【原因】
・甲状腺ホルモンが過剰な状態を甲状腺機能亢進症と称する。
・我が国の甲状腺機能亢進症は、大部分、バセドウ病によるものである。
・甲状腺細胞の細胞膜上にはTSH受容体が存在している。
・TSH受容体がTSHによって刺激されると、甲状腺細胞はヨードを取り込み、甲状腺ホルモン(T3、T4)を分泌する。
・血中のT4濃度が上昇してくると、視床下部-下垂体に作用して、TSHの分泌は抑制される。
・したがって、血中の甲状腺ホルモン濃度はほぼ一定範囲にコントロールされている。
・ところで、ウイルス感染などが契機となり、リンパ球が自己のTSH受容体に対する抗体を産生してしまうことがある。
●このような自己抗体を抗TSH受容体抗体(TRAb)と称する。
・TRAbはTSHと同様にTSH受容体を刺激する性質があるので、甲状腺刺激抗体(TSAb)とも呼ばれている。
・TSH受容体を刺激された甲状腺細胞は、ヨードを取り込み、甲状腺ホルモンを過剰に合成・分泌してしまう。
●これが、バセドウ病であり、甲状腺ホルモン過剰症が長期間にわたり持続する。
・また、眼球の後ろにある脂肪細胞にもTSH受容体が発現しているため、眼球突出などの眼症状も生じてくる。
【症状】
●甲状腺ホルモンは新陳代謝を活発にするホルモンである。
●したがってバセドウ病では、頻脈、動悸、発汗、易疲労感、微熱、下痢、体重減少、食欲亢進、早口、落ち着きがなお、絶えずイライラしているなどの精神症状が起こる。
・高齢者では、体重減少が目立ち、心房細動から心不全に陥りやすい。
・また、片側ないし両側性の眼球突出も生じやすい。
【検査】
・びまん性の甲状腺腫を蝕知し、眼球突出があり、甲状腺ホルモン(T3、T4)が高値であり、かつTSHが抑制されていれば、診断は確実である。
・しかし、甲状腺機能亢進症=バセドウ病ではない。
・甲状腺内には2ヶ月分のT4が備蓄されており、甲状腺が破壊されると、甲状腺内にストックされていた甲状腺ホルモンが血中に一気に逸脱してくるため、一過性の甲状腺ホルモン過剰状態になることがある。
・代表的なものが無痛性甲状腺炎である。
・バセドウ病との鑑別が極めて難しい場合には甲状腺の放射性ヨードの摂取率を測定する。
・バセドウ病であればTSAbによりTSH受容体が刺激されているので123Iが甲状腺に取り込まれ、甲状腺が描出されるが、無痛性甲状腺炎ではTSHが抑制されているので、123Iは全く取り込まれない。
●また、バセドウ病ではTRAb/TSAbは陽性であるが、無痛性甲状腺炎では陰性である。
【治療】
・バセドウ病は関節リウマチのような自己免疫疾患であり、薬物で治癒させることは容易ではない。
・我が国では、抗甲状腺薬を投与して、ひとりでにバセドウ病が治まる(自然寛解)のを待つ内科的な対症療法が主流である。
1.薬物療法
●甲状腺ホルモンの合成を阻害する薬物(チアマゾール、プロピルチオウラシル)を内服して、甲状腺ホルモン濃度が正常範囲になるように投与量を調節していく。
・抗甲状腺薬の投与を開始すると、通常、2ヶ月程度で甲状腺機能は正常範囲となる。
・その後はT3、T4濃度が正常範囲になるように抗甲状腺薬を漸減していく。
・TRAb/TSAbが陰性化するまで抗甲状腺薬の投与を続けていくが、通常2年以上かかることが多い。
・抗甲状腺薬は副作用が多く、投与開始後3ヶ月以内は細心の注意が必要である。
・特に無顆粒球症がまれに起こることがあるので、最初の2~3ヶ月は白血球数を測定し、3,000/mm3以下になった場合には、抗甲状腺薬を中止する必要がある。
・抗甲状腺薬による内科的治療法は、安全、安価でかつ容易な治療法であるが、自然寛解率(2~3年治癒して50%程度)が低いのが欠点である。
2.放射線療法
・副作用のために、抗甲状腺薬を内服できない場合や、抗甲状腺薬を数年以上内服し続けても寛解しない場合には131I治療が勧められる。
・131Iを1回内服すると、131Iの出すβ線により甲状腺濾胞細胞は次第に破壊されていく。
・131Iは胎児の甲状腺にも取り込まれるので131I療法は妊婦では禁忌である。
・131I治療後に白血病や甲状腺癌になる頻度は健常人とほとんど同じであり、131I療法は安全な治療法であることが立証されている。
・しかし、眼球突出が悪化したり、10年以上経つと甲状腺機能低下症になることが多い。
3.外科的治療
・副作用のために抗甲状腺薬を服用できなかったり、数年以上も抗甲状腺薬で治療していても寛解せず、しかも甲状腺腫が大きい場合に適応となる。
・また、小児のバセドウ病では131I治療は禁忌なので、抗甲状腺薬を内服できない小児バセドウ病患者にとって外科的療法は良い適応となる。