毎年、公立高校の受験日が直前にせまってくると、必ず思い出す生徒がいます。あの時から、公立高校を受験する二日前は、『入試の心得』という、ささやかな受験生の激励イヴェントを行っています。
あの時とは、丁度『Jリーグ』が設立された年なのです。サッカーのJリーグが始まったのは、1993年の3月なので・・・。今から、31年前になりますね。サッカー少年だったK君も、今は、46歳になっているはずです。
公立高校受験の前日の夜の8時ごろ、K君は、全身雨(実際はみぞれまじりの雨です)でずぶ濡れになって、教室にやってきました。そして、今にも泣きそうな声で、『僕、高校の下見に行って来たんだけど、高校には誰もいなくて、暗くなるし、雨も降って来るし・・・。』と言葉を詰まらせました。
どうやら、彼は、家を出る時間が遅くなり、高校の下見に行ったら、生徒たちは、皆、生憎の雨なので、早めに帰ったようでした。誰もいないし、雨は激しくなるし、暗くなるし・・・。心細くなって、私の所にやって来たのです。
私は、『K君・・・。明日、受験日なのに、風邪をひくぞ』。と言って、彼にタオルを渡し、びしょ濡れの頭や身体を拭かせました。そして、下の自動販売機から温かい缶に入った「ココア」を買ってきて、今にも泣きだしそうな彼に渡しました。
温かいココアを飲んで一息ついた、K君に、『先生が明日の受験で必ず合格する「おまじない」をかけてやる』と言ってから、指導机に座らせ、昨年の国語の入試問題と解答用紙を準備して、『いいかい、ここで、この問題を30分で解いてみろ』。と言って渡しました。彼は、不思議そうな顔をしながらも、問題に取り組んでくれました。入試の過去問は、何度も解かせていたので、30分ほどで難なく解き終わり、『先生終わりました』と言って差し出された答案用紙を受け取り、私は、解答を見ずにすべてに○記を付けて、大きく100点(60点満点ですが、あえて100点と書きました)と答案用紙に書き込み、それを、折り畳み、『これお守りだから、制服の内ポケット入れて、受験会場に持ってゆけよ。そして、緊張した時は、この答案用紙を握りしめなさい』。と言って、渡しました。それから、『普段通りにやってこいよ』といって、帰らせました。K君は来た時とは別人にように、にこやかに帰って行きました。
次の日、『先生出来ました』。といって、やって来た、生徒たちの中に、K君の爽やかな笑顔がありました。
あれ以来、このような、ささやかな「おまじないの儀式」は、今でも、ずっと続いています。
様々な子供たちがいます。「人の前では話ができなくなる子」「落ち着きのない子」「何事も、すぐに忘れてしまう子」「自分を表現することが下手な子」「いつまで経ってもミスをする子」「反抗的でしか自分を表現できない子」などなど・・・。そんな子供たちを、どのように指導するのか。私たちの仕事って、彼らや彼女たちを、常にじっくり観察することが最も大切なのではないかと思っています。観察することでしか、彼らを精神的に伸ばすことのできる『道筋』をつけることはできません。そして、彼ら(彼女たち)と接するときは、私は、出来るだけ優しく接することが大切だと思います。逆に、厳しくしなければならない時は、自分に対する厳しさを見せて、気付かせるしかありません。なぜかって?・・子供たちって、ガラスのように壊れやすい心を持っていますからね。
新学期を前にして、お母さんに連れられて子供たちが、何名か体験に来ています。その時、私は、子供さんに、『まずは、仲良くなろうね』。と、笑顔で話しかけることにしています。blog友達の大阪の白兎先生は、『私の仕事は耳を傾けることから始まります』と先生の著書「塾ごっこ」の冒頭に書かれています。そして、子供さんをお預かりするためには、最長、3か月ほど、お母さんと何度も話し合い、子供さんの「心の声を聞く」とのことです。
小さな学習塾(私たち)は、『子供たちを大切にすることが最も重要な事』と、思っています。だって、『子供たちは国の宝』なのですから・・・。
For Ingrid『切手のない贈り物』作詞 作曲 歌:財津和夫
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私からあなたへ この歌を届けよう
広い世界にたった一人の 私の好きなあなたへ
年老いたあなたへ この歌を届けよう
心優しく育ててくれた お礼代わりにこの歌を
知り合えたあなたに この歌を届けよう
今後よろしくおねがいします 名刺代わりにこの歌を
別れ行くあなたへ この歌を届けよう
寂しい時に歌ってほしい 遠い空からこの歌を
私からあなたへ この歌を届けよう
広い世界にたった一人の
私の好きなあなたへ
※子供たちとの出会いは、私にとって、砂浜でダイヤモンドを探すような出会い
だから、たいせつに たいせつに