人間の條件/第1部・第2部(DVD) | アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

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ジャンルや新旧問わずに週末に映画館に通っています。映画の感想から、映画がらみで小説やコミックなんかのことも書ければ。個人の備忘録的なブログです。

人間の條件(DVD)

第1部: 純愛篇/第2部: 激怒篇


1959年作品/日本/第1部105分・第2部96分

監督 小林正樹

出演 仲代達矢、新珠三千代、山村聰


2021年8月14日(土)の午前、自宅で鑑賞しました。


[第1部: 純愛篇]



昭和18年、戦火の緊張漲る満州。南満州鉄鋼会社に勤める梶は、妻・美千子とともに北満の老虎嶺鉱山に赴任する。召集免除が梶への条件だった。だがそこには過酷な労働と、賃金のピンハネに喘ぐ現地・工人の姿があった。労務管理を担当する梶は、効率的量産のために労働条件の改善を主張するが現場監督と衝突する。そんな折、軍部から緊急増産の命が下り、捕虜600人が貨車で送り込まれた。飢えた彼らは、電流の通った鉄条網の中の宿舎に収容され、特殊工人として酷使される(以上、松竹DVD倶楽部の商品情報から引用)、という物語です。


[第2部: 激怒篇]



鉱山の所長は、特殊工人に重労働を課するとともに慰安婦をあてがった。中には高と春欄のような純愛も芽生えた。二割増産目標が達成されたある日、特殊工人の脱走事件が発覚した。慰安婦の金東福が梶の部下、陳を誘惑して決行させたのだった。特殊工人の待遇改善に努力していた梶は、脱走をやめるよう説得する。だが続いて作業現場からの脱出未遂がでっち上げられ、高ら7人が公開処刑される事件が起きた。それが梶の人生を大きく変えることになる(以上、松竹DVD倶楽部の商品情報から引用)、という物語です。


この度、初鑑賞となります。五味川純平氏の小説は未読です。本作は原作小説と同じく全6部の構成になっており、公開は2部ずつのトリロジー(三部作)として上映されたとのことです。そこでDVD鑑賞および感想も当時の公開形式と同じく3回に分けて行いたいと思います。まずは1959年1月15日に公開された「第1部:純愛篇」と「第2部:激怒篇」になります。 常に自分の喉元に鋭い刃を突きつけられているような気持ちになる映画でした。


《感想です》


この映画の主人公となる梶は、若きビジネスマンとして登場。南満州鉄鋼会社の人事・労務管理担当の彼は、北満州の支社における同責任者として、妻の美千子とともに着任するのです。彼に与えられた使命は、現地採用された坑夫と後から編入された600名の捕虜の生産性改善です。梶は軍人ではなく、理想に燃える普通の人間として登場し、坑夫や捕虜を家畜のように扱う現場監督に対抗して、労働環境の改善に着手します。


労働環境を整え、きちんと話し合えば自ずと士気は上がり生産性は改善されるはずたど考える梶。しかし、坑夫たちの要求に応えようとすればするほど、現場監督はもとより会社の上層部や、最終的には軍部とも対立し溝が深まっていくのです。そして、ある日、電流の走る鉄条網で囲まれた収容施設から、脱走者が現れます。机上の空論には終わらせまいと着任前に抱いていた理想も遥か遠くへ、どんどん追い詰められていく梶。


このドラマを観ていますと、個人が持つヒューマニズムの精神というものが、戦時下や軍部主導の組織体制のなかにおいては理想論にすぎなくなり、いかに無力で機能しないものか、またどのようにそれが打ち砕かれていくのかがよく分かります。鉄鋼会社の所長も決して悪人ではなく、幾度となく梶を助けて折り合いをつけようとするのですが、中途半端な状況を良しとしない梶の誠実さが最後には全部裏目に出てしまいます。


ここで描かれている世界は、今の日本の企業問題にまで通じるものを感じさせます。なぜ〝企業不祥事〟というものが起きてしまうのか。ガバナンスがうまく働き未然防止に繋がらないのか。問題は重層的かつ複合的であり、かつ一番弱い人たちのところへ皺寄せが行き、その層が泣き寝入りをするしか生きる道が無いといのが絶望的です。映画は太平洋戦争の終盤を舞台にしてはいますが、現代社会が抱える問題が重なります。


支配する側とされる側という形があるが故に、日本人と中国人の間に横たわり続ける反感と、どこまでいっても相容れない感情。また、今も取り沙汰される慰安婦の存在や目的もはっきりと描いています。この第1部と第2部は、戦闘場面こそありませんが、戦場の背後で起きていた諸問題を克明に描いていきます。そして梶は、召集免除という特例を取り下げられて、いよいよ軍隊に配属となり戦地へと出ていくことになるのです。




トシのオススメ度:-

5 必見です!!
4 お薦めです!
3 良かったです
2 アレレ? もう一つでした
1 私はお薦めしません


人間の條件(第一部、第二部)、の詳細はこちら: 映画.com


この項、終わり。