1963年作品/日本/87分
監督 西河克己
出演 吉永小百合、高橋英樹、大坂志郎
5月6日(日)のお昼過ぎ、自宅でレンタルDVDを鑑賞しました。
川端康成原作四度目の映画化で、「若い人(1962)」の三木克巳と西河克己が共同で脚色、「雨の中に消えて」の西河克己が監督した文芸もの(以上、映画.comより抜粋)、です。
突然何を取り上げるのかと驚かれるかも。実は、5日(土)の早朝5時出発で車で伊豆は下田まで日帰り旅行へ行ってきました。途中、天城峠で浄蓮の滝を見るなど、東京から下田まではゆっくり移動して3時間ほど。新緑の眩しい最高のドライブ日和で、現地では幕末の史跡巡りを堪能しました。
ところが帰りは渋滞に会いまして、途中サービスエリアで時間を潰しながら、なんと7時間かけて東京へ。帰宅したのは深夜1時を回っていました。そして、旅の余韻に浸るために、今朝ほど某レンタルビデオ店で借りてきた映画がこれなのです。90分なのであっという間に見終わりました。
昔からアイドル映画としてテッパンの素材
川端康成さんの原作小説は、過去6度映画化されているとのこと。これまでヒロインの薫を演じた女優さんの顔ぶれがすごくて、田中絹代さん(33)、美空ひばりさん(54)、鰐淵晴子さん(60)、吉永小百合さん(63)、内藤洋子さん(67)、そして山口百恵さん(74)です。
4度目の映画化にあたる本作は、私の生まれる前の映画なので、きっと父や母が楽しんだことでしょう。ちなみに私は子供の頃に、山口百恵さん/三浦友和さん版は観たのですが、内容をよく思い出せないのです。文芸作品ですし、きっと当時の私には面白くなかったのでしょうね。
まあ、お名前を見て分かるとおり基本的にはアイドル映画なわけですね。学生さんと踊り子さんの恋と別れの映画で、14歳の薫は学生には17歳くらいに見えたという年頃感や、劇中で踊りや歌を披露できることからも、売れ出した頃のアイドルにはもってこいの題材なのだと思いました。
▼踊り子の吉永小百合さんが可愛い舞を見せます
天城峠を超え湯ケ島かと思われる温泉街に入ると、そこの人々も口を揃えて旅芸人には気をつけろと学生に忠告するのです。そういう誰もが上手く行かないと分かるような恋なのですが、14歳の薫は無邪気なもので川崎に淡い恋心を持ち、川崎もまた彼女の純粋さに惹かれていくのですね。
遠くの露天温泉から裸姿で川崎に手を振る薫、お風呂からあがったら碁をしようとせがむ薫、そして下田についたら活動(写真)に連れて行ってくださいと繰り返す薫。そういうところの可愛らしさやいじらしさを、当時のアイドルの魅力で見せていくのが監督の大切な役割なわけです。
▼下田へ抜ける峠で休憩する二人、お相手は高橋英樹さん
それでですね、この作品は二人の若手俳優を支える周りのベテラン俳優さんが素晴らしいのです。周りが見えていない二人に対して、酸いも甘いもかみわけた旅芸人家族を演じる面々。とくに、薫の兄を演じた大坂志郎さんと、彼の病弱な妻の母を演じた浪花千栄子さんの演技にまいりました。
よい写真がないのですが1枚目の写真の吉永小百合さんの両脇にお顔だけ写っているお二人です。浪花千栄子さんは、溝口健二、木下恵介、黒澤明、小津安二郎など巨匠と言われた監督さんの作品に数々出ておられますが、存在感がすごい。旅芸人を演じていても品があり、丁寧でいて怖い。
薫が階段下で聞いているのを知ってか知らずか、薫が下田で楽しみにしていた活動写真に行かせない理由をとうとうと話する姿は迫力がありました。また対して、大坂志郎さんの妹の薫にひと時でも幸せな時間を過ごさせてやりたいという優しい気持ちがにじみ出た演技が良かったです。
▼定住せずに旅をしながら生活する人々の姿
この映画は最初と最後が現代で白黒で描かれています。歳をとり大学で教鞭をとる川崎に、ダンサー志願の恋人と結婚するから仲人をしてくれと学生が頼んでくるのです。そして、そのダンサーの女性の横顔に、かつての薫を重ね見るところから、過去を思い出すという趣向になっています。
今は、映画のような砂利道を行くわけではなく、道路は舗装されていて、修善寺、湯ヶ島、天城、河津、下田へはあっという間。旅情というものからは程遠いです。でも、私たちが見ている山々の景色だけは、当時から大きくは変わらないのでしょうね。そんなことを感じながらの日帰り旅行でした。
オススメ度: 3
5 必見です
4 お薦めです
3 興味があればぜひ
2 もう一つです
1 私はお薦めしません
この項、終わり。