トリジローのTHE BEATLES全曲解説 & My Best Ranking -7ページ目

トリジローのTHE BEATLES全曲解説 & My Best Ranking

THE BEATLESファン歴は、約半世紀にて、また、研究し続けて、早40年の、トリジローと申します。

まだ、誰も成し得ていない、全213曲+のランキングと解説を、同時に、そして独自に掲載していきます。

これぞ、究極のTHE BEATLES解説にも挑みます。

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★59位

【Martha My Dear】

<THE BEATLES(WHITE ALBUM)>1968.11/22=2:28=

 

正にポールらしさ全開で、ポールの天才性を感じさせる、ポップス職人が真骨頂を発揮した名曲である。

 

そして、この世の中で、ポール・マッカートニーという人しか書けない曲でしょう。

 

恐らく、ポールの弾くピアノ曲で1番難しい曲である。

そう、この曲は、ポールのピアノの練習中に思い付いた曲でもあるのだ。

この時代、著しい成長ぶりを見せたピアノの腕のポールだが、両手弾きの難しい技術があるので練習しているうちに生まれたらしい。

なので、今でも必ずしも、いつも完璧に弾ける訳ではないので、ポールのソロ公演でも2022年の今でもライブ演奏したことはない。

但し、今でもピアノの練習になるからと、本番前のリハーサルでは弾くことがあるようだ。実際、日本公演(武道館)のリハでも弾いていたのだ。

 

「WHITE ALBUM」に収録されている曲ですが、ポール以外の他のメンバーは録音に参加していません。

ポールは、ピアノ、リッケンバッカー4001S、フェンダー・エスクワイア、ドラムス、ハンド・クラップと、ブラスとストリングス以外は全部、自分で演奏しています。

もはやワンマンレコーディングで、マルチプレイヤーの域に達してしまっていますが、こういうことも、メンバーの絆を削いでいく要因ともなるのですから難しいものですね。

ブラスとストリングスアレンジは、ジョージ・マーティン。

 

曲のタイトルにある「マーサ」とは、当時、ポールが飼っていたシープドッグの名前です(その名前はポールの"音楽の女神"にちなんで名づけられたとも言われています)。

飼い犬マーサを歌いつつも、気持ちがすれ違う当時のポールの恋人ジェーン・アッシャーとのダブルミーイングなのかも知れませんね。

 

構成は意外と複雑で、イントロの出だしは4分の3拍子で、それから4分の2拍子になって、4分の4拍子になっていく。

でも、不自然な感じが全然しない。さすがだよね、曲作りが上手い。

コードも複雑である。書き出すと、相当な文字数になるので省略するが、まあ、面白い。

 

Drもポールが叩いているというのが定説だが、フィルの入れ方がリンゴそのものなので、リンゴ説も未だに可能性が残っている。

どちらも存命なのだから、確認して欲しいものである(もう覚えてないか?^^;)。

 

録音は、1969年の10月4日に、たったの1テイクで完成させてしまった。

しかも、その日のうちに、オーケストラパートまで録音完了しているのだから、その集中度が凄いとしか…。

良く5日に、ギターとベースをオーバーダブして完成。7日には、ミックスまで終えている。

 

今は、オーケストラををミックスしていないデモを聴くことが出来るが、これがまた素晴らしい。

ポールのピアノが全面的に聴ける音源だからだ。

↓↓<デモ音源>↓↓

https://www.youtube.com/watch?v=d7ZuEE44KhQ

 

 

 

 

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★60位

【Julia】

<THE BEATLES>1968.11.22=2:54=

 

ソロでは、すべてをさらけ出すようになる、ジョンのBEATLES時代のもっともパーソナルかつ繊細な表現で描かれた小作品の代表曲。

 

ジョンのアコースティックギターとVoのみで構成された楽曲で、ジョン以外の他のメンバーは演奏に参加していないBEATLESの唯一の曲でもある。

(但し、デモ音源では、ポールのハーモニーが入っているし、ポール自体はジョンの録音時にコントロールルームに居た)

 

“Dear Prudence”の次に、このジョンの完璧なスリーフィンガー奏法が聴けるのが“Julia”である。

ただ、この曲の方は、“Dear Prudence”のような怪しさというより、儚さや空虚さが色濃く出ている。

力を抜いたジョンのVoは、何とも寂しい。

 

それもそのはず、この曲は正に、ジョンの生涯のコンプレックスである母Juliaを歌った歌だからである。

(幼少期に両親は離婚し、ジョンはミミ叔母さんにしっかり育てられますが、ティーンエイジャーになった頃に実母と再会し、叔母とは違う模倣な実母と良くなります。そして、ジョンにバンジョーを買い与え、音楽のきっかけすら作っています。やっとコンプレックスだった母子の関係を取り戻した矢先、17歳のジョンの目の前で交通事故で亡くなります。衝撃でした。ジョンは言います。“僕は母親を2度失った。1回目は離婚して離れ離れになった時、もう1つは実際に死んだ時だ”と)

そして、この曲は、その亡き母を想う歌であるのと同時に、ヨーコの歌でもあるとジョンは語っている。

ジョンが語るには、“ジュリアは僕の母親だ。でもこれはヨーコと母親を混ぜてひとつにした一種の合成だね。インドで書いたんだ”と。

歌詞には「Julia, Julia, Ocean Child(つまり“=洋子”)」という、母Juliaからヨーコと繋がるように、生涯、マザーコンプレックスだったジョンの母からヨーコへの流れを歌っているのかも知れません。

歌詞の表現方法も芸術的で、ジョンの余りに豊かな想像力。詩人ジョンの静かな結晶がここにあります。

 

そんな歌詞であるので、曲自体もVoもシンプル(時には弱々しく)に流れていく。

 

キーは「D」だが、ギターの2フレット目にカポタストをつけて、キーが「C」の形で弾いている。

ボーカルとギターを2回ずつレコーディングしてダブルトラッキングにしている。

 

まずは、圧巻なのが、このスリーフィンガーのダブルトラッキングが寸分の狂いもなく弾かれているのだ。

これには、ジョンにスリーフィンガーを教えたドノヴァンも驚いたという。ジョンのリズム感の良さはギネス級である。本当に凄いのだ。

Voも見事だが、“Julia~”の~aにまた最初の“Julia~”が被さってくる。この何気ないセンスには、こちらも繊細な気持ちにさせられてしまう。

 

録音は、たったの3テイク。あっという間に作ってしまった。

この3テイクに、ジョンのギターとVoをダブルトラッキングしたものが完成品だ。

 

WHITEALBUMのB面ラスト2曲であるポールの“I Will”とジョンの“Julia”を立て続けに聴くと、何とも言えないくらい心安らぐのです。

すぐにはC面には行かない。この余韻を残しておきたいから。

 

 

 

 

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★61位

【And I Love Her】

<A HARD DAY’S NIGHT>1964.7・10=2:28=

 

若き時代のポールの、初期のバラードの代表作。

 

ガットギター(クラシックギター)で始まるイントロは印象的で、Voメロディの美しさ・素晴らしさは言うまでもなく、とことん削ぎ落としたアレンジが秀逸で、音と音の間に、歌詞にあるよう“暗い空に輝く星たち”の情景が浮かぶ。

しかも、素晴らしいと思うのは、この美しいラブソング曲にも関わらず、ポールの特徴づける甘さが一切ないことだ。良く聴けば分かるが、実はハードでドライなのだ。

これは、ジョンの影響も少しはあるだろうが、アルバム「A HARD DAY’S NIGHT」を貫くトーンであり、質感であることをポール自身が知っていたからだと思う。

 

そして、最大のアレンジの効力は、間奏からの転調(半音)であろう。

半音転調といえば今では良くあるパターンだが、この曲の場合、意味合いも深さも違うのだ。

それは、どういうことかというと、まず、この曲のキーは、E(ないしC#m)であるにも拘らず、イントロのギターはいきなり、F#mで始まるのである。

驚きの「Ⅱm」である。

で、1コーラス目の終わりがEなのですが、間奏はイントロと同じ構成なので、転調はF#mから半音だけ上がってのGmになる。しかし、譜面上は3度上がっていることになるのである。

つまり、E→Gmは、「Ⅲm」になり、転調前のコードの構成音になるので、まったくもって無理のない、自然な転調なのである。しかも、無理がないゆえに転調のインパクトは更に増すのだ。

ちょっと専門的な話で恐縮でしたが、ここまで考えて、この曲は作られているのである。

この時、ポール・マッカートニー、21才。恐ろしくらいの才能ぶりであるのだ。

 

そして、“I Love You”とは歌わず“I love her”と歌うポールのセンス。

更に、“I love her”を、そのまま歌った方がスムーズなところを、あえて“And I love Her”と“And”を付けて歌うことでアクセントを付けて、響きに変化が生まれさせる、さり気ないセンス。

 

ジョンは、ミドルの部分のメロディを一部手伝ったと言っているし、ポールも認めている。

あと、クラシックギターの単音リフはジョージが考えたといい、ポールもそれを称賛しているので、ポールの楽曲ではあるけれども、やはり完成された曲は、BEATLESなんだなと思わさせるのである。

ジョンは、“And I Love Her”は、あの“Yesteday”の前触れになる曲だと言っているけれど、“Yesteday”はポールの演奏+弦楽四重奏だけだから、この曲とは根本的に違うのである。

確かに、この路線が“Yesteday”に繋がっていくことは間違いないだろうが、この曲の方が圧倒的に“BEATLESらしさ”があるのである。

 

美しいクラシックギターはジョージのセンスが際立つし、J-160Eのジョンのギターもハイポジションとローコードの使い分けのセンスが抜群だ。

ドラムの代わりにリンゴが演奏しているのはボンゴとクラベスですね。この演奏にしたリンゴのセンスも賞賛モノですね。

 

ラストのジョージは、C→F→E→Dと弾くが、ジョンのコードはGm→F6で、最後だけDにしている。

Dで終わらせるセンスも凄いが、Gm→F6を繰り返し弾いているのだが、DはGmの5度の音であり、F6は6thの音になっている。凄いなと思う。

 

この曲や“Yesteday”などは、BEATLES通になればなるほど敬遠される傾向があるが、凄い曲であり、改めて聴けばやはり名曲なのだ。

 

 

 

 

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★63位

【Ask Me Why】

<PLEASE PLEASE ME>1963.3/22=2:24=

 

メロウに秀でた楽曲を、素晴らしい歌、コーラス、演奏の3拍子で揃えたジョンの初期の名曲。

 

コーラスというものが、曲の一部なんだということを如実に教えてくれる曲。

デビューアルバムで、このクオリティは凄いとしか言いようがない。

 

短いイントロから、いきなり聞こえる3声のハーモニー。

デビュー時のビートの効いたR&Rサウンドと共に、BEATLESのイメージを決定づけたコーラスグループとしてのビートルサウンドである。

その功績が大きい曲であると思う。

 

本当に、ジョンの翳りのある少ししゃがれたビターな声質は、ポールにはないほろ苦さがある。

男でも惚れてしまう歌声だ。

 

シンプルな曲調と思いきや、バース部とサビ~コーラスの部は意外と構成が入れ組んでいて、ジョンの後の資質も垣間見れる。

 

演奏の方は、ジョージのバッキングが良い。ジョンのストロークとの絡みも好きだ。

リンゴは、リムショットでボサノバのような軽快なリズムを刻んでいて、センスが素晴らしいなあ。

 

そして、デビュー直後のBEATLESのこの曲の驚きの点が、もう1つある。

エンディングのコ-ドが、キーはEながらも、G#m7→B9(またはEm9)で終わっている点だ。

分散したアルペジオで弾いて終わる。

このお洒落な感覚をジョンはすでに身に付けていたのだ。

このエンディングは、もっと後にこの流れにしたのだろうが、ジョンがこの曲を作ったのが、17才の時というから驚きだ。

但し、恐らく最初はこのコードで終わってはいなかったはずだ。数々のライブに次ぐライブで、レパートリー不足になった時にJazz系のカヴァーをしたり、いろんな音楽と接したことで、ジョンの作曲能力は(ポールもだが)、向上していったのだろう。17歳当時は、ジョンはまだバンジョーのコードしか知らず、ポールにギターのコードを教わったりして、曲も一緒に作るようになるのだから。

 

更には、サビ前がEaugのコードを使っていたり、Aメロが13小節だったりと、デビュー直後から結構、複雑なことをやっているのです。

 

ジョンは、この曲を気に入っていて、1962年あたりのライブでは良く演奏している。

大ヒットとなった「Please Please Me」のB面曲ですが、メロウな分、A面にはならなかったけれど、シングルA面でも充分、通用しただろうと思う。

 

そうそう、ちなみにB面といえば、この曲が“Please Please Me”のB面としてシングル発売された時には、BEATLESはまだ日本では“I Want To Hold Your Hand(B面は“This Boy”)”と2枚のシングルしかリリースされていなかった。

つまり、4曲しか日本では世に出ていなかったので、当時の日本のファンには思い入れが強い楽曲なのである。

 

 

 

 

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★64位

【You Won't See Me】

<RUBBER SOUL>1965.12/3=3:19=

 

失恋の歌だけに少し悲しげなVoで、モータウン風のサウンドが象徴的な、完成度の高いポールの名曲。

 

当時のポールの婚約者であったジェーン・アッシャーとの関係を題材としており、従来のラブソングからの変化が見られる楽曲の1つとなっている。

本作についてポールは、“いつもはギターかピアノを使ってコードから曲を作るんだけど、この曲はたったの2つの音から生まれたんだ。ギターの2本の高音弦の組み合わせでね”と答えている。

そう、ポールの得意技の1つであるクリシェがここでも登場してくるのだ。

 

この曲は、ポールの独壇場だが、まずはBass。

意表を付いた弾き方ではなく、あくまでコードプレイが主ではあるが、このコードの中で聴ける自由なランニングベースが圧倒的に素晴らしいのだ。

ポールのBassプレイの特徴はいくつもあるが、この見事なランニングベースがやがて、これ以降、特に70年代以降のロックプレイヤーの意識を変えていくくらいの革命となるのだが、ここまでのランニングプレイを見せた最初は、この曲であると思う。

もちろん、RUBBER SOULそのものからポールのプレイと意識は変わっていくのだが、やはり、この曲からだろう。

しかも、全編に渡ってベースが曲を支配している。

 

そして、ポールの弾くピアノもノリが凄い。全編に渡って曲を支えているのはピアノだ。

Voは、淡々と歌ってはいるが、ダブルトラックの概ねユニゾンで歌う感じがノリを出している。

 

そして、ジョンとジョージのスキャット風のコーラスが冴えわたっている。

ポールのメインVoへの絡み方も素晴らしいし、そのコーラスアレンジも見事だ。

何度も書くが、3人コーラスと、ジョン&ポールのコーラスは最高だが、ポール&ジョージも素晴らしいし、個人的には、時折に登場するジョン&ジョージのコーラスワークが結構、大好きなのである。

この曲では、ジョンのコーラスがかなり良い。

もっとも、この曲では、ジョンはメイン楽器は何も弾いていなくて、タンバリンしか叩いていない。なので、コーラスには力が入ったのかな?

とにかく、我の強いことで知られるジョンだが、この時期くらいまでBEATLESに関しては圧倒的に献身的であると擁護したい。

 

そして、ジョージの弾くストラトキャスターのザクっとした鋭利なカッティング(2拍4拍の)が楽曲に抜群の効果を与えていることも特筆だ。

 

コード進行も、Aメロでいきなりのクリシェが登場する。

AB7DAのコードに対して、

E→D#→D→C#の美しい半音下降の美しいベースラインのパターンが現れるのが堪らない。

 

ポールは、この曲の完成形が早くから描かれていたのだろう。たった2テイクで完成型となり、オーバーダブに入っているからだ。

 

この曲は、アルバム「RUBBER SOUL」の3曲目に収録されているが、冒頭の1、2、4曲目がどれも大名曲なので、アルバムを通して聴くと、少し損しているような気になる。

でも、曲調といい、この場所しかなかったのだろうし、それは正解でもある。そして、少しだけ隠れた名曲となることが、またマニアには嬉しいのである。

 

 

 

 

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★65位

【Back In The U.S.S.R.】

<THE BEATLES(WHITE ALBUM)>1968.11/22=2:43=

 

疾走感が最高で、グルーブもありつつPOPでもあるという、ポールの爆発的な象徴な1曲。

 

この曲は、ビーチボーイズの“サーフィンU.S.A.”が、チャックベリーから“Sweet Little Sixteen”の盗作だと訴えられたサウンドをパロディにしている曲である。

歌詞も、当時のソ連(現ロシア)を皮肉ったような内容で、アメリカの“我が心のジョージア”とソ連の“グルジア(現、ジョージアと発音)”を引っ掛けていたりしている。

 

途中に入るビーチボーイズ風のコーラスに付いて、ポールは、曲の書き始めにもらったインスピレーションに敬意を表して、「ビーチボーイズ・スタイルのハーモニーを加えたんだよ」と発言している。

ポールは、ビーチボーイズのメンバーとは仲が良いのである。

 

この曲のレコーディング中に、ポールがリンゴのDrにたびたび注文を付けていたら(しかもミスをからかわれた)、リンゴがキレてスタジオを飛び出し、一時的に「脱退」することとなった。

例の「リンゴ一時脱退事件」である。

その事態にもレコーディングは中止せず、この曲のDrはポール自身が叩いてる。おいおい(^^;。

まあ、一時脱退は、公には極秘とされたのもあるけどね。

なので、ジョージはギターだが、ジョンがベースを弾いてレコーディングをすることとなった…。

そうそう、ジョンのベースは、フェンダーの6弦ベースである。そう、同アルバムの、あの“Helter Skelter”などと同じであるが、WHITE ALBUMでは、ポール以外のメンバーがベースを弾く曲が多い(ポールのピアノやアコG曲が多いため)。

で、全部、このフェンダーの6弦ベースで弾いているのである。それもそのはず、ギターと同じチューニングにしてあったため、弾きやすかったからであろう。

 

ポールのVoは、ジェリー・リー・ルイスを意識したようだが、ノリが最高だ。

ノリが最高と言えば、ポールは、Drもピアノもリードギターも弾いて、ノリノリだ。

リンゴが出ていったと言うのに、思いやりがないのか、プロフェッショナルなのか分からないくらい天然というか、尖っていった時代だったのかも知れないね。

 

1984年に「プレイボーイ」誌のインタビューの中で、ポールはこの曲についてこんな風に語っている。

「あれは同時に、分断している相手に手を差し伸べるという意味もあったんだよ。僕は今もそういう意識を持ち続けている。だってクレムリンにいる指導者たちは僕らのことをよく思ってなくても、あの国には僕らを好きな人たちが大勢いてくれるわけだからね。キッズはみんな僕らを好きでいてくれる。それは僕にとっても、未来の人類にとっても、とても大切なことなんだ」

 

余談だが、2004年のロシア公演で、かのプーチン氏の前でも、この曲を披露。

ロシアでは大人気のBEATLESナンバーなのである。

しかし、ロシアのウクライナ侵攻で、ポールはSet Listから外した。ウクライナ国旗のギターで登場した。プーチンへの痛烈なメッセージである。

 

 

 

 

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★66位

【This Boy】

<Single & PAST MASTERS Vol.1>1963.11/29=2:15=

 

ジョンとポールだと世界最高峰のデュエットが聴けるが、ジョンとポールとジョージの3人だと世界最高峰のハーモニーが聴ける。

そんなBEATLESの美しきコーラスの中でも1番素晴らしいと思えるコーラス曲である。

 

更に、BEATLES自身が、公式レコード上で、初めて3声コーラスを披露した楽曲でもあります。

高音域がポール、中音域がジョージ、低音域がジョンと、後の彼等の1番多くある配列構成の三声コーラスの始まりである。

 

そして、サビで歌うジョンのソロ部分はダブルトラッキングだが、この狂おしくも切ない歌声を聴かせるジョンのVoは60年経った今でも胸に詰まる。

コーラスも含め、スモーキー・ロビンソンなどから影響受けたソウルフルな歌唱。まだ内省的なスタイルになっていない頃のジョン・レノンのVoは、紛れもなく素晴らしいのだ。

この曲は何と言っても、それに尽きます。

 

つまり、彼等のコーラスの美しさと、この頃のジョンのボーカルの熱量を、両方とも心ゆくまで堪能できる作品は、この曲をおいて他にないという特別の曲でもあります。

 

曲のイントロのジョンのJ-160Eのカッティングから、3連のジョージのリズムギターの絡み具合がまず見事なのだが、このギターで曲の印象が決まっている。

ジョージが、エンディングに至る箇所だけで弾いている、ゆったりとしたオクターブ奏法も、曲のラストに相応しい流れになっている。

 

同日に録音された「抱きしめたい」と合わせて、BEATLESにとって初めての4トラックレコーディングになった曲である。

「抱きしめたい」と同じく第17テイクまで録音されており、第15テイクでバックトラックを仕上げて、第16、第17とコーラスのオーバーダビングを施している。

サビのラストのCry~♬から~Aメロは、編集して、繋ぎ合わせていると思われますね。

 

シングルB面、さらにオリジナルアルバムには収録されていないという不遇な立ち位置の曲ですが、真のBEATLESファンには人気が高い。個人的にも大好きである。

それと、1963年当時、まだ日本ではアルバムが1枚も発売されていなかった時期の、A面B面を合わせても4曲しかレコードがなかった時のシングルB面曲なので、リアルタイム世代には圧倒的にインプットされている曲でもあるのだ。

A面は、ご存知「抱きしめたい」なので、当時としては、何度も何度もA面を聴いた後に、この“This Boy”を聴いた時の感動はひとしおだったことだろう。

 

余談だが、当時の邦題は「こいつ」。

今なら200%付けない邦題だが、センスがなさそうで、意外や、反面的な意味で、センスがあったのかも知れないね。

 

1981年に発売された「The Beatles EP Collection」のEPにようやくステレオバージョンが収録された。

 

 

 

 

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★67位

【Girl】

<RUBBER SOUL>1965.12/3=2:30=

 

イントロなしの冒頭の歌い出しの"Is there anybody…"から始まる最初のジョンの歌声のところから、男でも何かグッときてしまいますね。

 

“Girl”は、物悲しい旋律で、昔のイタリア映画を思い出させるような雰囲気です。

しかし、レコーディングは、とても楽しく…というより、悪ふざけのような感じだったようだ。

途中に入るコーラスの“Tit”と歌うところは、実は“おっぱい”と言っていて、レコーディングを楽しんでいたと、ジョンがジョークで言うだけでなく、ポールまでそう発言してるのだから本当だろう。

そして、例のあの印象的なジョンの“Girl”と歌う前の、息遣いは“マリファナ”を吸う時の音“などと言ってみたり。

まあ、楽しんでいたなら、充分あり得ることだが、そこはちゃんと雰囲気を出すアレンジとして考えていたはずである。でなきゃ、あんな皆をうっとりさせることは出来なかったはずだろうから。

 

とにもかくにも、ジョンにとっては、これほど本格的なバラードは初めてだったと思う。

もちろん、それまでも、“If I Fell”や“This Boy”などの曲もあったが、ここまで練られた作品はなかった。

それは、恐らくポールの、“Yesterday”や“Michelle”に対応する曲を作ろうと思ったからではないかないかと考えるのだ。

非常にジョンにはしては珍しく“ポールを感じさせる曲”“ポールが書くような曲”でもあるからだ。

(実際、ポールは、”the pain and pleasure”とか”a man must break his back” の部分は書いたようだ)

事実、“Michelle”の8日後のレコーディングだし、この2曲は、良く比較対象になったものなのだ。

どちらが良いか、優れているかは、個人の好みなので分からないが、ジョンの才能の非凡さと成長は、間違いなく感じることは出来る。

 

“Girl”は、女性賛歌の曲であると同時に、キリスト教を一節を懐疑的に表現した部分もある。

 

ジョンは、自分の声が嫌いだと発言していますが、自分の声が武器になることも知っていた。

BEATLES後期は、声の武器で活かす曲を書くことも多くなっていったことも事実だと思う。

 

ジョンの160-Eのギターは相変わらず綺麗なサウンドで弾いている。

そう、高い音で鳴っているのは、8フレットにカポタストを付けて、Ebの曲をGで弾いている。

ジョージは、12弦ギターを2本オーバーダビングしている。ちょっとしたセンスが感じられる。

ポールのBassはオーソドックスだが、1音を1拍半で弾く部分と、1拍で弾く部分があり変化を付けている。

 

こんなに楽器の音数が少ない録音にも関わらず、何も物足りなさを感じない。これこそがアンサンブルなのだ。

 

ジョンは、この曲の15年後に“Woman”を書くが、楽曲的にはポールの“Here, There And Everywhere”の影響下にあるけれど、やはり歌詞的には、この“Girl”の大人版と思えてしまうのよね。

 

 

 

 

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★68位

【Eleanor Rigby】

<REVOLVER>1966.8/5=2:04=

 

余りに有名な、コンチェルト・ストリングスを使ったポールの傑作。

 

BEATLESの誰も演奏していない(ポール自身も)初めての曲となったこの曲は、良質の短編小説のような、古き良きイングランドを想像させる詞と曲調で、ケルトの基盤とクラシックを融合させた斬新性が素晴らしい。

 

ポールは当初、アコースティックギターで演奏していたが、ジョージ・マーティンから、ある提案を打診される。

“Yesterday”は、当時、画期的な弦楽四重奏をバックに歌ったが、この曲は、2組の弦楽四重奏、つまり、8人のストリングス奏者によるバック演奏にしたいと。

ポールは、バラード系は常に甘くなり過ぎないようにアレンジしてきた経緯(ロックバンドであるから)から、ヘンリー・マンシーニのようにはしたくないと難色を示す。

話し合いで、 “とがった音にして欲しい”というポールの出した条に沿って進められることになった。

ジェフ・エメリックは、掟破りのマイクを奏者の目の前まで置き録音しようとして、プロの弦楽奏者から反発を受けるが、エメリックも引かなかった。音への執念である。

最終的に、雇い主のジョージ・マーティンが一喝して、強引に録音することになったというエピソードがある。

しかし、これが功を奏し、非常に効果的に、硬質のストリングスを後世に残すことが出来た訳だ。

非常に緊張感のあるストリングの動きなのである。

 

マーティンは、バーナード・ハーマンが好きで、フランソワ・トリュフォーの「華氏451」や、ヒッチコックの「鳥」からインスパアされていると述べている。

 

一時は、コーラスも全部ポール1人でオーバーダブしたのでは?という見方もあったが、3部コーラスは、しっかりジョンとジョージである。

ジョンが中で、ジョージが下である。

この冒頭の3声コーラスとストリングスの融合は、ロック音楽、ポピュラー音楽が芸術の域に達したことを証明した瞬間でもある。

 

歌詞に付いては、ポールとジョンで発言が食い違うが、70%以上はポールであることは間違いないだろう。

孤独な人々の寂しい生活に対しての物語性に富んだ、素晴らしい歌詞である。

長くなるので、ここでは割愛しますが、「エリナ・リグビー」という名前も、歌詞に登場する「ファーザー・マッケンジー」も諸説あるので、どれが正解か分かりません。

ポールもジョン自身も分からないのだから、分かりようがありません(笑)。

 

楽曲としての素晴らしさもさることながら、ポールは、この曲からシリアスな方向性の転換にもなった転機の曲ともいって良いだろう。

 

 

 

 

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★69位

【Sexy Sadie】

<THE BEATLES>1968.11/22=3:15=

 

人間の感性を何処まで磨けば、こんな曲が生まれるのだろうという見本のような楽曲。

 

インド時代に、マハリシが同行した女性(女優ミア・ファロー)と性的関係を持ったとか、BEATLESの金が目当てだとかの噂がたった。

ジョージ以外の3人は、噂を信じてしまい、キャンプを出て行ってしまい、裏切られたと感じたジョンがそれを歌にした曲だ。

最初は、マハリシと実名が出てしまっていた歌詞だったが、ジョージから“Sexy Sadie”にした方が良いと強く言われ、変更した。後に間違いだということが分かり、ジョンもホッとしたことだろう。

ジョージは、この時のことを後年、曲にして発表している。“Not Guilty”である。

 

楽曲は、ジョン全開の楽曲だが、演奏は久々に4人均等のバンドらしいサウンドになっている。

その分、演奏自体はシンプルだが、こういう初期の演奏体形で、1968年の進化した音楽を奏でるのは実に、清々しく心地良い。音楽性も相まって、病みつきになってします。

 

まず、とにかく、ピアノの使い方が最上級に巧い。

イントロの出だしから、不協和音っぽい音が不安を煽り、ジョンの哀感のVoと混ざると、不思議な魔力に昇華していく。天才的なセンスだ。

しかも、ピアノ自体にエフェクトが掛かっているから、尚更、不思議さが増している。

さて、では、このピアノは一体、誰が弾いてるかで、未だに論争がある。要は、ジョンか?ポールか?ということなのだけど。

この不協っぽい感じは確かにジョンを感じさせなくもないが、このプレイ、ジョンに弾けるだろうか?…これは、ジョージ・マーティンもこんなプレイはしないし、どう考ええも、ポールしか有り得ないんだが、いかがであろうか?

 

コーラスもエフェクトをかけ、シンプルな楽曲の中にも、独特な効果を挙げている。

こういった彼等の、期待は裏切らないが、予想を裏切ったサウンドにはアルバム毎…いや、楽曲毎に、新鮮さを感じる。それもBEATLESの魅力である。

 

ジョージのギターは2本。7thを入れたり、コードの流れを外しながら弾いている。センスを感じますね。

これまた、素晴らしいのはポールのBass。

4ビートや、16分の速いフレーズ入れたりと多彩なプレイだ。

「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」からリッケンバッカーのランニングベースの大革命が起こるが、この「WHITE ALBUM」では、更に進化した複雑化したベースパートが存分に聴ける。

そうそう、この曲に関しては、りッケンではなくJAZZ BASSで弾いている。どうも、柔らかい音だなあと思っていたからね。

 

1968年7月19日、24日と数テイク録ったが上手くいかず、8月13日にようやく完成した。

つまり、相当に苦労した曲と言うことになる。練って練って、絞っていったのだと思う。

難航しても、上手くいかなかった曲もある(むしろ、そっちが多い)が、この曲は成功例だろう。サウンドが抜群だ。

ちなみに、最初の日のレコーディングされた第6テイクのスローVer.は「アンソロジー3」で聴けます。

 

 

 

 

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