内科医トリおんなのブログへようこそ☆
映画館で介助を断られた車椅子利用者の方が、その顛末(てんまつ)をネット上に公開し、議論を巻き起こしています。
すでにご存知の方も多いと思いますが、どうやら、
車椅子利用者の方が、車椅子専用席ではなく、あえて段差のある座席の利用を希望
→映画館スタッフに、車椅子の移動や座席への移乗を手伝うよう依頼
(この際、車椅子ごと抱えて運ぶような危険な行為があったのではないか……と推測する向きもあり)
→初めのうちは映画館スタッフが対応していたが、同じようなことがたび重なったため、スタッフが、映画館の段差や人員不足を理由に、他の映画館の利用を提案した
→利用者がXに投稿、炎上
というのが、一連の流れ……のようです。
(映画館側は公式に謝罪声明を出したそうです)
ネット上では、賛否両論あるものの、どちらかというと映画館スタッフ側の肩を持つ意見が多いように見えます。
・段差を車椅子ごと抱えて上がるのは危険。専門職ではない映画館スタッフが介助して、もし何かあったらどうするのか。
・あえて専用席ではない座席を希望するなら、映画館スタッフに頼むのではなく、自分で介助のマンパワーを用意するべき。
など……。
私も、正直なところ、上に挙げたような意見に賛成です。
普段、外来で診療をしていると、車椅子で来院される患者さんは相当数いらっしゃいます。
たいていは、ご家族やヘルパーさん、(あるいは、施設入所中の患者さんなら)施設看護師さんなどに車椅子を押されて、診察室に入ってこられるのですが、
たまーーーに、何回呼び出しても入ってこられないことがあり、
外来スタッフが待合室まで患者さんを探しに行くと、
「車椅子で一人だったから動けなかった」
と仰るのです。
トリ
「えー、車椅子なのにお一人で?!
ご自宅から病院まではどうやって来られたんですか?」
患者さん
「家から病院までは介護タクシーで送ってもらい、病院の玄関で下ろしてもらった。その後は、近くの人に声をかけて、待合室まで車椅子を押してもらいました。
息子に付き添いを頼もうとしたけど、都合がつかなかったからね〜、あはは」
たまたま善意の第三者がいてくださったから良かったようなものの、これは、あまり好ましい形ではない気がします。
「ちょうどそこにいたから」という理由で介助を頼まれた方だって、そもそもご自身やご家族の受診のために来院されていたはずで、その貴重な時間と労力を割いていただいたということになります。
また、万が一転倒した際などには、誰が責任を取るのか……という問題にも発展しかねません。
せめて事前に、介助者なしで来院される旨や、来院時刻などを病院に知らせておいていただけたら、
院内の移動に関しては病院側で介助人員を用意する、という方法もあるのでしょうが、
事前連絡なしではどうしようもありません。
(たとえば当院では、1日あたり1000〜2000人もの方が来院されるので、その場で拾い上げるのはきわめて困難です)
このような患者さん達の中には、近くに健康な家族・親族が住んでいらっしゃるはずなのに、一度も診察に同行してくださらないという方も珍しくありません。
こういう話を聞くと、何と言うか、モヤっとした気持ちになるわけです。
出かけた先でたまたま「善意の第三者」に出会えたら、それはもちろんすばらしいことですが、
最初からそれを当てにして、100%他力本願で行動するのは、ちょっと「違う」んじゃないかなぁ……と(伝わりますでしょうか)。
車椅子の方然り、他に何らかの障がいをお持ちの方然り、
なるべく不自由のない生活を送る権利をお持ちであること自体は疑うべくもありません。
ただ、その権利を「葵の御紋(←水戸黄門の)」のごとく振りかざすのではなくて、
サポートする側、すなわち「社会」に対して、最低限の配慮(今回の場合だと、まずは家族やヘルパーさんの付き添いを頼んだり、それが無理ならせめて事前に連絡する)をするのが、正しい「歩み寄り」の姿なんじゃないかなぁ……と思いました。
(もちろん、「社会」の側が、「なるべくサポートするよ!」という気持ちでいることも大切)
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