おらおらでひとりいぐも(iTunes Store) | アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

ジャンルや新旧問わずに週末に映画館に通っています。映画の感想から、映画がらみで小説やコミックなんかのことも書ければ。個人の備忘録的なブログです。

おらおらでひとりいぐも(iTunes Store)


2020年作品/日本/137分
監督 沖田修一
出演 田中裕子、蒼井優、東出昌大

2021年9月18日(土)の夜、自宅で鑑賞しました。

75歳の桃子さんは、突然夫に先立たれ、ひとり孤独な日々を送ることに。しかし、毎日本を読みあさり46億年の歴史に関するノートを作るうちに、万事に対してその意味を探求するようになる。すると、彼女の“心の声=寂しさたち”が音楽に乗せて内から外へと沸き上がり、桃子さんの孤独な生活は賑やかな毎日へと変わっていく(以上、映画.comからの引用)、という物語です。

昨年見逃した沖田修一監督の作品「おらおらでひとりいぐも」をレンタル鑑賞しました。新作「子供はわかってあげない」が現在公開中で、この連休中に観にいこうと考えておりまして、その前に気になっていた本作を観ることにしたものです。こちら、沖田修一監督らしいオフビートなリズムとユーモアにあふれた作風で面白かったです。少し舌足らずな感じがありましたね。



《感想です》

冒頭、まるでSF映画のようにビッグバンによる宇宙誕生から、銀河系、太陽系、その中に地球ができて海ができ、小さな生命が誕生する様がCGで描かれていきます。やがて生物が陸に上がり、恐竜が支配するように。隕石の衝突で地球が寒冷化すると恐竜は滅び、哺乳類がとって代わります。最後は類人猿が登場し、集団でノシノシ歩くマンモスを狩って、その肉を食む姿が。

何の映画を観ているのか?、いや映画の前のコマーシャルを観させられているのか?と勘違いするようなオープニング。これ実は主人公で75歳になる独居老人の桃子さんが、夫に先立たれてからずっと地球46億年の歴史を調べてノートに綺麗にまとめるようになったことを表しているのですね。でもドラマを追いかけていくと、たんにそれだけではないことが分かってきます。

これは、沖田修一監督の〝女の一生〟、いや〝人間の一生〟とでも言えるドラマでした。オリンピックの年に岩手から単身上京し、方言を隠しながら働き、都会の暮らしに馴染まざるを得なかった桃子。彼女が周造と出会い家庭を築きながら、年老いていく。そして子供たちは独立し、最愛の夫に先立たれ一人暮らしを余儀なくされた桃子に〝老い〟が襲いかかってくるという。

足腰が弱り身体がいうことをきかなくなる、記憶力が低下し忘れっぽくなる、判断力が鈍くなり詐欺に引っかかってしまう、そして、痴呆症状で幻覚を見るようになる。そこを深刻でなく、ユーモラスに描いていくところが沖田節ですね。〝おらだは、おめだ〟と、桃子の心の声を代弁する三人の〝寂しささん〟の登場とか(これ、性格分けすればもっと面白かったのでは?)。

そして、そんな中で独りで生きていくことを決意していた桃子に起きる変化。自分は決して独りではない、自分の〝血〟は確かに娘に、さらに孫娘にも受け継がれている。遺伝子のなかに脈々と受け継がれていく生物の記憶。それに気づいたとき、桃子は自分の人生を肯定し、前を向いて歩いていくことができるように。ラスト、一歩踏み出す桃子に笑みが溢れてしまいました。

夫や娘や息子との関係がもう少し整理されていると良かったかもと感じました。でも、田中裕子さんの演技と、桃子の小さな部屋のなかで繰り広げられる不思議な世界がみどころで、最後まで引っ張られて観終えました。歳を重ねてこられた方々のこれまでの人生、現在の心中に思いを馳せ、例外はなくみんないつかは歳を取るということ、そんなことを考えておりました。

明日は、〝敬老の日〟ですね。。。

トシのオススメ度:3

5 必見です!!
4 お薦めです!
3 良かったです
2 アレレ? もう一つでした
1 私はお薦めしません


この項、終わり、