【原因】

・血液中に存在する脂質には、コレステロール、トリグリセリド(TG、中性脂肪)、リン脂質、遊離脂肪酸(FFA)4種類がある。

・いずれも「脂質」であるから、そのままでは「水」である血液には溶けないので、前三者はアポ蛋白といわれる蛋白質と、遊離脂肪酸はアルブミンと結合して溶けた状態となる。

●蛋白質と結合した状態をリポ蛋白という。

・臨床上重要な脂質はコレステロールとトリグリセリドである。

●トリグリセリドが主に結合しているリポ蛋白には、カイロミクロンとVLDL(コレステロールも含まれる)があり、コレステロールが主に結合しているリポ蛋白にはLDLがある。

・食事から摂取された脂質はカイロミクロンの形で腸から組織に運ばれる。

・一方、肝臓で合成された脂質は、VLDLの形で体の組織へ分配され、末梢組織のリポ蛋白リパーゼ(LPL)によりそぎ落とされたトリグリセリドが脂肪組織などに取り込まれる。

・また、残った部分はLDLと変わり、血管などの組織にコレステロールを供給する。

・これらの代謝経路のいずれか、あるいは複合した代謝失調により、さまざまな異常リポ蛋白血症が生じる。

・なお、これらとは別に小腸と肝臓よりHDLといわれるリポ蛋白も出される。

●これは末梢で余剰のコレステロールを回収する作用があり、俗に善玉コレステロールといわれるもので、動脈硬化の進展を抑止する。

●高脂血症は生活習慣が発症、進行に関与することから、生活習慣病の代表的疾患の一つとされる。

【分類】

●高脂血症は、リポ蛋白の増加パターンにより5型に分類(WHO分類)される。

・この分類は成因に基づいたものではないため、厳密さには欠ける。

・例えば、VLDLLDLの間は連続変化であり、定義上明確な境界線はない。

・したがって、WHO分類は疾病の整理をする際に有用であるが絶対的なものではない。

・成因により原発性と続発性に分類され、原発性の中で特に遺伝的背景のあるものは家族性高脂血症といわれる。

●高脂血症を来す疾病には、糖尿病、甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群などがある。

・また、サイアザイド系利尿薬などにより誘発されるものもある。

【症状】

・高脂血症による直接的な自覚症状はない。

・一部のコレステロール血症では皮膚症状として黄色腫が発現する。

●高度の高トリグリセリド血症は急性膵炎を誘発することが知られている。

・高コレステロール血症(LDL血症)は通常無症状のまま経過し、年余を経て動脈硬化や虚血性心疾患をもたらす。

【検査】

・上記症状の有無にかかわらず、血清脂質の測定によって診断される。

・トリグリセリドは食事の影響を受けやすいので、早期空腹時採血が必要である。

●通常、総コレステロール値が220mg/dL以上、またはLDL-コレステロール140mg/dL以上を高コレステロール血症、トリグリセリドが150mg/dL以上を高トリグリセリド血症とする。

・動脈硬化をもたらす他の危険因子が重積している例では、さらに診断基準を引き下げることもある。

・臨床上は、高コレステロール血症と高トリグリセリド血症に整理して考えるのが合理的である。

・また、二次性の高脂血症や、遺伝的で難治症の家族性高コレステロール血症を鑑別することもポイントとなる。

【治療】

1.食事療法

・高コレステロール血症、高トリグリセリド血症ともに、適切なカロリー制限が第一段階である。

・次に、高カイロミクロン血症では脂肪摂取制限が必要であり、VLDLが上昇している例では、糖尿病に準じたエネルギー・炭水化物制限が効果的となる。

・現実には高トリグリセリド血症ではこれらのすべてが指導されることが多い。

・アルコール制限も有効である。

・一方で、高LDL血症、すなわち高コレステロール血症では、脂肪制限、動物脂肪制限に続き、コレステロール摂取量を1300mg以下とする。

・特に、卵黄やレバーの摂取には注意を要する。

2.運動療法

・肥満を避ける意味で適度の運動は望ましい。

130分位の歩行から始める場合が多い。

HDLを上昇させる作用があり、Ⅳ型高脂血症のトリグリセリド値に対して効果が期待できる。

【検査】

・糖尿病はいわば「グルコース中毒」であることから、診療ではこの中毒物質のモニターが基軸となる。

●早期空腹時血糖値が126mg/dL以上、または、随時血糖値が200mg/dL以上あると糖尿病の疑診がなされ、再度測定して確認されれば確診となる。

75gのブドウ糖溶液を経口負荷(経口ブドウ糖負荷試験)して、負荷後2時間値を随時血糖値の代わりに用いることも多い。

・血糖値は診断基準としては重要であるが、治療効果を追跡し、経過を追う目的では不便な面がある。

・血糖値は診断基準としては重要であるが、治療効果を追跡し、経過を追う目的では不便な面がある。

・血糖値は食事や運動、薬物などの影響を受けて、変動しやすいためである。

・この欠点を補うため、最近、HbA1c、グリコアルブミン、1,5AGなどの指標が用いられている。

HbA1cは約12ヶ月前の、グリコアルブミンは約2週間前の、1,5AGは直近の血糖状態を示す。

・網膜症の予防に眼底検査、腎症の予防に微量アルブミン尿の測定、大血管症の予防に心電図検査、壊疽の予防にフットケアを定期的に行うべきである。

【治療】

1.生活指導

●食事療法

・栄養素のバランスと、総摂取エネルギーの適正化により、インスリン感受性の改善を図る。

・したがって、やせ型の糖尿病に対しても実施される。

・必ずしも体重の減少を目的としたものではない。

・食品交換表が補助的に用いられる。

●運動療法

・同じくインスリンの感受性の改善を目指すもので、摂取エネルギーの消費が目的ではない。

・毎日の持続が重要である。

・血糖コントロールが不良な時期には禁忌となる。

2.薬物治療

・糖尿病の薬物治療にはインスリン製剤と経口血糖降下薬が用いられる。

(1)インスリン製剤

・インスリンの絶対的欠乏(1型糖尿病、糖尿病性昏睡)やインスリンを必要とする病態において一種のHRTとして用いられる。

・作用時間によって超速効型、速効型、中間型、混合型(2相性)、持続型に分けられる。

・シリンジで注射するバイアル製剤に代わって、ペン型注射器専用のカートリッジ製剤や使い捨てタイプのペン型シリンジ製剤が広く用いられている。

・遺伝子工学的に生産されたヒトインスリンの普及により、インスリンアレルギーなどの副作用は少なくなったが、低血糖には十分に注意する必要がある。

1型糖尿病では必須であるが、2型糖尿病でも、糖尿病性昏睡時や、手術前、妊娠時、重篤な他疾患併発時などで用いられる。

●通常、患者自身により114回皮下注射が行われる。

●近年、生理的インスリン分泌のパターンに近づけるよう、頻回注射することが推奨されている(強化インスリン療法)

・ヒトインスリンアナログとして超速攻型および持続型インスリンがあり、前者は、食直前の注射が可能となり、より生理的なインスリン分泌パターンを実現できる。

・後者は24時間の安定した基礎インスリン分泌パターンを実現した。

・前者はインスリン注射の利便性を増すとともに、後者とともにより良い血糖管理を可能としている。

(2)経口血糖降下薬

・経口血糖降下薬が増え、病態に応じた適切な薬物の選択が要求されるようになっている。

・食事・運動療法を23ヶ月経ても血糖降下が不十分な2型糖尿病が適応となる。

●インスリン分泌促進薬としてスルホニル尿素薬(SU)が最も強力であるが、肥満を助長しやすいため、肥満型やインスリン抵抗性が主体の場合には近年、ビグアナイド薬やチアゾリジン系薬が第一選択となることが多い。

・食後の血糖上昇抑制には速攻型インスリン分泌促進薬がある。

SU

・代表的な経口血糖降下薬で、膵島B細胞のSU受容体に結合し、インスリン分泌を促進する膵作用が主な作用である。

・重篤な低血糖の副作用には注意を要する。

●速効型インスリン分泌促進薬

・アミノ酸の誘導体で、膵島B細胞のSU受容体に結合し、インスリン分泌を高めるが、SU薬と異なり作用時間は短い。

・早期の2型糖尿病の食後過血糖に対して用いられる。

・低血糖や肝障害に注意する。

●ビグアナイド薬

・解糖系の促進や重篤な低血糖の副作用には注意を要する。

・肝糖新生の抑制など膵外作用が主で、近年、インスリン抵抗性を有する2型糖尿病への第一選択薬としての再評価が進んでいる。

・乳酸アシドーシスの副作用に注意する。

●チアゾリジン系薬

・肝臓や末梢でのインスリンの作用を改善する。

・すなわち、インスリン抵抗性改善薬として開発された。

・インスリン抵抗性の本態は多様で、詳細な機序は不明であるが、本剤には前脂肪細胞の分化を促すとともに、PPARγに作用してインスリン感受性を高める働きが知られている。

・インスリン抵抗性を有する2型糖尿病に有用である。

SU薬とも併用される。

・低血糖は少ないが、浮腫や肝障害に注意を要する。

●αグルコシダーゼ阻害薬

・小腸における糖質の分解を阻害し、吸収を遅延することにより食後過血糖を改善する。

・比較的早期の2型糖尿病が対象とされる。

・放屁、腹部膨満などの副作用が比較的高頻度に認められる。

【原因】

・インスリンは、グルコース代謝を円滑に促進して血糖値を適度に保つ。

・インスリンの不足や作用不全により血糖値が上昇した状態を高血糖というが、高血糖すなわち糖尿病ではない。

・糖尿病とは、インスリン作用不足に基づく、高血糖をはじめとした代謝異常により、急性の深刻な病態が出現している人や、このまま続くと、将来深刻な臓器障害が起こり、寿命を全うできなくなるようなレベルにまで血糖値が上昇している状態や病態をいう。

・欧風の生活様式、とりわけエネルギー過剰摂取や脂肪摂取の増大、運動不足(車の普及など)、さらには夜型の生活などにより近年急増しており、予備軍も含めると患者数は1,600万人以上と推定されている。

【分類】

1型糖尿病(IDDM;インスリン依存型糖尿病)

⇒若者に多く、膵臓のインスリン分泌能力が激減するため、インスリン注射が必要となる。

・原因は不明であるが、自己免疫により膵臓のB細胞が破壊される機序が想定されている。

・頻度は糖尿病全体の5%以下である。

2型糖尿病(NIDDM;インスリン非依存型糖尿病)

⇒中高年によくみられる。

・インスリン分泌の異常もみられるが、インスリンの効きが悪い状態(インスリン抵抗性)が主因である。

1型、2型のいずれの糖尿病も遺伝的基盤に環境因子が加わって発症するとされるが、詳細は不明である。

2型糖尿病の3大誘因として、過食(肥満)、運動不足、加齢があげられる。

・したがって、典型的な生活習慣病であるといえる。

・妊娠中に出現する妊娠糖尿病や、内分泌疾患などさまざまな疾患に二次的に出現してくる糖尿病も知られる。

【症状】

1)急性症状

・比較的急速に高度の高血糖状態が進むと、体は過剰なグルコースを腎臓から体外へ排出して(尿糖)、体を守ろうとする。

・グルコースを排出するためには大量の水が必要となり、まず多飲・多尿、口渇が出現する。

・さらに症状が進行すると、全身からも水分が絞り出される形で脱水状態となる。

・脱水症状として、易疲労感やだるさが出現し、脂肪分解も進み、体重が激減する。

・放置すると、しばしば意識低下や喪失(糖尿病性昏睡)を来す。

2)慢性症状(糖尿病性合併症)

・体内でグルコースは共存する蛋白質と自然に結合する。

・この現象をグリケーション(糖化)という。

・グリケーションにより蛋白質は変性し、構造や機能が変わるため組織は障害を受ける。

・糖尿病では血中グルコース濃度が高いため、この反応が進行しやすく、特に細い血管での障害が顕著である(細小血管障害)

・また、グルコースの代謝物であるソルビトールの蓄積や細胞内プロテインキナーゼCの活性化、酸化ストレスも関与している。

●網膜症、腎症、神経障害などの細小血管症を合わせたものを三大合併症といい、動脈硬化性疾患(大血管症)を含めて四大合併症という。

・このほか、糖尿病合併症は多彩である。