「ブリージングでは、よく『深い呼吸』『浅い呼吸』と言っていますが、その違いがよく分かりません。
もちろん感覚的には何となく感じますが、上手く言葉に出来ません。具体的に説いてください。
たぶん私は呼吸が浅い」
「ブリージングでは、『赤ちゃんこそ呼吸のお手本』としているよね。
赤ちゃんは息を吸う時は全身が膨らみ、吐く時は全身が収縮しているのが、ハッキリ見えるから。
大人は全然分からないよね。もちろん氣をつけて観察すれば、微妙な変化は感じられるけれど、そのくらい動きが小さくなってる」
「深いとか浅いとかは、立体的な形容詞。つまり呼吸を立体的に捉えた時に出て来る表現。
呼吸を司る内臓である肺も、その肺が収まっている胸郭も、立体=三次元的存在。
だから呼吸も立体的に捉えなければならないのは当たり前。
つまり、高さ×広さ(縦×横)=呼吸の容量」
「言い換えれば、どのくらい肺をたくさん使って呼吸しているかってことだよね。
肺は上部、中部、下部の部屋に分かれてる(ただし左肺は心臓があるため、上部と中部が一体化している)。
肺は釣鐘型の内臓だから、下へ行くほど容積も大きいんだよ。
でも現代人は肺の上部メインで呼吸しているから、その分呼吸が浅いってワケ。
赤ちゃんは肺の下部まで目いっぱい使って息をしているから、当然呼吸が深い」
「正心調息法(せいしんちょうそくほう)と言う呼吸法の創始者・塩谷信男先生は、
『現代人は息はしていても、呼吸はしていない』との名言を遺した。
要は『呼吸が浅い』と言うこと。
塩谷先生はお医者さんでもあったので、呼吸の深さ・浅さを肺との観点から説いていた」
「現代人は、生きていくための最低限の呼吸をしているだけで、慢性的な酸欠状態。
いつも軽い高山病のような状態。だから病氣が多いし、病氣まで行かなくてもいつも元氣がない。
酸素不足が本来持っている能力の発揮を妨げている。
反対に呼吸さえ深くなれば、健康・長寿はもちろん、色んな能力も開発さるって理屈」
「塩谷先生は、実際に106歳まで生きた。
健康法の先生は多いけれども、長生きと言う点では、恐らくこの先生がチャンピオン」
「やっぱり呼吸法が一番手堅いってこと?」
「ただし呼吸法は諸刃の剣。
そもそも赤ちゃんの時はみんな深い呼吸が出来ていたのに、なぜ大人になると呼吸が浅くなるのだろうか?」
「それは胸郭=肋骨が固くなっちゃうから。
肺は拡張と収縮を繰り返すことで呼吸するんだけど、肺単体では運動できないんだよね。
肺の入れ物である胸郭の動きに合わせて肺も動くから。
赤ちゃんの頃は柔らかかった胸や肋骨が、成長と共に弾力を失って行く。
その分胸も動かなくなるし、呼吸も浅くなっちゃう。現代人は『胸が動く』って発想さえないもんね」
「そのとおり。
だからブリージングでは、呼吸法を追求する前に、胸郭・肋骨に弾力を取り戻すことが先決と考える。
呼吸筋のコリを取ることも、基本のストレッチの大きな目的」
「だから片膝立ちの肋骨上げとかを、ほぼ毎回やるんだよね。
体側の肋間筋は一次呼吸筋だから。ここがほぐれるだけで呼吸が自然に深くなっちゃう。
現代人は体側がカチカチだから、肩や喉周辺の二次呼吸筋メインの呼吸になりがち。
いわゆる『肩で息をしている』状態=呼吸が浅い」
「呼吸法をやらなくても、呼吸の器である胸郭・体側が弾力を回復すれば、自然に呼吸は深くなる。
器がカチカチのまま、呼吸だけ何とかしようとしても限界がある。
しかも、長い呼吸や強い呼吸をがんばって追求すると、かえって身体を壊すリスクがある。
呼吸法をやってかえって早死にしたり、病氣になったり、精神的におかしくなった人さえ居る。
だから呼吸法は諸刃の剣」
「激しい呼吸法は、活性酸素を発生させるリスクもあるしね。
ハードな運動のやり過ぎが身体に悪いのと同じ」
「酸素は生きていくのに不可欠な存在だが、同時に酸素自体が生物にとって毒でもあると言う矛盾がある。
モノが腐ったり、錆びたりするのは酸化するから。老化も化学的には酸化の面が大きい。
生物は死ぬと身体が腐る。これも酸素があるから。
生物が生きている間は酵素などで腐敗を押さえているが、生命活動が停止した途端に腐敗が始まる」
「活性酸素もSOD酵素って言う酵素が、除去して害を押さえてくれるんだもんね。
でもSOD酵素も加齢と共に体内で不足してくるから、歳と共に激しい運動のやり過ぎは減らした方がいいわけさ。
激しい呼吸法も避けた方が無難」
「もちろん、呼吸が深くなるにつれて、結果的に長い呼吸が出来るようになったり、強くなる場合も多い。
その場合は全然OK。最初から長さや強さばかり目指すのがまずい。
まずは呼吸の器を創ろう」
「でも、胸ってなかなか動かないじゃん?」」
「最初は肩回りのブレーキを外した方が早い。
だからこそ、胸鎖関節から鎖骨を上下させることで肩・腕を前後に放り出す体操をブリージングでは薦めている。
動きの始点を肩ではなく、胸鎖関節だと意識させるため、右手指先で左胸鎖関節に触れる。
左鎖骨を上げると連動して左肩と左腕が上がる。
左腕を脱力したまま前に放り出すと、自然に小指が前に行く。
左腕を後ろに放り出すと、親指が後ろに行く。
この体操でで肩甲骨や肋骨が大きく動き、ほぐれていく。
肩や鎖骨周りが緩んで来るほど、胸も動かしやすくなる。
縦マクラや丸めたバスタオルを胸椎に当てて、仰向け寝になるのも良い。
足は合蹠。
両肘を直角に曲げて掌は天井に向ける。
いつも丸まっている胸椎が伸展され、胸が自然に開く。これだけで呼吸が深くなる。
赤ちゃんは本能的にこの姿勢を取っている。
古久澤先生の処女作『しあわせを引き寄せるカラダ』のP58~61に『超簡単なバストアップ法』として紹介されている。
胸の見た目の形が良くなるだけでなく、呼吸も深くなる。
お腹ではなく、胸に息を入れるように意識しよう。紐でウエストを縛ってお腹が膨らまないようにするのも良い。
合蹠だけでなく、足を伸ばして膝上を紐で縛ってもOK。下半身を引き締めながら、胸を拡張する稽古になる」
「この呼吸法をやっていると、身体の疲労が回復しやすくなることはもちろん、ストレスにも強くなっちゃう。
ストレスや不安を感じている時、人は必ず『息苦しくなっている』もんね。
人は息が出来なくなると死んじゃうから、呼吸の浅い人はいつも慢性的に不安」
「息を吸っている時と、吐いている時の胸郭の横幅が9センチ以上あると、そうそうストレスにやられないと言われている。
それだけ呼吸が深くてゆとりがあるから。
セラピストやリーダーは11センチ以上の差があるのが理想」
「それだけ他人の邪氣にやられにくいし、度量もあるってことだよね」
「度量や包容力とは、どれほど無理なく相手を受け入れらるか?と言う陰性の能力。
呼吸が浅いとすぐ相手と衝突する。
呼吸が深いと相手を自分の呼吸に飲み込んで、無理なく導くことが出来る。
古久澤先生の2冊目の著書『寝ているうちにやせるカラダになる ブリージングストレッチ』の60~61Pで紹介された『全身捻じり体操』も良い」
「時間が無い時のために紹介した1分間体操だよね。呼吸も深くなりますって保証付き。
仰向け寝で万歳して両膝を立てる。
息を吐きながら骨盤を右に転がし、吸いながら真ん中に戻す。結果的に胴体が捻じられる。
下の写真のように、骨盤を右に転がす時に、反対側の左腕が骨盤にに引っ張られないように注意。体側が縮んじゃう。
骨盤を右に転がす時は、むしろ左手指先をより遠くに伸ばすように意識。左肩も浮かないように注意。より左体側が伸びるのが理想。
左に骨盤を転がす時も同様」
「肋骨を意識出来る人は、骨盤を左に転がす時は、左側の肋骨は外旋、右側の肋骨を内旋させるイメージを持つと、より胴体をスムーズに捻じれる。
肋間筋の癒着が剥がれるから呼吸も深くなる。
骨盤を左に転がす時、左股関節は外旋、右股関節は内旋している。膝で頑張るのではなく、お尻の中で股関節をボールのように転がす。
骨盤を右に転がす時も同様(左右対称)。
お尻は肺と兄弟だから、お尻が固い人は呼吸も浅い」
「冬場に電車やバスの座席で揺られていると眠くなるのは、お尻がほぐれて温まって、呼吸が深くなる面もあるからだもんね。
体操で股関節を動かすことで、お尻が柔らかくなれば、ますます呼吸も深まるよ」
「この体操を続けていると、軸もハッキリしてくる。身体の正中線を通る中心軸と、左右の体側(股関節)を通る側軸が感じられるようになってくる。
軸と呼吸の関係について論じた人は余り居ないが、中心軸=縦の軸があれば、呼吸の高さを感じやすくなる筈。
つまり吸った息が、軸に沿って、どこまで降りていくかを感じやすい。
そして左右の側軸が明確なほど、身体の横幅の意識も明確になるので、その分呼吸の広がりを感じやすい」
「軸がハッキリしている人は、自分の進むべき方向も明確だもんね。首から上で判断すると迷いやすいけど、身体は迷わない」
「リーダーに必要とされる資質は多々あるが、最も必要なのは、進むべき方向を指し示せること。
みんなが『あしたはどっちだ?』と混乱している時に、『あしたはこっちだ!』と導ける人こそリーダー。
それが出来る人は、地位や肩書が無くても、自ら求めなくても、周りから自然にリーダーの座に着くことを求められるであろう」
「軸があって、呼吸が深かったら鬼に金棒だよね。
人を説得する力は、息を吐く力だけど、場の空氣を読む力は、息を吸う力。
本当に呼吸に敏感な人は、正しい方向に向かう時に、呼吸が深まっていることが分かっちゃうのかも?
だから確信・信念が持てちゃう」
「人を説得するのも呼吸を読む力が重要。人は息を吸っている時は運動神経が働かない。
だから武術などでは、相手が息を吸い始めた瞬間に攻撃すると入りやすい=相手が反応出来ないから。
説得術に応用すれば、相手の主張はまず全部聞く。主張を採用するか否かは別として、とにかく全部言わせる。つまり息を吐き切らせる。
相手が息を吸い始めた間合いで説得すれば、説得しやすい。少なくとも相手は敵にならない=話を聞いてくれた・息を存分に吐かせてくれたから」
「最悪なのは相手が喋っている時に、負けじと自分も主張することだよね。お互いの息が激しくぶつかり合って争いにエスカレートしちゃう。
部下とマウントの取り合いやってどうする(笑)。部下の話を聞かないのと並んで典型的なダメリーダーだよ」
「このように、呼吸を追求していくと面白い。この世は全部呼吸。
『私は別にリーダーじゃないから関係ない』と思ってはいけない。
人はみんな自分の人生のリーダーであり、経営者なのだから」
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(虎徹のワン!ポイントコメント)
ブリージングスタッフ・ふぐじろう先生のペットの虎徹です~。
写真は深い眠りに落ちているボク。深い眠りこそ健康の源です。
深い眠りをもたらすのは深い呼吸です。犬は肋骨は勿論、鎖骨周辺が柔らかいので人間様より呼吸が深いです。
人間は加齢と共に眠りも浅くなる人が多いです。呼吸が浅くなることが大きな原因です。
本文中の記事では、胸郭や肋骨の固さが大きな原因とされていましたが、実は鎖骨の固さも呼吸を浅くします。
人間は動物としては、異常なくらい鎖骨周辺が固いんです。鎧のように固まって、呼吸としなやかな身体の運動を邪魔しています。
だから本文の記事でも紹介されていた、胸鎖関節から鎖骨を動かす体操は重要です。TVを観ながらでも出来ますので、習慣にしましょう。
It's important to make it part of your daily routine. 知ったメソッドは、日常生活に落とし込むことが重要です~。
つづく
次回更新は8月6日予定です。