(ブログの登場メンバー)
「チンパン」 ブリージングメソッドを分かりやすく伝えるため、日々猿知恵を絞っている。
「杏子(あんこ)」 長年にわたってチンパンの問答相手をつとめる。もはや腐れ縁と諦めているようである。
「虎徹(こてつ)」 ブリージングスタッフ・ふぐじろう先生のペット・柴犬オス。
記事を知的でキュートなコメントで締めてくれる。
「20代のサラリーマンです。
『君は自分の仕事をこなすだけで満足している。余裕がある時は、他人の仕事もフォローしなさい』
と上司から注意されたので、出来るだけ周りを助けるよう努力しました。
ところが『出しゃばり』だと同僚から非難されました。
周りと程よくやって行くには、どうすればいいのでしょう?
加減を知らない男」
「仕事や人間関係の距離感が分からない人は、胸が固いんだよね。胸は間合いを測るセンサー。
だからまずは猫の伸びのポーズの横バージョンや、
胸バウンドなどの基礎のストレッチで胸の固さを取って行くことだよ」
「そのとおり。しかし今回は『体側』をテーマに、改善法を考えていきたい。
文字通り体側は、自分の内側と外側を分ける境界線だからである。
現代人はこの感覚が曖昧な人が多い。
体側の感覚が鈍い人は、中心軸の感覚も希薄。
そもそも中心軸が無いと、自分の立ち位置や本音が分からない。当然他人との付き合い方も分からなくなる」
「中心軸がないのは、センターラインがない道路を車で走るようなもの。
センターラインがあれば、反対側の車線にはみ出したりしないもんね。
センターラインが無いと、『まっすぐ』が分からないからグニャグニャ走行になっちゃう。
そんな車は危なっかしくて仕方がないよ」
「まっすぐなラインを眺めていると、身体が同調して、自然に中心軸が形成されてくる。
ある整体院では、待合室の天井から紐をぶら下げている。その紐の前に立つようにお客さんに指示すると言う。
すると施術が良く効くようになり、『あのお店は上手だ』との評判が立つという」
「実はまっすぐな紐を眺めている間に、背骨の歪みが修復されていっちゃうんだよね。
その後に整体すると微調整だけですんじゃう。
真っすぐなセンターラインに沿って歩いたり、まっすぐな柱に自分の軸を合わせて屈伸するのも有効。
まっすぐな線に合わせて、背骨の前後運動をするともっといい。
背骨の前後運動は、自分との関係性を整える効果があるから。
多くの人は、他人とのコミュニケーション以前に、まず自分の潜在意識と仲が悪いもんね」
「車の喩えで言うと、体側の感覚が鈍いのは、車幅感覚が鈍いのと同じ。
車の幅が分かっていないから、壁や他の車とこすったりする。歩いていて、人やモノとぶつかりやすい人も同様。
相談者さんのように、他人との間合いが分からない人も体側が不明確。
体側を目覚めさせるには、まず掌でさすってあげること。
自律神経が活性化してくる」
「ぜい肉も身体意識が薄い場所につきやすいもんね。
中高年以降になると、ウエスト(側腹)に浮き輪が出来て来る人が多い。
そういう人は例外なく肋骨が下がってる。
肋骨と骨盤の間に、指横幅三本分の距離があるのが、ギリギリ合格点。四本入る人は超健康。
側腹は腎臓の急所でもあるから、しっかり手入れしたいもの。
まずは片膝立ちの肋骨上げからだよ」
「猫の伸びのポーズも、掌を上にして行うとより体側を刺激できる。
この体操も左右差がある筈。
感情で言うと、左の体側が固い人は『悲しみ』の感情が溜まっている。
右の体側が固い人は『怒り』。
ヨガではカルマ=悪い因縁は、体側に溜まると教えている。
感情の消化不良は、癌など厄介な病氣の元になる」
「カルマを取るための代表的なポーズが、『釣り針のポーズ』だけど、正しく行うのはかなりきついよ。
『三角のポーズ』あたりから始めるのが無難。四股立ちで重心を下げたら、左手で左足首をつかみ、右足は真横に大きく伸ばす。右手万歳して、目は右手を見る。
右手を右の耳にくっつけて更に伸ばす。右の腰・骨盤から右手を伸ばす意識。
このポーズ自体が結構キツイけど(笑)」
「三角のポーズは重心を沈めてくれるので、無用に動揺することが減る。
武道だとそのまま順突きなどの強化に使える」
「基本のストレッチである程度体側が目覚めてきたら、次は動きを与えること。
背骨を横=左右に動かすと、自分の外側とのコミュニケーション能力が向上しちゃう。
でも、多くの現代人は背骨が柱のように固まっているから、胴体も箱のように固まったまま横に動いちゃうわけさ。
それだと一見大きく動けているように見えるけど、内部に効かない。
背骨を一本ずつバラバラに横に動かしていきたいわけ。
最初は『合蹠(がっせき)シーソー』がその感覚をつかみやすいからおススメ。
合蹠から首を左に傾けると、頭の重みで背骨が一本ずつ左に傾いて行っちゃう。
右側の肋骨はアコーディオンのように開いて行き、左側の肋骨は縮む。
体重が完全に左の骨盤(股関節)に乗ると、上体が左側に倒れちゃう。
そこから右膝を床に着けて、右股関節に体重を移していくと、背骨も一本ずつ起き上がってリカバリー。
合蹠に戻ったら、そのまま首を右に傾けて右に向かって倒れて行く。
この動きの繰り返し。基本の片足シーソーの横バージョンだよね。
本来とっても氣持ちのいい動き。目を閉じてやった方が、背骨や肋骨の動きがハッキリ感じられる。
でも、家具など周りの危険物を片付けてからやるようにご用心。
氣持ちのいい顔のまんま、テーブルとかに頭をぶつけると、とっても痛いから(笑)」
「女性は本来横の動きが得意。男性の骨盤は鋭角だから前後運動に向いている。
女性の骨盤はワイングラス型で丸みがある。だから滑らかな左右運動がしやすい。
女性が男性におねだりするときは、横からしなだれかかるのが定番」
「男性は脇から責められると弱いもんね。
前後の方が得意だけど。だから壁ドン!で告白するのは男性の方。女性が男性にやっても絵にならないよ(笑)。
体側が動きを取り戻していくことで、マイナス感情も解放されていくし、内臓の働きも良くなっちゃう。
体側の肋間筋は呼吸筋でもあるから、自然に呼吸も深くなるしね。
横の動きは免疫力も高め、整えてくれるから、いいことだらけ」
「免疫の本質は、『自己と非自己=他者』を区別すること。
体内に細菌などの異物が侵入すると、免疫が排除しようとして攻撃する。
この区別が時々狂うことがある。
花粉症などは免疫の暴走。本来は無視してよい筈の無害なスギ花粉に免疫が過剰に反応するから、アレルギー反応が起きる。
更に厄介なのが、自分の身体自体を『異物=他者』とみなして攻撃する膠原病(こうげんびょう)などの自己免疫疾患」
「反対にエイズは免疫を低下させる病氣だもんね。異物を異物とみなせなくなるから、ばい菌がフリーパス状態で入って来て、身体を侵していっちゃう。
どっちもまずいよね」
「体側の感覚が曖昧な人は、マクロレベルで免疫疾患と似たパターンの問題を引き起こしやすい。
すなわち他人の言動に過剰に反応してトラブルを引き起こしたり、周囲の意見に振り回されて自分を見失ったりと言う具合である」
「すべては身体に現れるってことか。
精神的な悩みにも通じるモノがあるかも?
無駄に悩んでいる人って、自分じゃどうにも出来ないこと=他人の事情や氣持ち を何とかしようとして、時間とエネルギーを浪費しちゃうもんね。
そのくせ、自分の力でコントロールできること=自分の問題 については、やれることもやろうとしない。
体側の感覚がハッキリしてくると、『自分で何とか出来ること』=内側、『自分ではコントロール出来ないこと』=外側の区別も明確になって、悩みも減るかもよ?」
「もちろん、コントロール可能とコントロール不能の区別は、絶対的・固定的なモノではなく、人によっても違う。
同じ人間であっても、時と状況によって揺れ動く。だからこそ流動的に動ける身体を創っていくことが必要。
体側の動きにも、胴体の幅の中で上下に動かすパターンがある。いわゆる『伸ばす・縮める』の動き。
男性はこの動きが得意な人が多い。
立位で左の肋骨と腸骨を引き離すと、左の体側が縦に伸びる。この時重心は完全に左股関節に乗っている。
カウンターバランスで右の肋骨と腸骨が接近し、右の体側が縮む。右足が少し床から浮く。
続いて右の骨盤と肋骨を引き離すと、右の体側が伸びて体重も右股関節に乗る。
左体側が縮んで、左足が浮く。
どちらの動きも膝を伸ばしたまま行う。
椅子に座ってやっても良いが、どちらも動きが胴体の幅からはみ出さないように注意。
両手に重りを持って、交互にその重みに導かれるように動くと不自然な力みが抜ける。
水を入れたペットボトルでもよい」
「合蹠シーソーのような、背骨を湾曲的に横に動かす動きよりも、縦運動の方がスピーディー。
どっちも出来た方がいいよね。
「サッカーのドリブルで相手選手を抜いていく動きや、武道で相手の攻撃を捌くには、特に体側の縦運動が役立つ。
自分がやっている仕事の特徴=他所とどこが同じで、どこが違うのか?も自覚していないと、仕事も上手く行かない。
つまり、ここでも『境目』が重要になる。
去年の最後のブログ記事『ブリージングストレッチが生まれた日』は、ブリージングストレッチを例に、自分が実践している・指導しているメソッドを内側と外側から把握することがテーマだった。
残念ながら反響はイマイチだったが(笑)」
「ピンと来なかった人が多かったみたいだよね。あの内容をもっと『身体の具体』に踏み込んで考えると、今回の記事のようになると。
パクリって言われないためにも、自分がやっている仕事(メソッド)を内側と外側から客観視することは大事だよ。
いわゆる『メタ認識』ってヤツ?斬新な発想にもつながると思うし」
「歴史上の人物でも、革新的な発想をした織田信長や坂本龍馬などは人氣がある。
歴史小説家の司馬遼太郎は、
『龍馬は常に発想が出やすい土地に自分の身体を運んで行ったから、他の志士が出来ない発想が出来たのではないか?すなわち発想の立脚点がキーポイント』
と分析している」
「どういうこと?」
「幕末の日本は鎖国をしていたから、長崎だけが海外に開かれた窓口だった。
龍馬はもともと商人階層の出身で、海外と貿易をしたかったから、長崎に自分の会社=海援隊の本拠地を置いた。
他の志士たちは、倒幕=政治を考える・論じる時は、常に日本の内側の事情しか考えられなかった。
龍馬は長崎という、日本と海外の境目のポジションに居たから、日本を内側と外側の視点から同時に眺めることができた。
『だからこそ龍馬にあっては、大政奉還などのとらわれない発想が、スムーズに生まれて来たのではないか?』と司馬遼太郎は語っている。
独創的な発想を得る方法は、なかなか明確に語れるものではないが、『モノゴトを内側と外側から同時に眺めてみる』ことは、一つの鍵ではないだろうか?これも陰陽。
そして次なる時代の覇者は、外側と内側の『境目』である辺境の地から躍り出ることが、しばしばある」
「ポジショニングが大事ってことだね。整体も武道も、正しいポジショニングをしないと技が決まらないもんね。
龍馬のように大きな仕事をした人たちは、その時々の正しい『立脚点』を見抜く『感性』と、そこへ自分の身体を運んで行く『行動力』を併せ持っていたわけか」
「もちろん感性も大事だが、『然るべき時に、然るべき場に居た』ということ自体、『運がいい』ことの証明。
運は身体で運ぶモノ=運身(うんしん)。
特に背骨を動かすことが運氣を動かすのに重要なので、今年はますます背骨を練って行こう」
(リンク)
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(虎徹のワン!ポイントコメント)
ブリージングスタッフ・ふぐじろう先生のペットの虎徹です~。
写真は、お散歩の途中でふぐじろう先生との間合いを測るボクです。
ペットと飼い主の関係も、常に距離感を考えなければなりません。
間合いは教育や習い事においても重要です。
日本の『道(みち)』と名の付く習い事においては、先生は弟子に稽古の意味についてほとんど説明しなかったし、手取り足取り教えることも余り無かったようです。
自分がやっている稽古の意味について、やたらと知りたがる弟子は『もう来なくていい』と言い渡されたとも聞きます。
先生が伝える『型』に隠された意味をつかむには『感性』が必要です。
その感性が無い者に言葉だけで説明しても無駄・有害になるからです。
しかし、このやり方を徹底すると、余り多くの弟子は育たないし、教育に膨大な時間がかかります。
諸事スピーディーな現代にあっては、そのまま実行することは難しいでしょう。
『経営』も考えなければならなくなった現代では、習い事もカルチャーセンターが主流になりました。
生徒はお客さん扱いで、情報は山ほど与えてくれるし、先生は手取り足取り教えてくれます。
これが行き過ぎると、生徒が先生に『依存』することが当たり前になります。
情報だけ求めて、あちこちの教室をジプシーのように彷徨う人も増えました。
古久澤先生は、
『やたらと答えを知りたがる生徒は伸びない。ヒントを貰いたがる生徒は伸びる。
自分の中では自分なりの答えを出しているが、それを確認するために質問する生徒が一番良い。
そういう生徒が増える方向に教室を導くことも指導者の仕事だ』
とおっしゃっています。
もちろん初心者が答えを貰いたがるのは仕方ありません。
けれでも自立した生徒が多い教室なら、その空氣を吸うことによって、初心者もだんだん変わって行く筈です。
昔風の突き放す一方の教え方も、カルチャーセンターのようにいつまでも手取り足取りで教える世界も、そればかりでは行き詰ります。
『健康法教室とは、<健康>と言う明確なテーマに向かって、自立した先生と生徒同士が共に歩む場所。
指導者が行うべきは、その時・その場・その生徒にとっての適切なサポート』
というのがブリージングの考え方です。
古久澤先生の師・伊藤昇先生も、『人に対する距離感』をキーワードにされていたそうです。
『ベタベタしすぎてもダメ。不親切すぎてもダメ。自分が与えられた役割を、目立たず、他の邪魔をしないように果たす』
ことを弟子に求めていたとのことです。相談者さんも目指してください。
It's not your business. 「大きなお世話だ!」と言われないようにしましょう。
つづく