絶対に受けたい授業「国家財政破綻」 -191ページ目

林芳正参議院議員インタビュー11「少しインフレになった方が、財政は楽になる」

「国家はインフレにして債務を削減する」

鳥巣 どこに主眼を置くかなんですね。

こういう時って、だいたい国家はハイパーインフレにして。

林 債務を削減する。

鳥巣 なのが普通なので。

ただ、おじいちゃん、おばあちゃんとか、富裕層の方とか、あるいは庶民の方とか。

いろいろ気を遣い始めるとできないわけじゃないですか。

●用語解説<インフレ策>
財務省主計局インタビューで、下記のようなやりとりがありました。
鳥巣 インフレが引き起こす、国民への影響は?
財務省 国債は、国内で消化されている限り、高いインフレを起こせば最悪圧縮できる。
しかしインフレは金融資産を持っている層を直撃してしまう。
鳥巣 高齢者が、金融資産の大半を所有している。
財務省 年金、預金も目減りしてしまう。
年金や公債については、基本的に額面を渡せばいいため、インフレでは実質的に価値が目減りしてしまう。
いずれにしても、あくまで高いインフレを起こすのは最後の手段。

「ソフトランディングさせる方法はないのか」

鳥巣 そこで、ソフトランディングさせる方法はないのかとかね。

ある論文を見て、おっと思ったんですが。

90年以降に財政破綻をした国を何か国か調べていて。

破綻する前後のインフレ率。

普通、我々は破綻したらインフレになる、というふうに思い込んでいたんですけど。

林 うん。

鳥巣 なっていない国がある。

林 ああ、そうですか。

鳥巣 南米で。

面白い研究だなあ、と思って。

「破綻後にインフレにならなかった国がある」

林 どうなるんですか?

インフレにならずに。

鳥巣 いや、まさにインフレにならない。

林 ほう。

通常に、2,3とか、5,6で止まる。

鳥巣 そうです。

林 ほう・・。

鳥巣 何でそういう事が起こったのか。

林 ほう。

鳥巣 その回答を、その人なりに出していたんですね。

それはですねえ、さっきの(泣いてくれの)話じゃないですけど。

話し合い。

林 はあ。

鳥巣 話し合い。

林 日銀と?

鳥巣 じゃなくて。世銀とか、IМFとか。

林 ああ、そっちとですね。

鳥巣 そっちと根回しをしておいて、国内とも話し合う。

「デフレでは、おカネがこぼれ出すまではインフレにならない?」

鳥巣 ただ日本は、規模が大き過ぎるんで。

林 まあ、そうかもしれませんね。

小さな国だと、おっしゃるように外から・・。

それはたぶんですねえ。

そういう事(話し合い)で変わったというよりも。

デフレは貨幣的な現象だとは言うけども。

だけど、それは必要条件であってね。

おカネを出せばインフレになるかというと。

たぶんですね、これだけデフレギャップがあるから。

そこのギャップのところに埋まっていって。

全部埋まった時に、こぼれ出すから。

こぼれ出すまでは、インフレにならないと。

ということもあるんで。

鳥巣 長谷川(慶太郎)さんは、そうおっしゃってましたね。

たとえ財政破綻してもインフレなんかなるもんか。こんなデフレで、と。

「スタグフレーションと財政破綻の懸念」

鳥巣 財務省さんは、

「いや、輸入インフレにはなる」

と。

林 石油が高くなったりとかね。

たぶん、それはスタグフレーションみたいなことがあるかなあ。

というような事があるかもしれないなあ、というのはあるかもしれないけど。

●用語解説<スタグフレーション>
景気が後退し失業者などが増えているにも関わらずインフレが進む状態。
これが、ひどくなったのがハイパーインフレと呼ばれ、年に100%の物価上昇などが起きる。
トルコやアルゼンチンなど過去に国家破産した国は、スタグフレーションの状況から始まっている。

「水が溢れ出る前に大雨が止めばいいが・・」

鳥巣 じゃあ、と。

長谷川さんに、

「早期破綻の方が良いということですか?」

と聞いた。

林 うん、なるほど。

鳥巣 そしたらですね、

「そうだ」

と。

ベターだと言っていましたね。

デフレのうちにですね。

林 だから、穴がボコボコ空いてる時の方が、雨が降ってもね。

まあ、田んぼが干からびている時に大雨が降って。

ちょうど水が溢れ出る前に、雨が止めばいいんですけどね。

鳥巣 う・・ん。

林 そううまくいくかは別として。

鳥巣 そうなると、庶民は助かるんですよ。

「物価がプラスに転じれば、財政は今より楽になる」

鳥巣 でも借金は、減らないわけですよね。

林 うん。

減りませんけど。

今みたいにデフレでね。

実質債務はどんどんどんどん上がっていく。

税収は名目でどんどんどんどん下がっていく。

というみたいな事よりは。

そこで物価がプラスに転じれば、今よりは楽になると思う。

やっぱり物価が上がり出した時の方が、いろいろ飲み込める部分というのはあって。

年金の物価スライドを少し待つとかですね。

公務員の給与なんかでも。

逆は、なかなかできないですから。

物価が下がったんでね。

給与を引き下げる、というのはなかなか。

デフレの時は難しいですから。

だから、やっぱりねえ、少しインフレになった方が、財政も楽になると思いますけどね。

「問題は、銀行から先におカネが流れていくか」

林 我々のマニフェストには、下限がゼロを超えるのが目標と書いてありますけども。

インフレ・バイアスも、2,3%くらいまでいったところで、そんなにバチは当たらないと思うんですよね。

むしろおカネをじゃぶじゃぶ出して、銀行まで行くけれども、そこから先におカネが流れていくか。

そこだと思うんですね。

もうおカネは、かなり出しているから。

あとはセントラルバンク(日銀)から、普通の銀行におカネが行った後ですね。

そこから世の中におカネが流れていくために、何をするか、みたいな。

政府がやる分もあるでしょうけど。

それは借金を積み上げてしまうから。

なるべくそっちじゃなくて、銀行がおカネを貸して、おカネが回って。

というところを、なるべく誘うような使い方を、逆にいえばしていくと。

だから乗数効果の高いものでやって貰わなければ困る、ということですけど。

(次回へつづきます) 


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林芳正参議院議員インタビュー10「国の借金が国民の金融資産を超えると・・」

「国の借金が、国民の金融資産を超えるとどうなるか」

鳥巣 先生は、国債を国内で消化していく。限度というものを、家計のみで考えてらっしゃいます?

林 金融資産っていうのは、たぶんアレですよねえ。

個人の金融資産、ネットアウトして1000兆くらいですから。

ま、そこはひとつの目安であって。

コーポレートでやっている部分てあると思うんですよ。

だから、金融機関ですよねえ。

しかし金融機関が持っている、国債を買っているおカネというのは、まあ、最後は国民の金融資産。

自分で持っているのもあるでしょうけど。そんなに大差ないと思いますね。

要は、そこを超えるとどうなるか。

「海外の投資家が売り浴びせた瞬間にやられる」

林 理論的にもですね。海外の投資家が売り浴びせた瞬間にやられる、という状況になっちゃう。

今は理論的には国内の中だけで完結できる数字になっていますから。

したがって、こちらに仕掛けて来ないと思うんですよね。

だけどこれがある程度、1000を超えて、1100とか1200とかになって来ると。

必ず100とか200は海外に持っていかなければならない。

という状況が、増えていきますと・・。

貯金も減ってくると思うんです。

2012年を境に、ぽこっと。

そうすると、こっちも落ちていくと思うので。

鳥巣 貯蓄率も2%台に落ちたらしいですね。

林 あ、もうですから65歳に団塊の世代がなって、年金受給者になるっていうのは、まさに貯金を使いだすわけですよね。

この人たちが。だから企業じゃなくて、個人がカネを取り出してクラウディング・アウトていう。

あながち、ヘンな話じゃないな、という話ですから。

だから逆に言うと、そのへんの時にですねえ、がちっと計画が、5年までね、これでなんとか標準シナリオでいきます、というのがないと。

けっこう、(海外の投資家から)いろんなことを試されるんじゃないかと思うんですよね。

「機関投資家が、泣いてくれますかねえ」

鳥巣 あるストラテジスト(投資戦略家)に聞いたんですが。

あと3年後くらいから、いろいろ試されるでしょう、と。

林 うん。

鳥巣 ただ、3年後にすぐどうなるというのではない。

(国内にカネがなくなったら)揺さぶりをかけられ始める。

経常黒字はある。

そのカネは、海外にある。

でも、あっちから持ってくるという話になると、経常収支が赤字になるということですから。

林 そうですね。

鳥巣 でも最終的には、あっちから持ってくるのではないだろうか、と。

どうしても落ちたらですよ。

でもね、こうも言っていました。

「最終的には、この国は、泣いてくれ、ということになるんじゃないかなあ」

と。

「”泣いてくれ”というらしいぜという噂が出た瞬間に暴落ですよね」

林 それは、国債を持っている人が?

鳥巣 国内の機関投資家がですね。

林 あー、あー。

なるほどねえ。

泣いてくれますかねえ。

鳥巣 かつて亀井さんは、『朝まで生テレビ』なんかで言ってましたよね。

日本人が、日本の政府に貸しているんだから。

日本の政府が、日本人から借りているんだからって。

林 泣いてくれ、となりそうだという噂が出た瞬間に売り始めるんじゃないですかね。

だから瞬間的にみんなを誘拐して、ばさっと中に閉じ込めて

「泣いてくれ」

と言わないと。

どうも泣いてくれって言うらしいぜ、て出た瞬間に、だーっと。

もうこれ、暴落ですよね。

「”泣いてくれ”の前に、日銀が動くでしょう」

林 ただ、泣いてくれの前に、やっぱり日銀が。

鳥巣 もちろん、日銀は動くでしょう。

今回の30兆円基金の動きで、そう思いました。

それは、動くとは思いますけどねえ。

林 だから結局、日銀がたぶんですねえ。

まあこういう制度なんで。

ある程度じわりじわりとですねえ。

3兆5千億の枠を作りましたよねえ。

この3兆5千億のうち、国債がいくらでしたか。

3兆とか。

これは日銀券ルールとは別枠ですよ、と最初から。

ていうことは、たぶん・・。

日銀券を、こっちを増やしていって。

トータルで日銀券ルールは守られているっていう、もう仕組みにしちゃってるから。

こっちは伸ばしていけるんですよね。

だから、たぶんそっちで見るんじゃないか。

「ハイパーインフレになるのも、ちょっと・・」

林 だからまあ、それで、日銀がどんどん入れてですねえ。

パブリック・ファイナンスにどんどん近づいて行って。

ま、1回市場に(国債が)出たやつということで、どんどんどんどん、やっていってね。

これはパブリック・ファイナンスではありません、と言いながらやっていって。

日銀のバランス・シートはどんどん悪くなっていって。

おカネが出て行って、インフレになればですね。

ま、それは全て・・。

糖尿病が駄目か、何とかが駄目か、みたいな。

どの病気が一番死なないか、みたいな話ですけども。

だけど、まあ、そうなってある程度デフレが戻っていけば。

そっから、とめどなくハイパーインフレになっちゃうというのも、なんかちょっと。

その時は猛スピードで止まらないというのも、ちょっと。

本当かなあ、という気もするんですけどね。

(次回へつづきます)

 
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林芳正参議院議員インタビュー09「この夏以降、ヤバイのでは、という議員が増えている」

「国家財政破綻のシュミレーションをすべきか?」

鳥巣 私の知人に官僚がいまして。

あまりにもひどい!と。

平成に入った時は、まだ100兆円台。

200兆には到達していなかった。

それが800兆とか。こんなにもなっている、と。

敗戦を経験して、国の復興に命を懸けた官僚が引退した後に、タガがはずれたのではないか、と憤慨していた。

自身、日本国債を200万円ほど買っている。

愛国者です。

僕が、シュミレーションをすべきだと言った。

彼も、即座に「すべきだ」と答えた。

危機管理としては当然なんですね。

「米財務省は独自の内々のシュミレーションをやっている」

鳥巣 いや、表に漏れるかどうかは別としてですね。

当然、やらなくちゃいけない。

アメリカなんか、とくにそうですよね。

いやアメリカは、どうなんだろう。

軍事に関しては、ものすごいシミュレーションをしますけども。

財政に関しては、よく分からないですけど。

林 あそこは、ちゃんとОМBとCBОというのが両方あって。

別々に独立的にやっていますよね。

ですから、その2つの数字は往々にして食い違ってですね。

その2つを両脇に置いて国会議員は議論ができる。

少なくとも、そういう環境はある。

たぶんそういう表の議論とは別に財務省は、トレジャリーは、自分で独自の内々のシミュレーションをやっている。

●用語解説<トレジャリー>
米国国債(米国財務省証券)。短期(3ヶ月、6ヶ月、1年)の割引債をトレジャリービル、中長期(2年、3年、5年、10年)の利付債をトレジャリーノート、超長期(30年)の利付債をトレジャリーボンドと呼ぶ。

「日本では、三矢研究と同じように思われる可能性が?」

鳥巣 財務省に聞いたら、話すことはあっても、詳しく研究したことはない、と、おっしゃるんですよ。

本当かどうかは別としてですね。

林 うん。

鳥巣 でえ、財務省の総合研究所があるじゃないですか。

そこに聞いたら、いや、今のところ審議会とかそういうところでテーマにしてやったことはない。

まだ要請も来てはいない、と。

ま、昔の三矢作戦ではないけれども。外部に漏れたらヤバいというのもあるかもしれませんけども。

●用語解説<三矢作戦>
1963年(昭和38年)に自衛隊統合幕僚会議が、朝鮮有事を想定した、極秘に行っていた机上作戦演習(シミュレーション)。
正式名称は、「昭和三十八年度総合防衛図上研究」。
1965年(昭和40年)2月10日、佐藤内閣の衆議院予算委員会において社会党の岡田春夫がこの研究の存在を追及。
三矢研究問題はその後の国会において防衛問題をタブー視する風潮を助長する契機となった。
三矢作戦発覚から38年後の2003年、小泉内閣で「武力攻撃事態法」が制定された。
<日本が外国の武装勢力やそれに準じるテロ組織が日本を襲った場合に民間人を保護、緊急の避難をさせ、武力攻撃に対抗し武装勢力を排除し、速やかに事態を終結させるため>
の日本の法律。
ちなみに、三矢研究が発覚した1965年当時の第1次佐藤内閣の防衛庁長官は小泉純也であった。
息子である純一郎の手によって、いわゆる「有事法」の基本法が出来たことになる。
その例に習えば、財政破綻シミュレーションは、
「日本に財政破綻が襲った場合、国民の生活をいかに守るか」
という視点からの調査が基本となる。

「この夏以降、ヤバイのでは、と真剣に言う議員は増えている」

林 だから、主計局自体がやっているという事自体が、どういうふうに外に見られるか。

鳥巣 ですね。

林 だから、(アメリカの)CBОっていうのは、コングレーショナル・バジタリー・オフィス(予算委員会)ですから。

ああいう組織だと独立的に、行政府とは・・(別組織)。

むしろ状況がここまで悪くなっていると、ちょっと、そういうところでしかやれないんじゃないですかね。

オープンには。

鳥巣 ですから、財務省さんが、ああいう回答を返してきたので、おう・・と思ったんですね。

つまり、いかなることにもシミュレーションが必要であると。やがて国会でも審議会でも、ま、話していただく。

そこまで書いてきたんですね。

へえ、と思ったんです。

僕なんか、当たり前だと。

もうここまで来たら。

林 ただ、この夏以降ですねえ。

割と真剣に、一般論ではなくて、(自民党内部でも)ちょっとヤバいんじゃないですか、と。

おっしゃる方は、だんだん増えてきている。

「だから最低でも、財政健全化をしなければいけない」

林 だから、最低でもね、財政健全化。

5年間でプライマリーバランスを半減。

最初の一歩ですけども。

これすら出さないという事になると、今の中期財政、なんですか財政運営戦略ですかね、

中期財政フレームは(一般会計の歳出)71兆と(新規国債発行)44兆しかないから。

これを3年間、やっていきますと。

これしかないわけですよね。

そうすると、71と44よりは増えないだろうけど。

「PB(基礎的財政収支)赤字を2005年までに半減できるの?」

林 じゃプライマリーバランスは、一体どうなるのかというとあと10兆税収が増えないと、71でやっていればPB(プライマリー・バランス)は半減しないんですね。

半減するために何をするかっていうことについては何も言っていない。

ということに等しいわけですよ。

3年間で71と44だけをやっていたら、4年目と5年目に、どれだけきつい坂を上らなければいけないか。

ということになっちゃうんで。

5分の1ずつは、やっぱり基本的には背負っていくと。

そら経済がよくなってから、というのであれば。

10分の1から始めて少しずつ(増やしていく)・・ということもありますけども。

かなりなだらかなカーブで、その5年目の2分の1にたどりつくことを初年度からやんないとですね。

最初のうちはなだらかにやっていて、後になってストンストンとやったらね。

それこそ景気が悪くなって、逆になっちゃいますから。

「国際公約を守らないと、なんだ、という事になる」

林 だから、そのためにはやっぱり、消費税とマニフェストをもうそろそろね。

やっぱり政治決断して頂いて。

どれくらいの時期にどれくらいの事をやって。

ある程度、具体的に言っていかないと。

もう間に合わないんじゃないかと思うんですよねえ。

(基礎的財政収支の赤字を2015年までに)2分の1にするって、もう国際公約してるわけだから。

それが4年目、5年目はブラックボックスでございます。なんて事はね。

言っちゃうと、なんだこれ、って事になっちゃうのでねえ。

●用語解説<国際公約>
2010年6月、トロントで開催されたG20サミットで、先進国の財政赤字を2013年までに少なくとも半減し、2016年までに政府債務の対GDP(国内総生産)比を安定化または低下させることで合意した。
日本は財務状況が特に厳しいこと、国債のほとんどすべてが国内資金で消化されていることなどの事情を考慮し、この合意の例外扱いとすることになった。
2010年6月に発足した菅政権は、「財政再建」と「経済成長」の2つを同時に達成することを主要課題としている。
「新経済成長戦略」で、2020年度までの平均で実質年2%以上、名目年3%以上の経済成長を見込む。
「財政運営戦略」では、2015年度までに基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字を対GDP比で半減させ、2020年度に黒字化する。
(基礎的財政収支とは、歳出予算のうち国債費を除く政策的経費が、国債発行に頼ることなく毎年の税収などでどれくらい賄えているかを示す指標。
税収が政策的経費を上回れば黒字)
この目標を達成するために3つのルールを設定。
① 2011-2013年度予算で国債費を除く一般会計歳出を71兆円以下に抑える
② 2011年度の新規国債発行を44兆円以下にする
③ 新規政策の財源は歳出削減か増税で対応
菅内閣は、財政再建と成長達成の二つの目標を、互いを犠牲にすることなく追求することを目指しており、菅総理がサミットで説明したのもこのことだった。

(次回へつづきます) 


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林芳正参議院議員インタビュー08「菅首相も消費税と心中していれば道も開けた」

渡辺「みんなの党」代表は、ドル体制の終わりと予測

鳥巣 今年2月の段階で、渡辺さん(「みんなの党」代表)は「年末から来年にかけて、二番底がきます」と言っていた。

日本よりヤバイ国が、ヨーロッパにいくつもある。

事実、その後ユーロの危機が顕在化しました。

フランスまで飛び火したら、本格的にヤバくなる、と。

また中国の人民元のドルペックが限界に達し、切り上げられたら、中国のバブルが崩壊する。

その時は、間違いなく日本は二番底だと。

●用語解説<ドルペッグ制>
ある国の政府や中央銀行などが金利調節や為替介入を行い、自国の通貨とアメリカドルの為替レートを一定割合で保つようにして、自国通貨と米ドルとの固定相場制を図る政策。

鳥巣 結局は、博打(ばくち)の胴元であるアメリカのおカネが足りなくなるので

「最終的には、通貨調整、ドル体制が終わるんです」

とも。

渡辺さんだけでなく、政府税調の神野さんも信用収縮リスクを懸念している。

●用語解説<信用収縮>
神野直彦・政府税制調査会専門家委員会委員長は、
「私は(財政の悪化による)格下げで国債が発行できなくなる事態より、金融市場の混乱で国債価格が下落し発行できなくなる事態のほうがありうるシナリオだと考えています。
信用収縮が起きて国債発行ができなくなるのです」
と述べています。
最悪の事態として、金融危機の再来によって、債券(国債)、株式市場から投資マネーが引き上げる事を想定しているのだと思われます。

「民主党の経済政策では、景気が冷え込むのも当たり前なんです」

林 二番底は、そうですねえ・・。

(国内では、二番底を回避するために)去年の時点で、ある意味政策効果がある、エコポイントとかエコ住宅とかをやった。

その後の蓄えみたいなものになった。

でも(民主党は)サプライサイドのそういった策を止めましたよね。去年。

やっぱり、ああいう事をすればですねえ・・。

エコポイントとか終わった時の、その後に出てくるものを撒いとかないから。

タバコ増税までやってね。

あれじゃ(景気が冷え込むのも)当たり前なんですよね。

●用語解説<エコポイント制度>
エコポイント制度、エコカー補助制度は、麻生内閣で成立させた政策。
当時、民主党は
「補正予算は、バラマキ予算だ」
と反対。
鳩山内閣でも一旦は
「2010年度の概算要求に盛り込まない」
としたが、1か月後に撤回。
「「エコポイント、エコカーは、政策効果がある」
と導入を発表した経緯がある。

「中国の日本へのデフレ圧力は、欧州の比ではない」

林 渡辺さんがおっしゃっているように、アメリカもそういう事(金融危機の後遺症の二番底)を言われていた。

鳥巣 中国も北京(五輪)が終わり、上海(万博)が終わり・・。

林 中国は通貨調整ていうのがないですから。

結局あそこだけは、ドルと一緒に、ドルが下がれば自動的に下がる。

ですから成長率が1とか2%しかない国(日本)と同じように成長率9%の国(中国)の通貨が下がっていけば、それは非常にありがたい話。

だと思うんですね。

まだ一緒にやっていこうとしているんであればね。

だからやっぱりそのへんが、ダブルにもトリプルにもなって、結局いちばん近い国に来ますからね。

ヨーロッパに対してどれくらいデフレ圧力を出しているか。

と比べてみればね。

それは圧倒的にこっち(日本に対して)ですから。

だからドイツみたいな(好況)事は、なかなか日本では起こらないな、と。

「誰が政治生命と引き換えに、泥をかぶって仕事をするか」

林 だからやっぱり、それを与党の方できちっと受け止めてね。

竹下登なりですねえ。

いろんな人が自分の政治生命と引き換えにやる仕事なんですね

それを誰かが責任とって泥をかぶって(実行するか)。

私は、「鶴の恩返し」と言ってるんですけど。

要するに、皆がそれぞれに自分のきれいな羽をひとつづつ織り込んでいって、織物につながっていくんで。

岸が安保をやり、竹下が消費税・・。

小泉さんは、そういう意味では支持率は最後まで高かったけども。

じゃ彼はどういうものを自分でサクリファイズ(犠牲精神を発揮)して、この織物を入れたかというと。

そこは、ちょっと疑問、と思うし。

「菅首相も消費税と心中していれば道も開けた」

林 ましてや今の政権は全くそういう感覚がないんじゃないかと思うんですねえ。

せっかく60も70もあった支持率が20になっちゃったら、何の期待もできないですよねえ。

やっぱり(菅首相も)言ったんならですね。

もう自分は心中すると。

消費税とですね。

でやっていれば、まだ道は開けたと思うんですけどねえ。

代表選では、消費税の話はしません。なんて言っちゃったら、一体あれはなんだったんで
しょうね、と。

(次回へつづきます) 


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林芳正参議院議員インタビュー07「いつ何時、何が起こってもおかしくない」

「財務省は、あと財政はどれくらいもつのかを研究した」

鳥巣 自民党の片山さん。

林 片山さつき議員。

鳥巣 の本を読ませて頂いた。

タイトルは、『真実の議論』。

その本の中で「この10年間――自分が財務省にいた頃の話だと思うんですが――

そうすると、だいぶ前の話なんですけど。

ずっと、どこまで財政がもつんだろう、ということを財務省内部で検討してきた」

と。

最新の本では、

「もう財務省だけでは無理だ」

と。

「(金庫の中を)全部洗いざらい出して、国民と真実の議論をすべきだ」

と書いてらっしゃいますね。

林 なるほど。

鳥巣 で、財務省のある人は、国民の金融資産で国債を買える限度を、

「あと250兆」

と言ったんですね。

林 ああ・・。なるほど。

鳥巣 年間の国債発行額が44・5兆。

ま、50兆として。

5年ですよ。

林 うん。

鳥巣 ああ、最大限5年と考えているのかなあ・・と。

近づいて行けば、クラウディング・アウトも気になる。

●用語解説<榊原VS竹中論争>
財政は、あと何年もつと専門家は考えているのか。
先の榊原英資氏は、『絶対こうなる!日本経済』(アスコム)の中で、
「国債の発行残高が870兆円余りで、日本の金融資産の総量残高が1450兆円くらい。純資産でも見ても、金融資産のネットの残高が1100兆円余りある。
だからネットでは、まだ200兆円ちょっとの余裕がある。
あと5年ほどはかなり大量の国債を発行しても、金利は上がらず余裕があるってことです」
と述べている。
竹中平蔵氏は、
「そんなものは絶対にない。
(中略)榊原さんのいう5年は無理で、猶予期間はせいぜいあと3年でしょう」
と反論している。
「5年」か「3年」か。
「財政破綻は、もはやセンセーショナルではなくなった。
起こるか、起こらないか、ではない。
それはいつ起こるかである」
と、ネットでは書かれ始めている。

「大学教授を呼んで、長期金利の発散値があるかを聞いた」

林 柳沢(伯夫)さんとか、与謝野(馨)さんとかがいた時に。

1回、あれ誰だったかなあ。

大学の先生を呼んで、いったいスレッシュ・ホールドはあるんですか? 

という議論をやったことがあるんですけど。

鳥巣 長期金利の急上昇。

つまり国債の発散ですね。

●用語解説<スレッシュ・ホールド【英】threshold>
(閾値=読み方:しきいち,いきち 。別名:しきい値)
「閾値」とは、その値を境にして、動作や意味などが変わる値のこと。
一般的には境界線なんていう意味に使われる。
林議員は、
「金利が急上昇、発散する境界値」
という意味で使ったと考えられる。

●用語解説<長期金利の発散>
元自民党の与謝野馨氏(元財務相)は、今年初めのインタビューにおいて、
「起こるかどうかは分からないが、日本の国債発行残高は2010年度予算案で債務が雪だるま式に拡大し、コントロールが利かなくなる『発散過程』に入り、長期金利急上昇を惹起(じゃっき)する素地ができた。
民主党はそれに対する危機感を持っていない」
と述べている。

「長期金利急上昇の発散値に定説はない」

林 世の中に、定性的にこういうところを超えたら(長期金利が急上昇するということはあるのか?と大学教授聞いたら)。

「ない」って言うんですよね。

そこまで行った国がないんじゃないですかねえ。

鳥巣 GDP比の債務残高ですか?

林 ええ。

鳥巣 ああ、あれは確かに定説はないみたいですよね。

財務省も、そいう認識を述べていました。

林 本当にハイパーインフレでわーっといっちゃったら、どっかでね、その数字を超えるみたいだけど。

こういう(デフレ)状況で、一応マイナスですけど。

安定している中で、(GDP比債務残高)100を超え、120を超え、というのは、あんまり先例がないから。

じゃ140と150の違いは何ですか?と言われてもですね。

わかんないわけですよね。

全然。

「歴史的に同じような事が起こりますからねえ」

林 ですから私は、マクロで超えると危険値に入るというんだったら、もうとっくに超えている気がするんで。

いつ何時、何があってもおかしくないくらい積み上がっているんで。

何か外的な要因があるとですねえ。

さっきの乾いてきた時に・・そっちじゃないかな。

鳥巣 経済学者で池田信夫先生という人がいて。

ネットで人気があるんですけど。

97年に三洋証券が、たった10億円で倒産した。

それをきっかけに 山一・・。

林 山一(山一証券)、北拓(北海道拓殖銀行)。

それでアジア通貨危機ですよ。

鳥巣 今やまさに、ほんのちょっとした事件で、あの状態になるということを書いてらした。

林 う・・ん。

みんな、歴史的に、同じような事が起こりますからねえ・・。

(次回へつづきます)
 

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林芳正参議院議員インタビュー06「財務省も怖くて気軽にオペレーションが出来なくなっている」

「G20から菅首相は、財政健全化に傾いた」

鳥巣 これは、ちょっと繰り返しになるんですが。

菅さんが、

「あと2、3年でギリシャみたいになりますよ」。

なんでああいう唐突に言って、でまた唐突に引っ込めたのかなあ。

林 G20に行ったからですよ。

鳥巣 それもあったとは思うんですけど。

僕は、財務省が、あのあたりの時期に・・。

ま、よく話してるんですけど。

1回、見得を切った時があったんです。

林 見得?

鳥巣 ええ。

林 ほう。

鳥巣 要するに、債務残高が1000兆になっても金利は上がらなかったでしょう、と。

この債務残高の計算は、なかなか難しいんですけど。

何を入れて、何を外すか。

林 そうですね。

鳥巣 たとえば小泉さんなんかは、

「借金が1000兆を超えた時に、民主党政権は吹っ飛ぶ」

とおっしゃったみたいですよね。

あの時期、そのラインだったんじゃないかなあと。

林 うん。

鳥巣 あれは、わざとマーケット向けに言わせたんじゃないか、と思ったりもしましたね。

「債務残高が1000兆円になったら、取り付け騒ぎ?」

林 そうですねえ。

両面あって。

みんなに財政再建に関心もって貰うために、という。

よく役所が使う手だとは思いますけども。

一方で、そういうことをやって、それが本当にきっかけになってね。

本当に現実にすごいことが起きてしまうかもしれない、という恐れもね。

いま、ちょっとあるんじゃないかと。

要するに、みんなに財政再建、真面目に考えてもらおうと思って。

いろんな人に1000兆を知恵つける訳ですね。

財務省が。いろんな人に言って。

鳥巣 国会議員の方たちにも。

林 で結局、1000兆になっちゃったと。

その時に、みんな本当に大変だ、と思っちゃって。

行動を起こし始めると、取り付け騒ぎ。

鳥巣 ああ・・。

「財務省も怖くて、気軽にオペレーションができなくなっている」

林 逆に、それくらいマッチ・アワーになって(多くの時間を費やしてきて)いるんで。

問題はですねえ。

怖くて、そういうオペレーションを、財務省が昔みたいに気軽にはできなくなっているところがあるかもしれない。

●用語解説<オペレーション>
林議員は、「計画(作戦)を立てて、段取りや実施手順を決めて、それらに沿って実施する(操作する)」という意味で使われたと思われます。

鳥巣 財務省さんと話ししてもですね。

取材を始めた今年の初めの頃は、

「政府中枢の誰かが懸念を口にした途端に、マーケットが反応して、その時に破綻が始まる」

と言ってたんですよ。

だから、菅さんが、

「あと2,3年で日本もギリシャみたいになる」

と言った時に、

「えーっ!」

と思ったんですね。

歴史を思い出してしまった。

「質問中に昭和の金融恐慌が、ちらっと脳裏をかすめた」

林 ああ、逆にですね。

いや、ちょっと危なっかしい感じはした。

実は私も予算委員会で、乗数効果で、消費性向の話になった時に、ちらっとね・・。

あんまりね。

じゃ、これ知ってますか?

これ知ってますか?

菅財務大臣が、そういうことをご存じないという事が、あんまり(公に)なっちゃうと。

まさに片岡蔵相ですよね。

昭和の金融恐慌の。

あれも国会の委員会の時ですから。

ちらっと、そういう思いは、あの時、脳裏にかすめて。

それで、途中で止めちゃったんですね。

鳥巣 ええ、その中継は聞いていました。

林  ええ、ですから・・。

そこで、「金融恐慌になる」と言うと、またアレだから。

●用語解説<昭和の失言金融恐慌>
片岡 直温(かたおか なおはる)蔵相が、1927年(昭和2)3月14日の衆議院予算委員会で、
「東京渡辺銀行がとうとう破綻を致しました」
と実際には破綻していなかったにも関わらず失言。
これが昭和金融恐慌の引き金となり、これを機に取り付け騒ぎが発生。
若槻内閣は総辞職に追い込まれる。

「鳩山さんにも、それくらいの事を言ってもらわないと・・」

鳥巣 それと覚えているのは、鳩山さん、亀井さんの質疑の時ですよ。

鳩山さんは、

「私の口から、“(財政)危機”という言葉は使いたくない」

とか、慎重に言ったんですね。

それで林先生が、

「それでいい」

とは言わなかったけれども。

エールを送った感じもあった。

林 それくらいの事を言っといてもらわないと困るんですよ、みたいな。

鳥巣 亀井さんは――これは林先生の質問ではなかったかもしれませんが――

「いよいよ最終局面である」

とか。

郵貯の預入限度額アップについての質疑の中で言った。

「わあ、これは言うとすれば亀井さんだろうなあ」

って思ってたくらいなんですけど。

それくらい財務省の人も心配はしてたんですよ。

「マーケットも、菅さんの発言に反応しなくなった」

林 だから私も、ヒヤヒヤするところはあったんです。

ただ財政委員会で毎週のようにやっているうちにですね。

多分、(市場が)反応しなくなったみたいですね。

菅さんの言う事に。

鳥巣 ハハ。

林 もう、この人は、あまり、いろいろ考えてね。

いろんなことをよく知って言っているという事でもどうもない、というのが。

時々、マーケットの人とか、金融の人と話をしていると、

「あの人、分かってないですよね」。

例の議論(「乗数効果」の質疑)以降ね。

「昔からそうは言われてはいたけれど。

やっぱり、そうでしたよね」

みたいなこともあって。

だから、ま、そんなに。

「菅さんは、塩川(正十郎)さんに似ている」

林  橋本さんが、

「(米国債を)売りたいという欲望にかられることがある」

とか。

宮澤総理が、ちょっと一言おっしゃったら金利が動くとかね。

という意味で、残念ながらと言うか、菅さんが何を言っても、もう反応しないみたいな。

だいたい、就任の時に

「為替は92円がいい」

と言っちゃうような人ですから。

だから、まあ、あんまり・・。

ある意味では残念な事かもしれませんが。

財務大臣の片言隻句(へんげんせっく)にはですね。

あまり左右されないことになっちゃってたなあ、と。

財政とは全く関係ないんだけど。

例えば三権分立なんかについてもですね。

かなり変わった考え方をしていて。

「三権分立じゃない」

と言うんですね。

憲法はね。

そんなのも、昔だったら、ひっくり返るような事をおっしゃるんで。

まあ、ある意味、塩川(正十郎)さんに近いんじゃないですかねえ。

鳥巣 ああ・・。

「菅総理の消費税発言も先走って・・」

林 そういう印象でしたね。

後半は。

ですから総理になられても、消費税の話をされた時も、早いなあ、と思った反面。

ああ、また何か・・(という予感がした)。

先走ったみたいなところがあるみたいですね。

たぶんちゃんと財務省の振り付けというとおかしいけど。

きちっと一緒にやってる、という話は伝わってなかったんで。

これで、もしまた一人で先走って、この話もまたお墓だなあ(没になる)・・ていうふうに、両方思いましたね。

(次回へつづきます)


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林芳正参議院議員インタビュー05「民主党がフランス型を目指すなら、税率を言わないとひどいことに」

「榊原英資氏の『日本はフランス型福祉社会を目指そう』」

鳥巣 民主党に現在、どういう影響を持ってらっしゃるのかはわかりませんが。

榊原英資さん。

 はい。

鳥巣 『フレンチ・パラドックス』という本をお出しになったんですね。

「今の日本の社会福祉は基本的には年金と医療で、基本的には老人向け。

フランス・ドイツ型というのは雇用と育児に社会福祉を拡大している。

つまり福祉を、老人から若者や子どもにまで広げていく。

子ども手当なんかもっと拡充する」

と述べている。

日本はフランス型の大きな政府、福祉社会を目指すべき、というご主張なんです。

林 なるほど。

「竹中氏は『民主党が堂々と言わないのが問題』」

鳥巣 竹中(平蔵)さんとの対談本『絶対こうなる!日本経済』でもその話が出ている。

林 あ、なるほど。

鳥巣 竹中さんは、

「それはそれで、ごりっぱな考え方なんだけども。

それを民主党がちゃんと言わないのが問題なんです」

と。

榊原さんは、たぶん鳩山さんとの関係だと思うんですが。

林 そうですね。

榊原さんは、かつて民主党のシャドウ・キャビネットで閣僚もやっておられた。

一般的には、党員ではないんでしょうが、民主党寄りとは見られている。

「鳩山さんに『社会主義的な政策は止めてください』」

林 おっしゃる通りで、私、代表質問で鳩山さんに

「社会主義的な政策は止めてください」

と質問をしたことがあるんですね。

そしたら、

「そういう誹謗中傷に負けずに頑張る」

と、こうおっしゃって。

たぶん彼は、自分は社会主義とは思っていない。

で国民みなさんも、鳩山、小沢、というと、あんまり左派には見えないわけですね。

ですから映る顔は保守だけども、やってる政策は、ま、左派だと。

いうようなことが、今、菅、仙石になってですね。

ある意味では、羊頭狗肉ではなくなった、というようなところがある。

「土井社会党の消費税廃止、軍事費削減では誰も納得しない」

林 まさに、おっしゃるように、

「成長よりも分配です」。

ということを、まず言ってですね。

「その代り、コストがかかります」

という事も一緒に言わないとですね。

かつての土井社会党みたいに、

「福祉だけはします」

と。

「消費税は廃止します」

と。

「財源はどうしますか?」

「いや、軍事費を止めりゃいい」。

これじゃですね。

今は成り立ちませんから。

誰も納得しませんから。

「予算の無駄は、どう頑張っても1~3兆円のレベル」

鳥巣 フランスというのは、消費税は20%、国民負担率は60%。

榊原さんは、日本もフランス型にしようと思えば、それくらいはかかる、ということをおっしゃっている。

でも、目指すべきだと。

●用語解説<国民負担率>
国税と地方税とを合わせた租税負担の国民所得に対する比率である租税負担率と、年金や医療保険などの社会保障負担の国民所得に対する比率である社会保障負担率との合計。
「(国民の租税負担額72・4兆円+国民の社会保険負担額58・7兆円)÷国民所得336・4兆円=国民負担率39・4%」(財務省の回答)

鳥巣 今の「子ども手当」「高校無償化」とかはそのプロセスであって。

すでに民主党は、そこに踏み込んだ。

いずれはフランスのような体制に持っていきましょうよ、と。

林 なるほど。

「フランス型を消費税で賄うなら、ひとつの考え方」

鳥巣 そのビジョンを出してくるかどうかですね。

林 う・・ん。そこが、このマニフェストの一番の問題点で。

たとえばフランス型に行くという事であるとすると、そういう手当は消費税で賄(まかな)いますというのなら、ひとつの考え方ですけども。

16・8兆円のものを、予算の無駄をなくすことによって出しますと。

こういうふうに言っちゃったものですから。

あれだけ仕分けをやって、最初に出て来たのが6800億円ですから。

まあ、どう頑張っても、1兆、2兆、3兆、というくらいのレベルと私は思いますけど。

「マニフェストを引っ込めてお詫びと訂正を」

林 それを参議院選挙の時に、いや増税でやります、と言うか。

こっちを減らすか、どっちかして、ここを合うようにしないとですね。

1回言った事だから、任期いっぱい頑張ります、という事で16・8の旗を下ろさないわけですよね。

下ろさないから、代わりの財源、という訳にはいかないわけですね。

ですから、そこがやっぱり・・。

去年6月のマニフェストを1回引っ込めた上で、お詫びと訂正して。

これです、という事をどっかでやらないと。

私は非常に窮屈な財政政策になる、と。


「自民党は、中福祉、中負担」

鳥巣 榊原さんは、財政の現状のことも考えて。

世界経済の情勢を見て、日本経済の今後のことも考えて。

また、これから社会保障の経費もかかってくると。

そういう事をいろいろと考えたら、ここでいっそフランス型で、と。

いろいろ総合的に考えたんだと思うんですよ。

国民に対して、選択を投げかけることにするのかかどうか。

自民党型で行くのか、あるいはフランス型福祉社会国家の民主党型で行くのか。

そこだっていう気がしますね。

林 そうですねえ。

我々の案は、一般的には「中福祉、中負担」と言っていますから。

フランスほどには、(国民負担率は)たぶん行かない。

「国民負担率は、5割がぎりぎりではないか」

林 今から5%(上乗せ)ですと、(消費税)10%ですから。

そこでなんとか国民負担率5割を超えない、ということを橋本(龍太郎元首相)さんが出してましたよね。

財政をきちっともたせながら、そこをやる。

という事が、ぎりぎりじゃないかと思うんですねえ。

そこからもう少し、高福祉高負担に近づく。

フランス型のようなところに行くという事であれば。

かなりの消費税をアップするという事であればですね。

税率を言わないと、ひどいことになる。

国民負担率60ですか。

それくらいの事を言わないと、辻つまが合わないんですね。

「自民党案でも、消費税10%では済まない」

鳥巣 竹中さんは対談本の中で、「仮に小泉型の小さな政府で行ったとしても、消費税12~15%が必要になる」と。

林 うん。

鳥巣 「だから、これだけの財政赤字を抱えながら大きな政府にしていくと、とてつもない大きな政府になりますよ。

民主党のようなことをやっていったら、消費税は本当に30%になる」

と、こうおっしゃってますね。

林 おっしゃる通りだと思いますね。

我々も、「当面10%」と言っているんで。

そっから先はない、とは、まあ、言えませんね。

嘘をつくことになりますから。

ですから、今の仕組みで、中福祉、中負担という事であってもですね。

よっぽどデフレ解消して経済成長して、民主党のいう名目2%を超えていくようなデフレーターで行ったとしてもですね。

やっぱり10年後にプライマリーバランスを均衡させるには、10%では足りないのではと思いますけどね。

●用語解説<デフレーター>
国民所得統計の名目値(時価表示)を実質値(不変価格表示)に換算するのに用いられる物価指数。
一般的にGDPデフレーター(=消費や投資など需要項目ごとに実質値を求め、その合計<=実質GDP>で名目GDPを除いたもの)が用いられることが多い。

(次回へつづきます)


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林芳正参議院議員インタビュー04「最後に本当に予算が編成できるのだろうか?」

鳥巣 マーケットの見方というのは、いろいろあるけれども、自民党さんは大人の政治、というんでしょうかね。

林 ま、いろいろあってもね、最後、締め切りまで何とかね。

水戸黄門のように、8時45分とか9時45分になると出て来てですね。

みたいのはありましたから。

そこの安心感というのが去年、かなり傷つけられて・・。

鳥巣 政権交代した民主党も、ダッチロール。

林 いちばん最後に、(民主党の)黄門さん、小沢さんが出て来て、

「こうだ」

と言ってなんとか予算作れた。

暫定税率とか。

そうすると今年は、そういうこと(小沢氏の関与)がないとすると。

一体、予算が積み上がって、最後に本当に編成できるんだろうか、ということですね。

「年金の国庫負担分2・5兆円は、どこに入るのだろう」

鳥巣 長谷川慶太郎さん。

林 はい。

鳥巣 あの方が、「この8月が危ない」という事をおっしゃっていたんですね。

林 概算要求ですね。

私もちょっと、そういう話は聞きました。

だから知恵があったのは、77と44という枠だけは決めましょうと。

鳥巣 概算要求と国債の発行上限額ですね。

林 だから今年は、77と44で、うまくはめ込めればですね。

ただ年金の(国庫負担を)2分の1に引き上げる2・5兆円ていうのは、けっこうボリュームは大きい。

これが概算要求基準の、予算編成の過程で別途検討すると言うんですね。

あれだけ(事業仕分けで)大騒ぎをして、44兆円の経費の1兆円を削って、1兆円出して。

そこにコンテストで1兆円強のものを入れて、社会保障の1兆3千をなんとか辻褄を合わせる。

それは2・5の外側で行われている。

2・5というのが、どこに入るのか。

非常に大きいだけに・・。

●用語解説<基礎年金の国庫負担>
11月30日付各紙は、「財務・厚生労働両省は、2011年度の基礎年金の国庫負担割合について、現行の2分の1から36・5%に引き下げる検討に入った」と報じました。
「財務省は11年度予算の編成に当たり、36・5%と2分の1の差額を埋める財源(約2・5兆円)を確保できないと判断。将来の年金給付に充てる積立金を取り崩し、保険料や給付額に影響を与えないよう帳尻を合わせる方向で調整する。
消費税増税を含む抜本的税制改革が実現した時点で積立金を補てんする計画で、財源を先食いする格好だ」(日本経済新聞)
拙著「絶対受けたい授業『国家財政破綻』」では、民主党の五十嵐文彦・衆議院議員(現・財務副大臣)は、下記のように述べていました。
「予算については、組み方なんですね。(中略)年金の会計なんかでも、基礎・賦課方式に変わっているわけですから、あれは活用しようと思えば活用できるんです。
年金財政でいうと息の長い話ですから、そんなにすぐ心配するようなことはないと思います。
役人に言わせれば――財政規律を気にしないんであれば、200兆円も貯まっている財政から借りてくることはいくらだってできますから――と」
ついに、「年金」に手を出すことになった、というわけです。
「国債」を「麻薬」と称した財務官僚(NHKスペシャル『852兆円 借金はこうして膨らんだ』)。
「年金」は、何と称するのでしょうか。
五十嵐議員は、こうも語りました。
「ですから、すぐに破綻するってことはないですよ。たとえば2年から5年の間に、ギリシャのようになるってことはないですね。ほかの金庫(年金)はあるわけですから」
私も実はこの「年金」の存在が、日本国債の空売りを狙っているハゲタカ・ファンドにとっては、不気味な存在に映っているのではないかと思っています。
「年金破綻」と叫ばれつつも、「国家財政破綻」のレベルで言えば、日本国にとっては最後の砦です。
財政規律が崩れつつあることは確かでしょう。

「子ども手当などを止めれば5兆円もすぐ出る」

林 結局24兆の決め方を見れば分かるように、マニフェスト関連経費から最初から聖域視されて。

この10%カットに入っていないんですね。

たとえば子ども手当、高速道路無料化、戸別補償、高校無償化、来年度概算要求で全部止めれば5兆円くらいすぐ出るわけです。

2・5兆を軽く超える財源がですね。

ま、そこはね、民主党さえ「いい」と言えば、予算は組めるわけです。

それが出来るかどうか。

203対200の数字がありますから。

200人の人がみんな、一字一句それを守れと言っているとは思いませんけど。

そこが政府のガバナビリティとかリーダーシップとかでいけるんだろうか。

来年3月、年末の予算編成までにきちんと出来るんだろうか。

ここまで支持率が下がってしまうとですね。

抑えが効くのかな、というのが、非常に気になります。

(次回へつづきます)

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林芳正参議院議員インタビュー03「自民党に反省もある。言い訳しようと思えばいくらでもできる」

「与党から見れば、消費税増税のチャンスだった」

鳥巣 民主党は、参議院選挙で惨敗。

普通の頭だったら、消費税増税をマニフェストに出したら負けると。

分かっているわけですから、次の選挙では出しませんよね。

たぶん単独では出さない。

国民は、首相が

「消費税を上げなければ、あと2~3年でギリシャみたいになる」

と言っても

「ノー」。

消費税論議はどうなっていくんでしょう。

林 我々は、反省もあるんですね。

(政権時代に、消費税増税をできなかった事の)言い訳をしようとすればいくらでもできる。

アジア通貨危機があった。

選挙で(敗北して)、ねじれになった。

リーマンショックもあった。

結果としては、できなかったわけですね。

ですから野党になって、政府だった時のことをひっくり返すのはまずいだろうと。

野党が増税を言うというのは特異な事だとは思うんですが。

参議院選挙の公約に「10%」と書いたんです。

やっぱり我々は我々の責任において――党内でかなり議論はありましたけどね――参議院選挙で、ある意味いちばん言いにくいことを正面から訴えると。

逆に言えば、与党から見れば、ものすごいチャンス。

野党が、やろうと言っているわけですから。

鳥巣 菅さんは、すぐに反応した。

だけど、参院選に負けたら、あっというまに先延ばし。

海江田万里・経済財政の新特命大臣も、

「たとえ消費税増税が決まっても、法制化を考えると、早くても4年後」

とNHK『日曜討論』で述べた。

なんなんだろう、あれは・・。

「菅首相の消費税発言は政府の協議ではない」

鳥巣 このまえ財務省さんに聞いた。

参議院選で菅さんが「あと2、3年でギリシャみたいになる。消費税増税が必要」と。

あれだけ叫んだあと、惨敗したからという理由だけではどうかなあ、と思う位に、ころっと変わった。

あれでは、「なんだ。消費税を上げなくても、4年間は大丈夫なんだ」と、国民は思ってしまう。

「2~3年でギリシャみたいになる、というのは嘘なんだ」と。

鳩山さんも沖縄普天間基地問題で

「最低、県外。できれば国外」

と言って、できなかった。

同じパターン?

まさか・・。

何か別の意味があるのではないかと一生懸命に考えた。

それで財務省さんに

「あれはコンセンサスをとってやったのか?」

と聞いたんです。

菅さんが言い出した、あるいは引っ込めたという事に関しては、

「政府の協議ではない」

と言うんですね。

林 そうみたいですね。

鳥巣 やはり、そう聞いてらっしゃいますか。

「“すごいな”という思いは、次の日には失望に変わった」

林 もともと我々は、「消費税10%」をマニフェストに入れるには党内の意見を集約している。

正式な公約として出している訳ですから。

ものすごいチャンスだった。

実はあの時に、我々が出した翌日におっしゃいましたんで、

「あ、すごいな」

と思ったんですね。

10%を参考にして年度末までに答えを出すと。

鳥巣 そうでした。

林 「あ、そこまで話は進んでいたのか」

と正直、おどろいたんです。

ま、そのおどろきは、もう次の日くらいには失望に変わっていく。

「俺は総理だから、民主党の代表だから決まるんだ、みたいな」

林 非常に残念なのは、総理が抱きつくのではなくて・・。

党全体の議論をまとめて、政府内できちんと議論をして、こういうふうな事をやろうと決めて。

じゃ一緒にやりましょうという事にすれば。

民主党のマニフェストを作る時にどういう議論があったのか。

だから、どうもですね、鳩山さんもそういうとこがあったんですが。

物事を進めていく手順というんですかね。

どこにどういうふうに企画を出して、上げて、意思決定をして、組織としてのコンセンサスにするか。

ていうところが、そういうところの感覚があまりないんで。

「俺は総理だから、民主党の代表だから決まるんだ」

みたいな。

そこまでは、ヒドクはないんでしょうけど。

消費税もそうだったし、今回のТPP(環太平洋パートナーシップ協定)もそうだし。

全部、そうなんです。

鳥巣 ため息が出ます。

「民主党内にガバナンスがあるのか、いまだに分からない」

林 与野党で協議をするといっても、出てくる人がどれくらいの権限と責任を持っているのかというのがよく分からない。

我々だったら、政調会長とか幹事長とか政調で決めて、総務会にかければ、これはもう党議決定ですから。

逆にそれに反対すれば、処分を受けるということになるわけですよね。

そういうガバナンスが昔からあるので、みんな当たり前のようにやっているわけです。

そういう仕組みが、民主党内にあるのかないのか分からないので。

事ここに至って1年2か月経っているのに、まだよく分からない。

おっしゃったようにマニフェストを変えるのなら、どこでどう手続きをすれば正式決定になるのか、いまだによく分かりませんから。

「官僚排除、政治主導の呪文に囚われている」

鳥巣 いや、あれは不思議だなあと思って。

財務省さんも本音を言うかどうかは別として。

この国の政府は、どうなっているんだろうと。

今、財務省のトップは勝さん(事務次官)ですか。

林 ええ、そうですね。

鳥巣 どれだけのパイプを持ってらっしゃるか分かりませんが。

林 やっぱり自民党みたいに意思決定がはっきりしていればね。

どこでどういうふうに誰にお願いすればどっちに行くか分かるわけですよね。

だけど、そこは財務省にしても、どういうふうにもっていったらというのが分からない。

たぶん、どっかで官僚排除、政治主導みたいな呪文がありましたから。

それに囚(とら)われていて、うまくいきかけたのを、誰かが「また財務省主導で」と悪口を言ったら、いっぺんに駄目になるとかね。
そこが情けないところがあってですね。

「この政府で本当に財政のマネジメントができるのか?」

林 私が危惧していますのは、そういう民主党というガバナンスのなさが、政府全体のガバナンスのなさになってしまって。

外にそういうメッセージが出て行ったときに、日本政府全体のガバナンスのなさになってしまいますから。

そうすると、この政府で本当に財政のマネジメントできるのかな、というメッセージになっちゃうとね。

いや、民主党はどうなっても、私は関係ありませんけど。

やっぱり日本政府とか、日本の財政についてのね、そういうイメージが出てしまうことになると、それは大きな問題だなと。

鳥巣 ですね。

私もそれをいちばん心配しています。

安全保障で、周辺国から舐められました。

もし今度、市場から舐められたら・・。

取り返しがつかなくなる事が、いちばん怖い。

(次回へつづきます)

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林芳正参議院議員インタビュー02「「純金融資産、経済力、財政再建目標で金利上昇を防いでいる」


林 まあ、そうは言いながら、純金融資産がネットアウトして1000兆内外。

そことの債務のバランスで、まだ国内で消化できる。

というのと、まだ消費税を上げる余地があるじゃないか。

というのと、これだけの経済力があるということと。

もうひとつは、きちっと財政再建への目標を立てて、それに基づいて日本政府は真面目に返すだろうと。

そんなことがあって、こういう金利状況――ある意味幸せな事だと思いますが――続いていると。

鳥巣 財務省主計局も「企業は、総計では赤字。膨大な国民の金融資産に救われている」と言っています。

「2012年には、団塊の世代が年金受給年齢に到達」

林 逆に言うと、そういうところがなくなってくると、非常に危ない状況にあるわけです。

GDPで比べれば、ОECDでは抜群に高いところにあるわけですから。

したがって、消費税がなんらかの形で、政治的に無理だと思われてしまうとですね。

(公的債務は)1000兆円を超えて行ってしまいます。ネットさえも。

あるいは経済がなかなか戻らないんじゃないか。

逆に言うと、2012年に団塊の世代が年金受給年齢に到達します。

それくらいになると、今度はマイナスになる。

やっぱり2012年までに、なんらかの道筋は作っておかないと。

鳥巣 財務省も、「今のうちに道筋を作らなければいけない」と繰り返します。

「財政再建の意思が政府にあることを明確に」

林 こういうコンフィデンスというのは、1回崩れ始めると、ま、早いですしね。

そういう時は、どこどこ生命が赤字を出したらしいという噂だけでね。

けっこう、いくというのはね。

こういう自由市場ですから。当然ありますんで。

常に財政再建を頭においておかなければならない。

長い時間をかけても、きちっとリーゾナブルナ計画で、財政再建をするという意思が政府にあります、ということを常に明確にしておくことが大事だと思いますね。

「民主党は財政健全化法にのってこない」

林 したがって、財政健全化法というのを出したんですけど。

鳥巣 ええ。

林 民主党は調子の良いことを言うんですけど。

結局のってこない

●用語解説<財政健全化法>
自民、民主双方とも財政健全化目標は、「国・地方の基礎的財政収支の対国内総生産(GDP)比赤字を2015年度までに半減、20年度に黒字化」など一致点も多い、どこで歩み寄れないのか。
産経新聞の論説委員・岩崎慶市氏の「流れる自民党案。どうした財政健全化法 」の記事を参照してみたい。
「決定的に違うのは年金・医療・介護など増大する社会保障費の安定財源確保についてである。
自民党案は消費税引き上げなどの具体的道筋を示した附則104条に従って、税制抜本改革を行うための法制上の措置を講じると規定している。
そのために超党派による議論を行う会議の設置も盛り込んでいる。
これに対し、菅政権は抜本改革を行うため早急に具体的内容を決定するとしているだけだ。
菅氏は参院選で消費税引き上げに決意を示し、超党派による協議も呼びかけていたのに、党内の強い反対圧力の前にその姿勢は見る影もない。
今や政府、党のどの組織が消費税を議論しているのかさえ分からなくなった。
すべては消費税にかかっているのである」

●用語解説<欧米の財政健全化に遅れる日本>
欧州は金融危機の後遺症に苦しんでいる。
先の岩崎氏は、
「欧米は日本よりはるかに高次元の財政健全化目標を達成するために、法律を次々と成立させ、ドラスティックな歳出・歳入改革に乗り出している」
と述べ、日本と欧米との違いを列挙している。
①英国
「今年2月に<財政責任法>を成立させた英国では、来年1月から付加価値税を20%に引き上げるほか、国防から社会保障まで聖域なき歳出削減に入った。
多方面からの強い反発にもかかわらず、キャメロン保守党政権は姿勢を変えてない」
②ドイツ
「昨年、憲法に当たるドイツ基本法を改正して着々と健全化を進めている」
③フランス
「金融危機後に成立させたばかりの法律をさらに強化した<財政計画基本法>を制定するため、与野党で憲法改正の協議に入っている」
④米国
「オバマ大統領が設置した超党派の財政委員会が財政赤字削減に向け、広範な税財政政策について草案を公表したばかりだ。
税制などで対立はあるものの、財政に対する責任を共有している」
⑤日本
「菅民主党政権も本来なら自ら法案を示し、野党に協議を求めてしかるべきだろう。
それもできないどころか“財源なき政権公約”さえ撤回しない。
先進国で突出して悪化した財政をどう健全化するのか、責任と覚悟が見えない」

「マニフェストを止めるか、消費税をやるか」

林 今年また、財政健全化法を出して。
また、なかなか、ああだこうだってなるんですねえ。

結局マニフェストを止めるとか、消費税をやる、という事を言えるかどうか。

そういう政府の姿勢というものが、今から問われてくるのではないでしょうか。

(次回へつづきます)

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