最近リリースされた新譜から ⑤
注目していた今年の夏の新譜。やっと聴くことができました。このCDのリリースはかなり前からアナウンスされていました。そして、戸田弥生さんのコンサートで、この中の第3番と、第4番の演奏を聴いて、興味を持っていました。ヴァイオリンの難曲であるこの曲をどういった感じで聴かせてくれるか、とても楽しみでした。
【CDについて】
作曲:イザイ
曲名:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ op27 (64:36)
演奏:ハーン (vn)
録音:2022年11月-12月 ボストン Fraser Performance Studio
CD:UCCG-45073 (レーベル:DG、販売:ユニバーサル・ミュージック)
【曲に関して】
イザイは、第一次大戦中に活動の中心にしていたアメリカから帰欧し、健康上の理由もあって、ソロ活動を減らし後進の指導と作曲に軸足を移して、後世に自らの芸術を引き継ぎ始めます。そして、1923年から24年にかけて、J.S.バッハの無伴奏ソナタ・パルティータをもとに、6曲からなる無伴奏ヴァイオリンソナタを書き上げました。6曲のソナタはそれぞれ彼らのイメージと未来への期待を込めて、次世代の6人の演奏家に捧げられています。
【演奏についての感想】
戸田弥生さんの、イザイの絆のコンサートを聴いて、ハーンの演奏するイザイのヴァイオリン・ソナタのCDがリリースされたら、是非振り返ってみようと思っていました。イザイは、19世紀から20世紀前半にかけて活躍した、フランコ・ベルギー楽派のヴァイオリニスト。その同時代におけるイザイの作曲家や演奏家とのつながりがテーマのコンサートでした。このCD、まとめ注文したために、手元に届くのが遅くなりましたが、やっと聴くことができました。
まず、これはなかなかの素晴らしいというか、凄い演奏ですね。ちょっと驚きました。そもそもこの曲は難曲と言われていて、聴いてもかなり解りづらい曲だと思っていたのですが、こんなにも親しみやすく聴けるとは思ってもいませんでした。凄いテクニックだというのは、聴いていればそう感じるのですが、それをまったく乱れなく、曲の表情も十分に表現して、豊かなヴァイオリンの音で聴かれてくれます。ヒラリー・ハーンって、デビューの頃のイメージしかなくて、その頃のバッハなど、少々繊細で固いイメージを持っていたのですが、こんなに豊かで暖かい音のヴァイオリンになっていたのですね。まさに超一流の才能です。
ライナーノーツには、ヒラリー・ハーンのイザイへの想いが語られていますが、この曲の作曲されてからちょうど100年。イザイの孫弟子にあたるヒラリー・ハーンは、語られている通り、確かにこの曲を自分の曲にしてしまったようです。そして、聴いている私もこの曲が面白いし、素晴らしい曲であると感じることができました。今年リリースされたCDの中でも、最高の作品の一つではないでしょうか。
少し古い演奏だと思いますが、ハーンの演奏する第2番のソナタ(ティボーに献呈)
これも古いものですが、ハーンの演奏する第3番のソナタ「バラード」(エネスクに献呈)
これは、第5番から、第二楽章の演奏(クリックボームに献呈)
【録音について】
素晴らしい録音なので、いう事はありません。
【まとめ】
ヒラリー・ハーンとイザイのソナタに圧倒された感じですね。素晴らしいパフォーマンスです。ところでヒラリー・ハーンと言えば、音楽の録音に参加してくれたアニメの「蒼のオーケストラ」見られてますか?
購入:2023/08/27、鑑賞:2023/09/08