ラプラスの魔女 | アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

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ジャンルや新旧問わずに週末に映画館に通っています。映画の感想から、映画がらみで小説やコミックなんかのことも書ければ。個人の備忘録的なブログです。

ラプラスの魔女

2018年作品/日本/116分
監督 三池崇史
出演 櫻井翔、広瀬すず、福士蒼汰

5月11日(金)、TOHOシネマズ渋谷のスクリーン1で、18時50分の回を鑑賞しました。

妻と温泉地を訪れた初老男性が硫化水素中毒で死亡する事件が発生した。捜査を担当する刑事・中岡は妻による遺産目当ての計画殺人を疑うが、事件現場の調査を行った地球化学専門家・青江修介は、気象条件の安定しない屋外で計画を実行するのは不可能として事件性を否定(以上、映画.comより抜粋)、という物語です。

東野圭吾さん原作小説を、三池崇史監督が映画化。原作は未読の状態で鑑賞したのですが、めちゃ気になって帰りに書店に直行。早速読んでみました。ストーリーは頭に入っているので、スイスイと読了。映画は原作にかなり忠実に作ってあるのですね。でも、これがわけが分からない、面白くない、途中で帰りたくなるアレレ映画でした。


謎解きの映画ではなく、教授も刑事も出番無しのストーリー

 

ある地方の温泉街に近い雪山の中で一人の男性の死体が見つかります。発見者は男性の奥さん。死因は硫化水素による中毒死ということなのですが、自然現象に見せかけた殺人事件なのではないかということで、大学教授の青江と刑事の中岡による捜査が始まるのです。

 

この導入から、これはミステリー映画だと思いながら物語を追いかけだすわけです。つまり、最大の関心は「どういうトリックで殺害したのか」「犯人は誰で、その動機は何か」ということなのですが、映画は思わぬ展開を見せ、何だかよく分からないうちに終わりました。

 

そもそも本作は根本的にはミステリー映画ですらないのですね。だからよくある探偵の役割を担う人物による謎解きの場面がないのです。その点で、青江教授と中岡刑事という事件を調査する二人の主役級の人物は、存在している意味があまりないという気すらしました。


▼絵に描いたようないかにもの刑事を演じる玉木宏さん

描かれていることがマンガっぽくて全く現実味がない

 

実はこの映画のキーパーソンは、事件を調査する青江教授と中岡刑事ではなく、甘粕という映画監督と羽原という脳神経外科医なのですね。この二人が物語の中で果たす役割は映画を観てのお楽しみですが、二人とも狂気に取りつかれて、やっていることが悪魔的なのです。

 

しかし、これが極めてマンガっぽくて、説得力が感じられないのが痛いですね。一応、映画の中ではアカデミックに〝論理的に説明がつく〟という形で進んでいくのではありますが、特にここで描かれている「ある能力」については全く現実味がないように感じました。

 

これはそもそも原作を含めて物語の中身に無理があるのか、あるいは演出や演技の問題なのか、あるいはその両方なのか。この「ある能力」の存在を疑い出したら、もうこの映画はダメですね。その瞬間に、あとは観ているのが苦痛でしかなくなってしまいます。


▼事件現場に出没する謎の女性を演じる広瀬すずさん

ジャンルを特定できない不思議な感覚の映画

 

この映画はミステリー映画に見えながら、近未来SF映画でもあり、サスペンス映画でもあり、恐怖・オカルト映画っぽくもあり、ジャンルを特定するのが難しいところがあります。逆に言うと、全体を通してテイストが一貫していないので、とっ散らかった感じがするのです。

 

ただ、ラストに豊川悦司さんが演じる映画監督の羽原が延々と独りで語る舞台的な演出の場面はなかなか圧巻でした。しかしながら、ここだけが映画全体の中で浮いてしまっていて、まるで別の映画を観ているような感じがするのですね。

 

その他のキャストについてですが、今回はどなたもあまり魅力を感じるキャラクターがいなかったのが残念でした。どの人物も、教授・刑事・医者といった記号的にしか描かれておらず、人間としての魅力がないというか、感情移入できるところがありませんでした。


▼完璧主義の映画監督を演じる豊川悦司さん


これ、原作もかなり複雑な作りになっているのです。劇中劇のような構成であることに加えて、時系列が入り組んでいるので、混乱すること必至。それに、ほとんどが会話あるいは独白で進行するので、そのままだと映画としての面白さが出ないのですが、まさにその罠に陥っている本作でした。思い切って脚色しないとしんどい原作です。

色んな点で難物だと感じました。よろしければ、お読みください。なお、オススメ度は、広瀬すずさんが出ているので一つおまけですラブ

著者: 東野圭吾
発行: KADOKAWA
刊行: 文庫本2018年2月
定価: 本体760円

オススメ度: 2
5 必見です
4 お薦めです
3 興味があればぜひ
2 もう一つです
1 私はお薦めしません


この項、終わり。