パットン大戦車軍団(DVD) | アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

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パットン大戦車軍団(DVD)

1970年作品/アメリカ/172分
監督 フランクリン・J・シャフナー
出演 ジョージ・C・スコット

2021年5月15日(土)の午後、自宅にて鑑賞しました。

類い希なる戦略家として敵に恐れられながら、余りに激しい気性と名誉欲、そして奇行によって失脚を繰り返したパットン将軍。有名なロンメル将軍との戦車同士の決戦、パレルモ奪還での強引な戦法など史実そのままの迫真の戦争ドラマが展開する(以上、Amazon商品情報からの引用)、という物語です。

過去の戦争映画から再見したかったもの、未見だったものなど自宅にある未開封DVDからチョイスして、コロナ禍のなか「眼下の敵」「史上最大の作戦」「ナバロンの要塞」「空軍大戦略」「レマゲン鉄橋」と観てきたのですが、今日は時間に余裕があったので長めの作品を。「パットン大戦車軍団」はアカデミー賞の主要7部門受賞作で、ずっと気になっていたもの。初見になります。思っていたのとは全然異なる作品でした。


《感想です》

オープニング、パットン将軍が星条旗を背中にして自分の第三軍の前で演説をぶつシーンが有名なのですね。もうこの内容が歯に衣を着せぬ罵詈雑言、下品な言葉が満載で凄いインパクト。いまこんな差別的な演説をしたら絶対許されず、すぐにクビだと思います。しかし、これ聴いていて感じるのですが、なんか兵士に対する不思議な深い愛情を感じるのですよね。カミナリ親父とかっているじゃないですか、そんな感じです。

ドラマは北アフリカ戦線の第二軍団司令官に着任したパットンが、だらけきった軍隊を締め直すところからスタートします。〝俺がきたからには、絶対に負けない軍隊にしてみせる、そのためには臆病なやつは俺が殺す〟みたいな圧力のかけ方。パワハラどころの騒ぎじゃなく、その矛先は兵士のみでなく、コックや軍医にまで向かいます。そんなパットンですが、歴史書(戦記)や英雄の書いた詩に興味を持っているという一面も。

「パットン大戦車軍団」は別に大戦車軍団の猛攻を描いたアクション大作ではなく、このパットンという強烈な個性を持つ猛将の人間性に迫るドラマなのですね。チュニジアでの迫力ある戦争シーンもありますが、ピストルで戦闘機に挑むパットンの無茶な行動にフォーカスした感じ。〝砂漠の狐〟と呼ばれたロンメルの戦車軍団(この時はロンメルは指揮をしていなかったとのこと)との戦車戦も引きの絵が多くてアッサリ。

むしろ、この時の戦いで亡くなった部下の弔いの場面でも、パットンの人情に厚い武人としての姿のほうが印象に残ります。そして、こんな戦争を早く終わらせるためにも〝戦い抜く〟ことを誓う姿ですね。そんなパットンの攻撃的な言動が、どんどん軍部のなかて浮いていきます。部下との間にも溝ができ、やがて本部からも厄介払いされるようになるところが描かれていきます。パットンにとっては勝利あるのみなのです。

〝あなたは戦いを楽しんでいるだけだ〟と言われるパットン。シチリアのメッシナを目指すパットンは軍隊の進行を妨げる2頭のロバを撃ち殺し橋から投げ捨てます。また精神を病んだ若い兵士を臆病者と罵り頭を張り倒して前線へ戻します。そんなパットンから人心がどんどん離れていき、ヨーロッパ反攻作戦の指揮官から外されてしまうという。3時間ある映画の後半は、休憩を挟みノルマンディー上陸作戦以降へと移っていきます。

映画も終盤になると、パットンはドイツから敵国をソ連に移し、まだまだ軍人として生き抜こうとします。しかし、核兵器が開発される時代のなかでパットンのような男は実に生き難い世の中なのですね。〝戦争こそが自分の生きがいなんだ〟という好戦的な男の時代錯誤な姿を描きつつ、映画全体から感じられのはやはり戦争の虚しさなんですよね。決して戦争賛美にはなっていない、そこが本作の素晴らしいところです。

監督は「猿の惑星」のフランクリン・J・シャフナー、脚本には「ゴッドファーザー」のフランシス・F・コッポラが関わっています。しかし何と言ってもパットンを演じたジョージ・C・スコットの魅力が本作を支えているのかと。




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