興味深かったです。デビュー時は歌唱力があるものの独自色のない平凡な曲は世間から注目されず。その後にアトランティックレコードへ移籍し、フェイムスタジオでマッスル・ショールズと〝貴方だけを愛して〟を創り上げていく場面がゾクゾクして最高でした。


また、映画のなかで彼女のヒット曲となり、この映画のタイトルにもなっている〝リスペクト〟を夜中に姉妹で創っていく場面も良かったですねー。この歌はアレサが自身のことを歌っているのは当然のこと、歌詞の内容は当時のすべての女性、黒人に限らない女性の尊厳と解放について当てはまっていて、多くの人の共感を勝ち取ることに成功したものと思われました。


▼この三姉妹が時に反発し、時に励まし合い良かった


歌の力の凄さを感じる教会コンサート

ラストは教会でのライブコンサートで、ここでアレサの目の前にこれまで関わってきた多くの人たちの顔が。〝アメイジング・グレース〟の歌声とともに彼女の平坦ではない人生がいっきに蘇り、強く心を揺さぶられました。〝神の驚くべき恵、なんと甘美な響き。私のような悲惨なものを救ってくださった。かっては迷ったが、今は見つけられた。かっては盲目だったが、今は見える。〟

まさに歌詞に彼女の人生が重なります。両親が離婚したあと彼女は父親に連れられて幼い頃から教会でゴスペルを歌ってきたわけですが、ラストが教会という彼女の原点で締め括られるという、ドラマとしては鉄板の構成だと思いました。教会で聴いている人たちがみんなむせび泣きしているんですよね。歌の力というものの凄さを改めて感じさせてくれるクライマックスでした。

この映画、アレサ・フランクリンの人生を追う中で、たまにニュースフィルムのような白黒の画面が挿入されてます。そこも含めてジェニファー・ハドソンが演じているのですが、なんだかドキュメント映画を観ているような錯覚に襲われます。でもそこの切り替えがうまく、ドラマに真実味をもたらしていたように思います。実際にその時代に居合わせているような感じでした。

▼コンサートシーンはどれも素晴らしかったです

アレサ・フランクリンのご指名だったというジェニファー・ハドソンの歌声がやはり凄い迫力で、これは音響の良い映画館でぜひご覧になっていただきたいですよね。それとアレサの父を演じた(笑福亭鶴瓶さんに似てる)フォレスト・ウィティカーが良かったです。久しぶりにスクリーンで見ました。それから、出てくる音楽がいいのは、これはもう当たり前でしょうね。

誰でも安心して観られるように少し柔らかく描かれているように思いましたが、アレサ・フランクリンについて知り、ジェニファー・ハドソンの圧巻の歌声を聴けるので、これはお得です!

トシのオススメ度: 4

5 必見です!!
4 お薦めです!
3 良かったです
2 アレレ? もう一つでした
1 私はお薦めしません


リスペクト、の詳細はこちら: 映画.com


この項、終わり。