人間の條件/第5部・第6部(DVD) | アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

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人間の條件(DVD)

第5部: 死の脱出篇/第6部: 曠野の彷徨篇


1961年作品/日本/第5部90分・第6部104分分

監督 小林正樹

出演 仲代達矢、新珠三千代


2021年8月14日(土)の夜、自宅で鑑賞しました。


[第5部: 死の脱出篇]



ソ連軍の猛攻撃で迎え撃った部隊は、梶、弘中伍長、寺田二等兵を残して全滅した。三人は地図も磁石もなく、ひたすら密林の中を彷徨する。やがて、敗残兵と一緒の避難民に遭遇する。彼らは翌日から梶の指示に従った。だが、強行軍と飢えに体力を奪われ次々と脱落した。その後梶は、野戦病院で一緒だった丹下とも出会う。行く先々で民兵に追われる敗残兵や、避難民の姿があった。そんな中に梶は、暗い影のある少女とその弟を見かける(以上、松竹DVD倶楽部の商品情報から引用)、という物語です。


[第6部: 曠野の彷徨篇]



冬が迫っていた。梶は20名近い敗残兵を率いて斥候中、ソ連軍の討伐隊から逃れる。だが、丹下は単独で投降していった。その後、一隊は老人と女だけの避難民の集落に着く。だが「食い逃げする日本兵より、黒パンを持ってくるソ連兵の方がましだ」という女に梶は言葉を失う。翌日、一隊を解散して出発しようとした矢先、悲劇が起こった。ソ連の討伐隊を迎え撃とうとする敗残兵。突然女が叫んだ。「やめて!ここで戦争は!」呆然とする梶は、全員に投降を促した。そして捕虜収容所に連衡される梶たち。そこには、飢えと寒さと重労働の過酷な運命が待っていた(以上、松竹DVD倶楽部の商品情報から引用)、という物語です。


《感想です》


ソ連の戦車群の猛攻から何とか生き延びた梶、弘中、寺田の3名はその後、日本軍と合流するために当てのない移動を始めます。ジャングルのなかに迷い込んだ梶はそこで命を落とし白骨化した兵隊たちを目にします。また途中からは、敗残兵と避難民が加わっての道行となるのですが、飢餓に苦しみ体力を奪われていくなかで、一人また一人と死亡者が出て人数が減っていくのです。その様はもう地獄絵図のようでありました。


それでも梶は強い意志、強い精神力で生き延びるのです。ただ、そこにはもう軍隊の規律は存在せず、梶と行動を共にしていた兵隊などは獣と化して自分の欲求を満たすために、避難民の少女を強姦するに及ぶのです。もうこの辺りからはドラマを観ていることが辛くなってきます。軍隊内の〝しごき〟や〝いじめ〟という行為も酷いものですが、本来守るべき民間人まで自分たちの欲求を満たす対象としてしまう男たちの姿に慄然とします。


その後、梶たちは女性と老人だけの集落に行き着くのですが、そこで日本の敗残兵の傍若無人ぶりを指摘され、〝ソ連兵のほうがまだマシだ〟と非難されるのでした。自分たちが守るべき日本人からも信頼されない日本軍の兵士たち。梶自身は誠実でも、そこは軍としてしか見られてないわけですよね。そしてソ連兵から彼女たちを守るために戦闘することも拒否されてしまい、存在意義を失ってしまった梶は投降を決意します。


ここからはソ連の捕虜となった梶の姿が描かれていきます。ここでも煙たがられた梶は味方であるはずの日本兵の策略によって、どんどん立場を悪くしていきます。特にソ連の調査(尋問)の際に〝言葉の壁〟が立ちはだかるところは辛かったです。通訳が通訳としての機能を果たさず、出鱈目な内容を伝えるのです。梶にはロシア語でのやり取りがいっさい理解できないため通訳を信じるしかないのですが、それが嘘八百とは。


梶は最後は悪辣極まりない収容所内の上官を自らの手で葬りさり、捕虜収容所を脱走しシベリアの彼方へとひとり消えていきます。結局、梶も最後は私刑という形で恨みを晴らさずにはいられなかった。梶のような人間でさえも〝問答無用〟に変えてしまう戦争というものの恐ろしさを感じました。しかしだからといって梶という人間の素晴らしさが否定されることは無いでしょう。いや、自分も梶のような人間でありたいものです。




さて、「人間の條件」は全6部で9時間31分という大長編映画になります。しかし、それぞれのパートが異なる切り口の問題を描き、ドラマとしても大変見応えのあるものになっています。そして全編を通して観ることで戦争というものの実態が丸ごと把握できるようになっています。広大な大地やモブシーンを効果的に使用したダイナミックな映像、仲代達矢氏をはじめとする一流の俳優陣による渾身の演技、すべてが見どころと言って間違いありません。


戦場のリアルさを追求しただけの映画なら他にも幾らでもあると思いますが、戦争の本質やその中で〝人間らしく生きるとはどういうことか〟、それを捕まえようとしたこのような崇高な理念を持った作品にはなかなか出会えないと思います。




トシのオススメ度: 5

5 必見です!!
4 お薦めです!
3 良かったです
2 アレレ? もう一つでした
1 私はお薦めしません


人間の條件(第5部/第6部)、の詳細はこちら: 映画.com


この項、終わり。