『男の美学~Kさんのこと・・・。』 | fadoおじさんのblog~明日の君に~

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子ども達の未来を共に考える、小さな個別指導の学習塾の先生fadoおじさんのblogです。

 人はすべからく、物事を『損得』で考え、行動する。所謂、自分にとって損になることはしないし、間違ったことでも、自分にとって有利になる事には目ざとく従う。

 リンゴを見て、「これはリンゴです」。と言うと、自分自身が不利になるので、「これはバナナですよ」。と平気で言ってしまうのだ。全て保身のために行動する。しかし、この行動は、男(女でも)として、絶対にやってはいけないなんて、古いタイプの私なんかは思ってしまうのだ。そう・・・。自分にとって不利になっても、何事に対しても『筋を通す』と言う事。私は、これを『男の美学』だと考える。

 

 今では、もう既に死語になっている『男の美学』と言うものを目の当たりにした。

 

 1か月半ほど前のこと・・・。私が若い時(27,8歳ごろ)勤めていた、札幌の中堅学習塾でアルバイト講師をお願いしていた北海道大学の学生さんたちが、札幌、愛知、宇都宮、高崎などから十数名、東京の神田の居酒屋に集まり同窓会を開いた・・・。と、Bさんから、私のラインに写真付きで連絡が来た。僅か2~3年の付き合いしかない彼らが、40年の時を経て、一堂に集まるなんてことは奇跡に近いんじゃないかな。言い出しっぺは、当然、親分肌の3年ほど前、拙ブログに綴ったことがある、Bさんである。集まった皆は、私に会いたがっていたようだ。青春時代、わずか3年ほどの付き合いしかない彼らが、私のことを覚えていてくれるなんて、感動もの・・・。

 

 送られてきた写真を見ると、皆、笑顔の中から、学生時代の面影はあるものの、それなりに歳を重ね、素晴らしく素敵な男たちになっていた。まさに『男の顔は履歴書』である。

 

 先週、Bさんが、北海道観光にやってきた。北海道の友人の持っているスポーツカーに乗り函館をスタートして日本海側から小樽、釧路、帯広・・・と、北海道を1周して1600㎞の旅の最後に札幌に住む私に会いに来たのだ。

 

 その日は、15時ごろ札幌のホテル(私の住んでいる近くの)のチェックイン。そのホテルは、素晴らしい風呂があり、Bさんの疲れを癒すため一緒に入浴した。それから、近くの小料理屋に行き夕食を共にした。

 

 『○○さん(私)、Kさんのことなんだけどね』。『よく3人で遊んだよね。Kさん、何かあったの?』と聞く私に・・・。Bさんは、ぼそぼそと話し出した。『前に話したと思うんだけど、Kさんね、外資系の製薬会社に勤めていて、九州にある日本工場の総責任者をやっているんだけど・・・。ドイツ人の若者をたくさん使っていてね。大学生時代から「カミソリK」と言われるほど優秀な学生だったの知っているよね。そんな彼は、部下を我が子のように大切にし、その工場も素晴らしい業績を上げていたようなんだ。そんな時、急に本社の役員から工場の組織変更の話がきたそうなんだよね。何人かの優秀な部下のリストラも入っていてね』。

 要約すると・・・・・。

 

 その時、Kさんの取った行動は、部下と組織を守るべく、辞表をしたため、本社の役員に対して、『そんな話を受けることは出来ない。もし、この組織変更をするなら・・・』。と、リモートの向こうにいる役員に辞表を見せた。リモートの向こうにいる役員は、びっくりして、慌ただしい動きがあり、2時間ほど後、『アナタノイイブンハ、スベテミトメルカラヤメナイデクダサイ』。という、連絡を受けた。そう、K君は、身を賭して、部下と組織を守ったのだ。

 

 今の時代、財務省理財局の〇川や旭川のいじめ問題の学校の先生や教育委員会の面々の例を出すまでもなく、誰も彼も、自分の保身しか考えない輩が多い。

 

 K君のとった行動は称賛に値するはず。しかし、K君は、B君に対して・・・。

『僕のとった行動は、辞表をちらつかせて最終的な手段を使ってしまった。これは脅しに等しい。これからは、このことに対して、「自分にペナルティを課して」生きてゆく』と語ったそうだ。これを聞いて、Bさんは、『Kさん・・・。あなたのとった行動は、「称賛されるべき行動だよ」。身を賭して部下と組織を守ったんだからね。何、馬鹿なこと言っているの?それじゃ「高潔すぎるよ」』。と言うBさんに『だって、男の美学だもん』。と、軽く笑いながら言ったそうだ。

 

 その日は、Bさんのホテルに行って、九州のKさんと、リモートをつなぎ、私とBさん、Kさんと、リモートの会食を行った。私は、Bさんへのお土産に、ニッカウイスキー「フロムザバレル(51度)」とその日、一緒に飲むために、北海道で一番旨い(と私は思っている)日本酒、小林酒造の「北斗随想」を持参した。酒が進むにつれて、当時の武勇伝と、1か月半前に集まった仲間の話。「落研のUちゃんは、○○重工の法務課に入ってからアメリカの大学に入り、ニューヨークで国際弁護士の資格を取ってね・・・。今はね、高崎経済大学の教授をしているよ」。Kちゃんと、Tちゃんは大手会社の社長。誰それは、県庁や○○市の局長。なんて話・・・。『みんな苦労したんだね』と、私は付け加えた。

 

 そして、Bさんは、核心に触れた・・・。『Kさん、れいの話なんだけどね。ぼくはね、称賛されても決して恥ずべき事じゃないと思うんだけど・・・。どうして、そう思うの?』

 

 『あのね、まずは、こんな重大なことを自分が、キャッチできていなかったことかな。それからね・・・。知っていたら、あんなことしなくたって十分に説得できたんじゃないかと思うんだよね』。

 『Kさん、言い分は、分かったけどね。高潔すぎない』。というBさんの指摘に。

 『そんな事ないよ』。と、飄々と答えるKさん。

 

 私は『Kさんかっこよすぎるよ。男の美学だよね。「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」ってことかな』。と横やりを入れた。

 

 『そういえばさ、俺たちの塾を中心にさ、北海道で最初に模擬試験をやったよね。全道から11塾も集めてさ。その時、Kさん理科の主任で、俺たちの塾は、理科の作問をすることになって、Kさん中心に、模試の問題をつくったよね。他の塾から、色々と指摘されてさ。その時も、Kさん、「なんで、これがダメなの」って、はねつけたよね。俺は、「分かったすべて責任持つから好きなようにやって」って言ったんだよね』。

 『そうそう・・・。ラジオのコマーシャルにあんたらに出てもらってね、「○○塾のKです。もうすぐ夏休みですね。・・・」とか「○○教室室長のBです。みんな元気か?・・・。」なんて、ラジオCMのコメントを録音したよね』。

 

 Bさんが『Kさん、札幌からさらって行った奥さんの顔、見ることできる?ちょっとでいいからさ』。『無理だと思うよ』。と、答えるKさん(笑い)・・・。あっという間に、楽しい時間は過ぎ去った。

 

 

 リモートの飲み会が終わってから、Bさんが持ってきたJBLの卓上スピーカーにタブレットをつなげて、大好きな、ジャズやブラジル音楽を静かに流し、「北斗随想」を呑んだ・・・。

 

 夜中の1時半ごろ、私は家に向かう道を千鳥足で歩いていた。

 『おれ・・・今日は、40歳ぐらい若返ったかな?』・・・・・。

 

 For Ingrid『Corcovado コルコヴァード』作詞、作曲、歌:Tom Jobin

 You tube 

 

 

 

 部屋の片隅 ギターの響き 二人のために歌う

 穏やかな日々 安らかな夢

 窓の外に見えるこるコルコヴァ―ドの丘がきれい

 

 夢に見ていた 君と暮らそう

 いつかこの世を去るまで

 君に合うまでは 悲しみばかり

 この世を恨んでいた 君は僕の幸せ

 

 「Corcovadoとは、リオデジャネイロにある、標高710mの丘の名称」

 

 Bさんと会った時、Bさんは、2枚のCDを私にプレゼントしてくれました。

 『このCD手に入れるの、大変だったんだよね』。気に入ると嬉しいけど。

 “トゥーッ・シュールマン、ブラジルプロジェクト1集&2集”

 ベルギー出身の世界的ジャズハーモニカの名手、シュールマンがブラジル音楽への愛情を全開したヒットアルバム。シュールマンの語りかけるようなハーモニカの音色。

 それを支える、カエタ―ノ・ヴェローゾ、イヴァン・リンス、ミントン・ナシメントらの超一流のブラジルの音楽家をゲストに素晴らしい演奏を繰り広げる。シュールマンの代表作「ブルーゼット」も新アレンジで収録されている。

 

 私は、この素晴らしいアルバムを、日曜日の昼下がり、珈琲片手に楽しみました。

 

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