【米国市況】S&P500種今年25回目の記録更新、ドルは一時156円48銭
Rita Nazareth-
エヌビディア時価総額が3兆ドル突破、大型ハイテク株のけん引続く
-
米国債利回りは低下、米利下げの織り込み深まる-金・原油は上昇
エヌビディアが「マグニフィセント7」の上昇を率い、時価総額が3兆ドル(約468兆円)を超えた。アップルは8営業日続伸。ヒューレット・パッカード・エンタープライズは人工知能(AI)サーバーの売り上げが大きく伸びたことから、株価は急伸した。
HPエンタープライズ、売り上げ好調-AIサーバー事業が押し上げ
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5354.03 | 62.69 | 1.18% |
ダウ工業株30種平均 | 38807.33 | 96.04 | 0.25% |
ナスダック総合指数 | 17187.90 | 330.85 | 1.96% |
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのソリタ・マルチェリ氏は「米株式相場は年末にかけて堅調が続く可能性が高い」とみている。「ハイテクセクターへの戦略的な投資配分に加え、金融緩和の始まりに恩恵を受ける小型株に特にチャンスがあると考えている」と述べた。
5月の米民間雇用者数は伸びが1月以降で最も低かったことが、ADPリサーチ・インスティテュートのデータで分かった。一方で米国の非製造業セクターは5月に活発化し、総合景況指数は9カ月ぶりの高水準となった。7日には5月の米雇用統計が発表される。
ゴールドマン・サックス・グループのマネジングディレクター、スコット・ルブナー氏によれば、パッシブ投資の資金が「マネーの壁」となって7月上旬に株式市場に押し寄せ、相場は夏の初めにかけて上昇基調が続く見通しだ。
株式相場は1928年からずっと、7月前半が最も好調な2週間であり、同月17日を過ぎると騰勢を失う傾向があると、ルブナー氏は指摘。S&P500種は過去9年連続で7月をプラスで終了、平均3.7%高で終えている。ナスダック100種はさらに好調な記録を残しており、7月は16年連続でプラス。平均4.6%高だという。
ネーションワイドの投資調査責任者マーク・ハケット氏は「株式相場がゆっくりと着実に上昇を続けていることに、弱気派は当惑している」と指摘。「最近の上昇局面は米金融政策への見方に変化が生じたことが理由だが、さらに細かく見ていくと、リテール投資家や機関投資家からの買い圧力に加え、企業の自社株買い、合併や買収案件の増加という健全な背景がある」と説明した。
投資家の関心があらためて大型株に集中しており、それは当然のことだとネッド・デービス・リサーチの主任米国ストラテジスト、エド・クリスソールド氏は指摘する。5月の好調な相場を経て、S&P500種の時価総額では上位10銘柄が全体の35.7%を占めた。これは同氏がさかのぼれる1972年以来の最高だという。
「米国の大型株は投資家の人気を集めている。そうした企業は注目の人工知能(AI)事業に再投資したり、配当や自社株買いで株主に還元したり、いずれの行動にも十分なキャッシュフローを生み出す能力があるからだ」と述べた。
来週の連邦公開市場委員会(FOMC)は政策金利を据え置くと広く予想されている。市場の焦点は最新の経済予測に絞られる。3月会合で発表された前回の経済予測では、今年3回の利下げが見込まれていた。
キャピタル・エコノミクスのスティーブン・ブラウン氏は「ドットプロット(米政策金利の予想分布図)は今年1回、もしくは2回の利下げ予想に集中するだろう」とみている。ただ、インフレ低下のペース加速と精彩を欠く国内総生産(GDP)を挙げ、「9月に金利が引き下げられるという当社の基本シナリオに変わりはない」と述べた。
個別銘柄のニュースとしてはエヌビディアの株式時価総額が初めて3兆ドルを超えた。ボーイング初の有人宇宙船が打ち上げに成功し、国際宇宙ステーション(ISS)へ向かった。アルファベットはイーライリリーの元幹部、アナト・アシュケナージ氏を最高財務責任者(CFO)に指名した
米国債相場は5営業続伸。ほとんどの年限で利回りは4月上旬以来の水準に下げた。5月の米供給管理協会(ISM)非製造業指数からは強弱混在のシグナルが発せられたものの、金利スワップ市場では年内と来年の利下げ観測が引き続き強まっている。
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.43% | -4.3 | -0.96% |
米10年債利回り | 4.28% | -5.0 | -1.17% |
米2年債利回り | 4.72% | -4.8 | -1.01% |
米東部時間 | 16時49分 |
ISM統計の発表後には、10年債先物の大型ブロックトレードが相場を支えた。オプション市場では短期のボラティリティーに賭ける取引が引き続き活発だった。
外国為替市場ではドルが主要10通貨に対してまちまちの展開。カナダ銀行(中央銀行)が政策金利を引き下げて引き締めサイクルを終わらせたことに、予想より強い米ISM非製造業指数が重なり、リスクムードが改善した。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1251.86 | -0.55 | -0.04% |
ドル/円 | ¥156.14 | ¥1.26 | 0.81% |
ユーロ/ドル | $1.0869 | -$0.0010 | -0.09% |
米東部時間 | 16時50分 |
ISM非製造業指数の発表後、ドルは対円での上昇率が一時1%に達し、156円48銭まで上昇した。
円が対ドルで1%下落、一時156円48銭-ドル幅広く上昇 (2)
アジアの時間帯では日本の実質賃金統計が注目された。同統計では共通事業所ベースの名目賃金の伸びが1.7%増に鈍化し、市場予想を下回った。
ドルは対カナダ・ドルで一時0.5%上昇。カナダ銀行のマックレム総裁は金利軌道は漸進的なものになる可能性が高いとし、必ずしも米当局と歩調を合わせる必要はないと述べた。
ニューヨーク原油先物相場は反発。ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は前日までの5営業日続落で約4カ月ぶり安値に沈んでいた。
この日も午前の取引では、米エネルギー情報局(EIA)の週間統計発表後に値を下げる場面があった。同統計によると、先週の米原油在庫は123万バレル増加した。
「在庫増加の規模を考えれば、原油相場が持ちこたえたのはかなりの驚きだ」と、トータス・キャピタル・アドバイザーズのポートフォリオマネジャー、マット・サリー氏は指摘。「ただ、原油価格はここ数日で相当下げており、底固めとなっていた」と語った。
シティー・インデックスの市場アナリスト、ファワド・ラザクザダ氏は「需要懸念が続いていることや、OPECプラスが自主減産を段階的に廃止すると決定したことを踏まえると、この回復が続くかどうかは分からない」とした上で、「こうした懸念はもう織り込み済みかもしれず、そうであれば必要とされる下支えが得られるかもしれない」とリポートに記した。
石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC主要産油国で構成する「OPECプラス」は2日の会合で、一部の減産については規模を縮小する時間的枠組みを設定。今年の原油価格を支えてきた日量約200万バレルの自主減産は9月末まで継続されるが、10月以降は段階的に廃止されることになった。供給量が増えるということ?
この決定が市場に動揺を与えたが、RBCキャピタル・マーケッツは、需要の弱さが続けばサウジアラビア主導のOPECプラスは供給拡大措置の「強制停止スイッチ」を押すことになるとみている。
OPECプラスはすでに需要低迷への懸念を示唆しており、実際にサウジの国営石油会社サウジアラムコはアジア向け原油販売価格を引き下げた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物7月限は前日比82セント(1.1%)高の1バレル=74.07ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント8月限は89セント(1.15%)高の78.41ドルで引けた。
金相場は上昇。市場参加者は最新の各経済指標を消化しつつ、7日発表の5月雇用統計に目を向けている。雇用統計の内容次第では年内利下げの観測が強まる可能性がある。金利低下は通常、利息を生まない金の投資妙味を相対的に高める。
金価格は先月に過去最高値を付けた後は総じて狭いレンジでの取引が続いている。
スタンダードチャータードの貴金属アナリスト、スキ・クーパー氏は、このところの金スポット価格が50日移動平均線を挟んだ値動きになっている点に言及し、「市場のセンチメントが全面的な強気から、より微妙なニュアンスに変化しつつある可能性がある」と電子メールで述べた。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は前日比28.10ドル(1.2%)高の2375.50ドルで引けた。
原題:S&P 500 Hits 25th Record This Year as Tech Soars: Markets Wrap(抜粋)
原題:Dollar Stays in Range, Loonie Slides on BOC Cut: Inside G-10(抜粋)
原題:Treasuries Climb After Mixed Data as Fed Cut Pricing Ramps Up(抜粋)
原題:Oil Climbs as Traders Eye Price Floor Despite US Stockpile Gain(抜粋)
原題:Gold Rises as Focus Shifts to US Data for Clues on Fed Rate Path
最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE