マージナル・オペレーション 03
芝村裕吏 しずまよしのり
苦しみは消してやれない。悲しみは数え切れないほどこれから積みあがるだろう。それでも、それでもいつかは、世界を変えよう。少年少女よ。僕の子供たちよ……
ゲーム「ガンパレードマーチ」の生みの親として知られ、「マージナル・オペレーション」(1巻 2巻)、「キュビズム・ラブ」(1巻 2巻 小説版)、「ガン・ブラッド・デイズ」「この空のまもり」、「イーストリビュート」など、最近は様々な作品で名前を見掛ける芝村裕吏さんの最新巻。
ニートの三十路男アラタが傭兵となり、中央アジアで活躍する物語を描いた1巻。
少年少女達を率いて日本に帰還し、東京で戦争を行った2巻。
今巻では、タイを舞台にアラタ率いる少年少女達の新たな戦いが描かれます。
物語の質は高水準で安定しています。
「子供使い」の通り名で呼ばれるようになったアラタ。
そんな彼の影響で、子供を兵士とする組織、そしてその為の人身売買が横行していた。
その流れを断ち切るべく、様々な勢力にアプローチするが――
軍事関係、タクティカルな物が好きな方向けの作品です。
途中までは、取材を踏まえたリアルなタイ紀行面白いな~とか、ジブリールとソフィによる挟撃は、なかなかに制圧力が高そうだな~などと泰然と読んでいたのですが……
あのエピソード以降がもう…………。
それを経た、最後のアラタの言葉には胸を熱くさせられました。
「ガンパレードマーチ」の名口上を思い出す、見事な芝村節。
世界からも親からも見放されてしまった子供達をどうするべきか、という答えのない問いの苦味が堪りません。
人間って生き物は本当に……
敵は賢いに限るという逆説的な命題がまた生々しくてイイですね。
今回は「ぎりぎり」に「マージナル」とルビが振られていましたが、実にマージナルでした。
「好きだから、変化しないでもいいんだよって気になるんだと思います。変化しないでいいよというのと、変化するなは、違う」
「まったく人を簡単に殺すもんじゃない。殺した中に師が入っているかもしれないから」
この辺りの節が好きです。
前回のスキンヘッドの梶田程のパンチ力ある笑いはなかなかありませんでしたが、「キシモトとはなんだったのか」というサブタイトルは思わず噴き出しました。
ジブリール好きの人には今巻も見所は多いです。
イトーさん派の私としては、次巻以降の展開に期待します。
何と、6月には4巻が出るばかりか、初夏にコミカライズされた物がアフタヌーンで連載開始だそうです!
これで更に人にお勧めし易くなりそうですね。
個人的には「この空のまもり」も漫画やアニメで観て見たいです。
全5巻の構想らしいですが、どんどん大きな話になって行く今作、最終的に芝村さんが何処に帰着させるのかがとても楽しみです。
個人的にはとてもイヤな予感もしますが、さてはて……
75点。