医療者向け会員制サイト、m3.comでの連載が公開されました。
(m3.comのコンテンツ、医療従事者の経験・スキルをシェアする「メンバーズメディア」内での連載です)
今回のタイトルは
研修医になりたての方に向けて書いてみました。
非会員の方向けに、以下に本文を転載します。
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医師7年目、内科医のトリおんなです。
この連載では、若手内科医の日常をゆるりと綴っています。
前回は、CT検査に備えて驚きの「付け焼き刃」対策を講じた患者さんのエピソードでした。
今回は、4月から環境ががらりと変わって戸惑っている、(主に後輩の)皆さんに向けて書いてみました。
研修医になりたての頃
右も左も分からずつらい日々
先日、SNSでこんな投稿を目にしました。
「研修医になって2週間。仕事は多いのに、何もかもわからないことだらけで、うまくこなせない。とにかく辛い。もうやめたい(大意)」
投稿主は、大学を卒業して、研修医になったばかりの先生のようでした。
6年前、私自身が同じくひよっこ研修医だった時のことを思い出して、
『あるよねー! わかるわかる!』
という気持ちになりました。
「医学生」から「研修医」になり、ステージが一つ上がると、ものすごく環境が変わるものです。
それまでは教科書を読んで「医学」の知識を蓄えていれば良かったのに、いきなり「医療」の世界に放り込まれるわけです。
医学知識だけではダメで、患者さんや他職種の医療スタッフとの関係性にも気を遣いますし、書類作成、検査オーダーなどの事務的な仕事を任されることも多くなります。
かく言う私自身、特に4月の入職当初は…
・そもそも電子カルテの使い方がわからない
・また採血で失敗してしまった
・指導医の先生から「患者さんの退院が決まったから手続きよろしく!」と言われたけど、やり方が分からなくてパニック
という感じで、「何が分からないのかも分からない」状態でした。
そんな中で、担当患者として受け持つことになったおばあちゃんからは、
「まぁ~、若い子が来てくれたわね」
と、ちょうど良い話し相手ができた、とばかりに、長々と世間話を聞かされる日もありました。
『まだ仕事が山積みなんだけど…でも、大学の講義では「傾聴と共感を大切に」と習ったから、話の腰を折ってはいけないし…』
と、どうしたら良いのか分からなくなり、完全にキャパオーバーに。
トイレで一人になるたびに、なぜだか涙が出てくるような日々がしばらく続きました。
「何が分からないのか分からない」とき、
一番の対策は
そんな私から、冒頭の投稿をなさった研修医の先生に伝えたいのは、
『今の状態からは、いずれ抜けるよ! 大丈夫!』
ということです。
「何が分からないのかも分からない」状態から抜け出すために、私の場合、まずは、
「何が分からないのか」「何をするべきなのか」を一つずつ可視化することが有効でした。
たとえば、「退院の手続き」の仕方が分からなかったので、先輩に尋ねて、To Doリストを作りました。
「退院オーダー、退院指示、外来受診の予約、退院時処方の発行、退院診療計画書、紹介元への返書作成」
というような感じです。
これだけ「To Do」が細分化できたら、あとはもう、一つずつこなしていくだけです。
慣れない仕事に涙する日々
不意に泊まりにきた母の心遣い
そしてもう一つの特効薬は、とにかく、
信頼できる人に話を聞いてもらって、しっかり睡眠を取って、おいしいごはんを食べる!
これに尽きます。
当時、病院の近くで一人暮らしをしていたのですが、電話口で涙声だったのを母に見抜かれたようで、4月のある日、
「今日、トリちゃんの家へ勝手に泊まりに行くことにしたよ! 仕事終わったら帰っておいで」
と突然のLINEが。
その日、家に帰ると、母が出迎えてくれて、温かいごはんを作って待ってくれていました。張りつめていた気持ちがふっと緩み、涙がポロポロとこぼれたのを今でも覚えています。
そんなこんなで、慣れない仕事ばかりで辛かった4、5月を経て、6月頃には意外とケロッと仕事に取り組めていたように記憶しています。
そろそろ「五月病」シーズンかもしれません。
新年度、環境が変わってつらさを感じている方にとって、私の経験談が、何かの助けになれば幸いです。
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