あらくれ(iTunes Store): 成瀬巳喜男 | アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

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ジャンルや新旧問わずに週末に映画館に通っています。映画の感想から、映画がらみで小説やコミックなんかのことも書ければ。個人の備忘録的なブログです。


あらくれ(iTunes Store)

1957年作品/日本/121分
監督 成瀬巳喜男
出演 高峰秀子

2021年3月27日(土)の午後、自宅にて鑑賞しました。

大正初期。子どもの頃に農家へ養子に出された庄屋の娘・お島。結婚話を嫌がって東京へ逃げ出した彼女は、神田の缶詰屋の若主人の後妻となる。しかし女出入りの激しい夫と気性の激しいお島との間には諍いが絶えず、大ゲンカの末に離婚。東北の山村の旅館で女中として働き始めた彼女は、そこの若旦那と関係を持つが、若旦那の病気の妻が帰ってきたために居場所を失ってしまう。東京へ戻ったお島は洋服職人と再婚して2人で店を開き、商売を軌道に乗せていくが(以上、映画.comより引用)、という物語です。

成瀬巳喜男監督。大正時代を舞台にしたドラマながら今の世にも十分に通じるところがあります。徳田秋声の原作小説によるところも大きいのかもしれませんが、そちらは未読です。大河ドラマ風の趣きもありまして、ひとりの女性の人生を長期にわたり追っていくところが木下恵介監督作品の「香華」を思い出させました。あるいはNHKの朝の連続ドラマになるようなお話の感じ。何れにしましても面白かったですよ。

《感想です》

大正時代、気性の激しい庄屋の娘、お島の波乱の人生を描きます。結婚話が持ち上がったものの意に沿わずに縁談をけって東京の缶詰問屋の主人の後妻に入ったお島。ところが、ここの主人が女にだらしなくお島に冷たいというとんでもないヤツで、堪忍袋の尾が切れたお島は布団の上で取っ組み合いの大げんかをして、終に家を追い出されてしまいます。その後、彼女は東北の田舎の温泉旅館で女中として働くようになります。

ここで彼女はそこの若主人から見染められて、病気で療養中の妻をおいて良い中になります。しかしふたりの良い関係も長続きしません。おとなしいこの若主人は、妻が療養先から戻ってくることになると、お島に気をつかいながらも彼女を旅館から遠ざけてしまいます。やがて実父にお島は東京に連れ戻され、今度は洋裁職人として出直すことになります。そして、そこで知り合った無骨な男の職人と独立して店を起こすことに。

ふたりはやがて結婚するものの商売はなかなか軌道に乗らず、そんな中で衝突することもしばしばです。数人の職人を抱えての苦しい経営のなかで、すぐに油断して遊んでしまうグータラな亭主に噛みつき、爪を立ての取っ組み合いの喧嘩をすることも。やがてこの亭主がかつての缶詰問屋の主人が浮気をしていた相手にかどわかされてしまいます。それを知ったお島は腹を立てて浮気現場に乗り込み、そこで女同士の大乱闘に発展。

最後はお島は洋裁店を腕のある若いイケメン職人に任せ、このグータラ亭主を締め出してしまうのです。お島はもう男たちに頼ることなく、自分だけの才覚で生きていくことを決意したかのような晴れやかさで映画は幕を閉じます。ドラマは2時間かけて、このようにしっかりもので勝ち気なお島と、三人の不甲斐ない男たちとのドラマを描いていきます。全体的にはそつなく面白いドラマに仕上げているという印象を持ちました。

観ている間は面白くてあまり気にならないのですが、お島と三人の男性との仲を割くのが何れも男側の女性問題というところが少しパターナリズムで単純になっている気もしました。本当はお島の性格のほうにも問題があるはずなのですが、成瀬巳喜男監督の演出と高峰秀子さんの演技で、そうは見せないところがミソなんだと感じました。強い女性と弱くだらしない男たちというのは成瀬巳喜男監督の作品に共通する設定ですね。

お島の気風のよさが見ていて気持ちがよく、深くはないですが面白いドラマでした。この作品でも女性の自立が描かれていて、本作が公開されてから50年以上が経ったも今も、あるいは本作の舞台となっている大正時代からも大きな変化がないのかと感じるところがありました。高峰秀子さんが着物から洋服に着替えて自転車に乗って洋裁店のビラを配る姿が象徴的でした。三人の男を演じたのが、上原謙さん、森雅之さん、加東大介さん。

高峰秀子さんの取っ組み合いの喧嘩も一見の価値ありです!




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