The Secret Scripture(ローズの秘密の頁/原作) | アレレの映画メモランダム/休日は映画の気分

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The Secret Scripture
ローズの秘密の頁(原作)


発行: Faber & Faber 2008年初版

著者: セバスチャン・バリー

価格: ウェブストア価格 1,410円


ジム・シェリダン監督の「ローズの秘密の頁(ページ)」を鑑賞した後、原作はどういうものなのだろうと興味が湧きました。映画と同名の原作小説は、アイルランドの人気作家セバスチャン・バリーが、コスタ賞という権威ある賞を受賞したらしいです。


ただですね、これ翻訳がされてないのですね。そんなに権威ある賞なら翻訳版が出ていてもおかしくないと思うのですが、残念ながら原著のみということで、いたしかたなく拙い英語力でえっちらおっちら読み進めることに。ですから100%の自信はなく、悪しからずご了承ください。


私が購入した版は約300ページあり、これが3つの章に分かれているのです。そのなかで3分の1を占めている第1章では、Roseanne(映画の中のローズ)が両親と暮らした幼少時代の出来事=不幸が丁寧に描かれていて、Sligoの叔母のもとを頼ることになった経緯が分かるようになっています。


Roseanneの父親は教会の墓守をしているのですが、ある事件によりネズミ捕りの仕事に変えられ、それがきっかけで火事を起こしてしまいます。だんだんと不仲になる両親。そして父親は自殺、母親は精神を病み、RoseanneはGaunt神父の計らいで年の離れた男と結婚することに。


映画では確かこの彼女の境遇が、冒頭のセリフで一言で片付けられていたのではないかと記憶しています。この幼少時代に、彼女はGaunt神父をはじめ後の彼女の人生に大きな影響を与えることになる男性たちと出会うのですが、そういったことが映画は全部省略されているのですね。


この第1章に3分の1が割かれているのは、第2章の成長したRoseanneの人生に関わってくるからなのです。ところが映画では、第1章を飛ばしたため、第2章で出てくるべき多くの男性が出せないのですね。そこで映画は、原作にはない男性Michaelを創作し、彼に色んな男性の要素を統合しているのでした。


つまり原作ではMichaelという男性は登場しないのです。原作はTom McNultyという裕福な家柄のカトリック教徒の美青年が登場し、Roseanneとの恋が描かれます。二人は家族の反対を押し切り結婚しますが、Roseanneは既婚者であり、Gaunt神父によってこの結婚は無効に


Gaunt神父は、Roseanne(の美しさ)によって自分の管轄する教区で性的な問題がおきる危険性を察知し手を打つのですが、Roseanneが幼い頃からここぞという場面で必ず現れては、重要な意思決定を与えて去っていくのですね。原作では、いつも突然姿を現わすので怖いくらいです。


彼女の周りには、戦争や宗教を背景にあれこれ事情を抱えた男性が集まってくる展開になっているのです。この後も原作は映画と少し異なるところがありますが、暴風雨の中で妊娠したRoseanneがTomの両親のもとを頼り、Tomに会わせて欲しいとすがりつき、無情にも追い返されてしまうという一幕も。


なお、原作では年老いたRoseanneの手元には聖書はなく、単に紙に彼女の遠い過去の記憶を思い出しながら認めているだけなのでした。それも、精神鑑定がなされている今、書かれているものなのです。映画では聖書にMichaelの顔を描くことで映像で彼女の心象をうまく表現していましたね。


また、映画の中では、Michaelが英国軍への参加を志願し、パイロットとしてSligoへ飛来する超絶に美しい場面や彼の操縦する飛行機が墜落しローズが彼を介抱する場面がありますが、それらも映画ならではの見せ場なのでした。原作にはそういうインパクトのある映像的に秀れた場面はないのです。


さらには、Gaunt神父が彼女の子供の面倒を託したというのも違っていて、ここにも映画には登場しない別の人間が絡んできます。映画はとにかくMichaelとGaunt神父に全てを集約して描いているようなのですね。確かに原作では登場人物が多すぎるので、そのまま映画にするととっちらかりそうではあります。


そもそも映画と原作小説は全く別物なので比較すること自体に意味がなく、どちらがいい、悪いということを言いたいわけではないことをお断りしておきますねー。冒頭に書いたとおり私の英語力なので眉唾ものかもしれません。どなたか翻訳版を出していただけたら一番いいのですが(^^)


▼原作の舞台となるアイルランド、スライゴ州

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この項、終わり。