人間の條件/第3部・第4部(DVD) | アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

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人間の條件(DVD)

第3部: 望郷篇/第4部: 戦雲篇


1959年作品/日本/第3部102分・第4部75分

監督 小林正樹

出演 仲代達矢、新珠三千代、田中邦衛


2021年8月14日(土)の午後、自宅で鑑賞しました。


[第3部: 望郷篇]



工人逃亡の責任を押し付けられた梶は、憲兵隊の拷問から釈放後、臨時召集された。北満の酷寒の中、連日の厳しい訓練の後、兵舎では古参兵のしごきが続く。抗し難い暴力に、梶は軍隊の錯誤を知らされる。そんなある比、美千子が遥か30キロの道程を訪ねてきた。再会して二人、だが愛を確かめるには束の間の一夜だった。部隊がソ満国境の前線に移動する直前、仲間の初年兵が自殺した。そしてもう一人、左翼と罵られた兵士が国境へ向けて逃亡した。いずれも非情な軍隊の犠牲だった(以上、松竹DVD倶楽部の商品情報から引用)、という物語です。


[第4部: 戦雲篇]





戦局は日増しに切迫し、梶の部隊も国境近い陣地で待機。思いがけず、少佐に昇進した友人の影山が赴任してきた。影山は、梶を上等兵に上げ、初年兵の教育にあたらせた。しかしそれが古兵の妬みをかい、初年兵のミスにつけ込んで、何かと梶は痛めつけられる。耐えていた梶の怒りが爆発した。その対立を案じた影山は、梶たちを別の中隊に派遣。だがその直後ソ連軍の急襲で影山たちは、玉砕する。そして前線の梶たちの前に来るべきものが来た。それは無数のソ連軍の戦車群だった(以上、松竹DVD倶楽部の商品情報から引用)、という物語です。


《感想です》

鉱山会社で人を管理する立場にあった梶は、軍隊に入り今度は管理される側になります。そこで体験するのは、鉱山の現場監督と同じく絶対的な権力を持ち、戦線を経験した古参兵と呼ばれる荒くれ者たちの暴力による新兵への理不尽なまでの仕打ちでした。全てにおいて上の言うことは絶対なのです。しかし正義感が強く、自分の考えを率直に伝えずにはいられない梶は、そこへ切り込んで行った末にここでも孤立していきます。

気に食わない下級者に対して執拗に繰り返される酷いシゴキ、陰湿なイジメ。梶はその事を上層部に訴えるのですが取り合ってもらえません。そして、ここに一人の気の弱い新兵がついに耐えきれなくなり、精神を病んでトイレで自殺をしてしまうのです。そういう事件があっても軍隊の責任の追及というのはおざなりで、本人とその家族(嫁と姑の関係がよくなく気をもんでいた)に問題があったと片付けられてしまうのです。

ここで、影山という梶の友人が新たに上官として着任してきます。梶の意見具申が影山に受け入れられたことで隊の状況が少しは改善するかと希望を持ったものの、やはり古参兵が立ちはだかり、梶は別の部隊へと異動させられてしまいます。ここに見られるのは考えることを放棄した集団の怖さです。そして何か起きると人事異動(たらい回しですね)で対処し、根本的な問題解決には取り組もうとしない事なかれ主義の世界。

梶はこれは人の問題でなく、軍隊そのものが抱える問題だと喝破します。しかし軍隊そのものへの批判は反逆罪に問われかねず、梶は自分の怒りのぶつけどころを失います。そして遂にソ連の戦車部隊が現れ、戦闘状態に。梶は塹壕のなかで、無謀に戦車に突っ込んでいこうとする若い兵士に生きて帰ることだけを考えるように諭します。しかし圧倒的なソ連軍の物量を前に、梶の所属する中隊は壊滅し、生存者は僅か数名になります。

何が梶を生に執着させ、前へ進もうとさせるのか。この第3部では、梶の妻・美千子がはるばる梶を訪ねてやってくる場面があります。たった一夜ですが特別な取り計らいで別室で二人で過ごすことを許された梶は、彼女に〝裸になって欲しい。君の美しい姿を目に焼き付けたい〟と言います。非情な戦場のなかで、妻への深い愛、ひと目会いたいという思いが彼の生への原動力になっていることが、全6部を通して描かれていきます。



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